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第4話 インリーバ村

 戦いを終え一息ついた『砂漠の牙』のメンバーは立ち上がると挨拶しに来た。


「俺はレオ、このパーティーのリーダーだ。あんたらのお陰で助かった

 パーティーを代表して礼を言わせてもらう」


 エイミーと執事は土偶ゴーレムの残骸を横目に見ながら聞いていた。

どうやらあの魔法剣士がこのパーティーのリーダーだったようだ。

なかなかのイケメンである。その後も他のメンバー達が挨拶していく。

剣士はボンズといい盾士はゴードン、魔法使いはマルセナであった。

最初の4人は同じ村で育った幼馴染みだそうだ。

最後のレキシーは斥候職で交易都市メロアで出会ったという。


「私はエイミー、こっちがロイドね」


「改めて挨拶申し上げる、私めはエイミーお嬢様の執事を務める者」


エイミーの横で深々と挨拶する執事、それを見て戸惑う『砂漠の牙』の面々。


「あんたら凄いな、あの支援魔法は相当なもんだったぜ。

 それに執事のオッサンもただもんじゃない。あんたらが近くに居てくれて

 ほんと俺達は運が良かった。改めて礼を言う。それとこれを受け取ってくれ」


レオは金貨の入った皮袋を渡して来た。50万ゴールドあるそうだ。

金貨1枚、1万ゴールドでそれが50枚入っていた。


「お金よりあのゴーレムの残骸貰っていいかな」


「エイミー嬢ちゃんがそれで良いって言うならそれで構わないが

 あんたらが居なきゃあんなの倒すの無理だったしな」


 エイミーは喜び勇んで土偶ゴーレムを回収した。

それを見ていた『砂漠の牙』の面々が唖然としている事に気付く事なく。

良いコレクションを手に入れて大満足なエイミーは聞いてみたい事があった。


「ねぇ、どうして『砂漠の牙』はインリーバ村へ?」


これもとある番組のノリであるがロイドを除いて気付く者はいない。

するとレオが教えてくれた。エイミーが食い付きそうなネタであった。


「インリーバ村の村民が消えた、その理由を調査するのが俺らの役目だった」


レオは大まかに説明してくれた。詳しい内容はギルドへ報告として上げるそうだ。

それによるとインリーバ村はサハール川の巨大な中洲に存在する村らしい。

そこへ陸路で向かい村中を見て回ったが本当に誰も居なかった。

食糧や生活に必要なものもそのまま残されており着の身着のままで村民は

居なくなったとしか考えられない状況だったそうだ。

エイミーは未解決事件の匂いにこれは名探偵の出番とばかりに現場へ

行きたくなってしまった。


「私たちがインリーバ村へ行っても問題ないかな」


「村の物に手を出すなよ、それと村へは渡れなくしてあるが手段でもあるのか」


「それなら大丈夫、それに私たち裕福そうでしょう」


「自分で言うか・・・」


「私も問題ないと思う、保障するわ。あの優雅な光景は二度と忘れないよ」


レオに対しレキシーが援護してくれた。レオは何を見たんだこいつという顔で

レキシーを見ていた。


 二組はここで別れることにした。『砂漠の牙』はゴーレムに帰りに使った船を

破壊されたのでここからは陸路でメロアへ向かうそうだ。もしメロアに寄る事が

あったらぜひ会いに来てほしいと言われた。ご馳走でも何でもするそうだ。

彼らが定宿にしてる「水面の月」に寄ってくれとの事だった。

一方エイミーとロイドはこれからインリーバ村へ向かうつもりだった。

ここから歩きで1時間ほど掛かるらしい。


「みなさんとはここでお別れね、それじゃ」


「皆様方お気を付けてお帰りを」


「あんたらも気を付けてな、インリーバ村では特にな。

 世話になったし感謝してる、じゃーな」


バイバイと手を振るエイミーと華麗な挨拶をする執事に見送られて

出発する『砂漠の牙』。そこには一人振り返りバイバイする

レキシーの姿があった。


「よーしっ、私たちもインリーバ村へ出発!」


 サハール川を上流へ向かって進んでいる二人。


「川散歩だねー」


「そうですな、これぞピクニックで御座いましょう」


エイミーとロイドはインリーバ村への河岸の旅を楽しんでいた。

するとそこへ二人の旅に水を差すように行く手を遮る体長2メートルくらいの

カニの魔物が現れた。


「マーダークラブ!ねぇロイドあれ食材として売り物になるから

 急所付いて一撃で綺麗に仕留めてね」


「お任せ下さい」


 いつもの様に颯爽と飛び出しマーダークラブに迫る執事。

敵のハサミ攻撃を華麗に避け一歩踏み込もうとすると

マーダークラブは泡を吹き出しバブル攻撃を仕掛けてくる。

それを飛んで躱すロイド。素早く敵の背後に回るとカニの頭部へ

