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第17話 錬金術師ギルド

 エイミーとロイドと一緒にファイ市街地へと出掛けたタッカール爺さんは

錬金術師ギルドへ行くと言って別れたまま家に帰って来なかった。

そして一夜明けて昼になっても帰って来なかった爺さんを探す為に

二人は今再びファイの西門の前に来ていた。


「錬金術師ギルドに行くと言ってたから先ずはそこからだね」


「そうですな、サリア嬢の話では知り合いの家に泊まる可能性は低いと」


「ギルドの場所尋ねないとね」


 エイミーとロイドは今回は宿も取って泊まり掛けの爺さん探しのつもりである。

ファイの西門へ着いたエイミーは守衛に話しかけた。


「あのー、錬金術師ギルドへはどう行けばいいですか?」


「お嬢ちゃん錬金術師ギルドに用があるのかい。それならこの西門通りを進むと

 西門広場へ出る。そこを更に東へ真っ直ぐ進むと新市街にある中央広場に出る。

 そこは八時路になってるから進行方向斜め右の屋根付きのバザール通りを進むと

 サハール川沿にある港に出る。そこを南に行くと港街区という商業区域があり

 そこに錬金術師ギルドはある」


「ありがとうございます」


 二人は言われた通りに街を進んで行く。旧市街を通り抜け新市街へと進み

中央広場へと出る。広場に円形に通る道はこの街の交通の要衝という感じで

多くの人や馬車、荷馬車が行き交い8本の通りへと分かれ流れて行く。

また教会も見える。後で寄ってみようと思うエイミーだった。


「知らない街で人探し、しかも分かってるのは錬金術師ギルドだけ。

 本当大変ね。最後は力技で行くしかないかもね・・・」


「そうで御座いますな、こちらでは監視カメラなど有りませんし」


そんな会話をしつつ二人は中央広場を抜け港へ続く道を進んで行く。

そこは屋根に覆われたバザールとなっていて多くの食材が並ぶ商店街である。


「やっぱ緑都と言われるだけあって色んな食材が売られてる。レンカと

 買い食いしながら回ったら楽しいだろうな」


ふとレンカの事を思い出したエイミーは後でまた来ようと決め道を進んで行く。

するとサハール川が見え多くの船の姿も見えて来る。

港に出てそこから南へと進んで行くと港街区と呼ばれる場所が見えて来た。

通りを歩いている人に錬金術師ギルドの場所を確認しギルドの前まで来た二人。

凄く特徴的な建物で錬金術を連想させる彫刻に彩られた壁、外柱を持つ

荘厳な装飾を持つ建築物であった。


「いざ錬金術師ギルドへ」


 エイミー達は扉を中へ入って行く。中へ入るとまずロビーに置かれた

ロンド神の彫像が目に入る。それを見ない様に受付へと進んで行く。


「ようこそ錬金術師ギルドへ、どういうご用件でしょうか」


「私達知り合いを探してまして、昨日錬金術師のタッカールさんが

 こちらに来られたと思うのですが対応された方の話が聞きたいのですが」


「少々お待ちください確認して参ります」


 その後はエイミーの予想通りの展開だった。知らないの一点張りで

何の情報も得られなかった。


「想定の中では最悪ね。宿を探して夜まで待ってから動こう」


「では力技の出番ですな」


「まーね、これで錬金術師ギルドの白黒が付くという事ね」


そう言って宿を探す二人は港街区を歩き回ってとある宿を見つけた。


「『水蓮』・・・これってタリアのところの宿かな。これも何かの縁ね

 ここにしよう」


「では参りましょうか」


ロイドのエスコートで宿に入り受付へと向かうエイミーであった。


「ようこそ『水蓮』へ」


「取り敢えず1泊お願いしたいのだけどテラス付きのお部屋はある?」


「それですと3階のスイートルームになります。お一人様一泊金貨20枚です」


「じゃスイートルームで決まりね」


 夜に決行する力技の為に宿の出入り口以外に出入りするテラスが必要だった。