重い斬打を加え敵が衝撃に揺れる。

ここが決め時と執事はマーダークラブの正面に回り込むと下から跳ね上げるよう

細剣を振るいカニの腹部を露わにした。


「舞刀両断、一踏穿」


ロイドの必殺の突きがマーダークラブの腹部にある急所を見事に貫いた。


「流石ロイド!」


「我が務めを果たしたまで、早速回収いたしましょう」


 マーダークラブという食材を手に入れた二人は満足そうに歩みを進めた。

出発してから1時間ほど河原を進むと遠くに巨大な中洲が見えて来た。

おそらくあの場所にインリーバ村があるのだろう。そこからしばらく進むと

中洲へ渡る為の船着場に到着した。時刻は午後3時頃であった。


「本当に船がない。どうやって村へ行こう・・・ねぇロイド空飛んじゃう?」


「それが一番かと」


二人は周りに人が居ない事を確認すると空へ舞い上がりインリーバ村へ向かった。

これは飛行魔法ではなくエイミーの異世界転移獲得スキル『超能力』による

念動飛行であった。そしてロイドにも「念動」と「念話」の力が付与されていた。

空を飛び川を越えると眼下に中洲の全景が広がる。

中洲は南北に長くサツマ芋のような形をしていた。

長さ3キロメートルくらい幅800メートルくらいの川の中の島であった。

そして北の方は農地が広がり南の方に中洲の3分の1を占める船型の石垣に

囲まれた村があった。

エイミーとロイドは村を囲う石垣を越え村の中央に見える広場に舞い降りた。


「ここからは二手に分かれて調査だね。ロイドは南ね、私は北を見て回る。

 北の畑に面白いものが空から見えたしね。あと緊急時は『念話』でね」


「畏まりました、お嬢様も油断なさらぬように」


そう言うとロイドは調査へ向かった。エイミーも一軒一軒見て回わった。

北には村役場や教会もあり納税台帳や信徒名簿も残されていた。

一通り見たが村民の消えた謎に結びつくものは見つからなかったので

村を出て畑へ向かう事にした。北の門を出て目的の場所へ向かうと

放置された小麦畑が広がりその中にエイミーにはお馴染みのそれはあった。


「ミステリーサークル・・・地球のは冗談だったけどこっちは本物?」


直径50メートルくらいの何とも得体の知れない雰囲気を醸し出す

ミステリーサークルに対しエイミーはアイテムボックスからある物取り出した。


「私のお手製の万能測定器で謎は解決ね」


エイミーがミステリーサークルへ向け測定器を作動させると反応があった。


「やはりここだけ放射線量高いわ、テラで放射線とか謎過ぎる」


万能測定器が放射線に反応を示していることに驚くエイミーが

しばし謎に頭を悩ませていると南の調査を終えたロイドがこちらへやって来た。


「どうなされました、お嬢様。こちらは収穫無しでございました」


「ミステリーサークルに放射線とかまさにミステリーだよ」


「それは摩訶不思議で御座いますな、今回の件と何か関わりが?」


「有るとも無いとも言えないかな、でもとっても怪しい」


「ふむ、これからどうなさいますか?」


ロイドの問いに答える事なく遠くを眺めるながらエイミーは考えていた。


「そう言えばこの先に墓地があったよね、そこ見て終わりにしよう」


 二人は北にある村の墓地に向かう事にしたのだった。

歩き出して15分程経っただろうか左手に墓地が見えて来た。

中洲の北西部に長さ200メートル幅100メートルくらいの墓地があり

石の墓が並んでいた。墓地の中を見て回るエイミーとロイド。


「特に変わった所はなさそうね」


エイミーが墓を確認しながら北の端までやって来た時、墓地から外れた場所に

最近埋められたような墓みたいな物を見つけた。


「これ墓かな?他と余りに違うよね。人の頭程の石が置いてあるだけだし」


余りに怪しい墓の有り様にエイミーの探求者としての直感が囁く。

本人のノリは名探偵としての直感であったが。


「罰当たりな事だけど何が埋まってるか確認しようか。

 ロイドこれ掘り返して」


「お任せ下さい、では早速」


ロイドは「念動」を使いいとも簡単に土を取り除くと現れた棺を浮き上がらせ

地面に置いた。そして棺のフタを開け中を覗くとそこには新たな謎が眠っていた。


「これはまた・・・」


「何があったの?」


エイミーも覗き込んで来た。

二人が見た物は教会の神父と思われる者の惨殺遺体だった。

新たな謎に驚く二人とさらに謎が深まるインリーバ村を夕日が茜色に染めていた。

インリーバ村の謎は深まるばかり。

エイミーの冒険はどうなるのでしょう。

次回は「水底に潜むもの」です。

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