二人はお金を支払い鍵を受け取り部屋へと向かった。部屋へ入り中を覗くと

メロアにあった『水蓮』と変わらぬ豪華な部屋だった。テラスへと出て

街並みを眺めるエイミーは錬金術師ギルドの建物の方へ視線を向けて

目を細めたのだった。


「ロイド、日が暮れるまで時間あるし中央広場にあった陽神教会に行って

 みようか。ちょっとメロアの事も気になるしね」


「はい、お嬢様。メロアの事は私も気になっておりました」


 エイミー達は宿を出て中央広場にある教会へ出掛けた。中へ入り礼拝堂を

見回す二人にここのシスターが声を掛けて来る。


「ようこそ陽神教会へ、礼拝の方ですか?」


「いいえ、私たち行商人をやってましてファイは初めてなんです。

 前居たメロアで寄付させていただき、ここでも教会を見つけ寄付しようかと

 思いまして、それで立ち寄ったの」


「あら、メロアから来られたのですね。メロアは異端者の襲撃にあって

 大変な状態なんだとか。幸いにも神の罰が異端者に下りメロアは救われたと

 聞いております。こちらからも救援に多くのものが出ていますの。それで

 寄付をですね、ありがとうございます」


『神の罰・・・人の反応って面白い。それとメロアは取り敢えず大丈夫そう』


 心の中で呟いたエイミーはシスターに寄付として金貨100枚を渡したのだった。

シスターに大層感謝された二人は教会を出るとバザール通りで色んな果物を

買い込み宿『水蓮』へ帰ったのだった。リビングで豪華なコースディナーを

堪能した二人はテーブルに中央広場で買ったオレンジやマンゴー、ブドウ風な

果物を並べて味わいながら人が寝静まるまで時間を潰していた。


「街も人通りが少なくなって静かになったわね。やっとだね、行くわよロイド」


「はい、お嬢様。何が出るのか楽しみですな」


部屋の明かりを消しリビングルームからテラスへと移動する二人。


「装具召喚『流糸飾扇リッカ』、開扇『探リート』」


エイミーはリッカの糸を錬金術師ギルドの屋根まで届かせると『扇移』により

一瞬でロイドを連れて屋根の上に移動した。


「ここから捜索開始!リッカ開扇『探リート』よ『忍ビート』となりて

 ギルド内を探れ」


屋上に居るエイミーのリッカから探りの糸がギルドの建物内へ忍ぶ様に

侵入して中を探っていく。


「まずは最上階から、まだ残ってる人もいるのね。でも爺さんの

 反応ではない・・・特に変わった構造とかもないと」


 最上階の隅々まで糸が広がっていく。廊下に部屋、屋根裏、物置きまで

糸が入り込み全てを探っていく。最上階の確認が済むと下の階へと糸が

伸び爺さんを探すため全てに忍び込んでいく。


「この階にも居ない・・・」


次々と建物を探って伸びていく糸が遂に1階へと到達した。


「ここも手掛かりなしか・・・、でも地下があるわね」


 錬金術師ギルドの建物の地下へ『探リート』が伸びていく。

地下1階の隅々まで広がり探っていく糸。


「地下1階も異常なし、次は地下2階ね」


 地下1階を探り終えて地下2階へと伸びていく糸。しかしここにも

爺さんは居なかった。そして地下は2階で終わりだった。


「地下2階も何もなしと・・・、あっ、糸が何か見つけたみたいね」


 地下2階までと思われたギルドの建物だったが下へと続く階段はないが

通気口へと入り込んだ糸がまだ地下へと続く構造がある事を伝えて来た。


「まだ地下へと続く秘密の通路があるのね。おそらく隠し扉ね」


 通気口が地下へと続き、そこに侵入した糸が地下へと続く階段を見つけ

更に地下へと伸びていく。そして『探リート』が階段を降りきった先に

辿り着く。通路があり扉で塞がれていてその扉の前に人の様な気配の

者が見張りをしている様であった。


「何かしら人の様なのに人ではない気配。超能力と合わせ技でいこう。

 遠隔透視、開扇『遠シート』」


糸の先の景色のイメージがエイミーに流れ込んで来る。


「あれは人型樹人・・・何なの何でこんなのが錬金術師ギルドの地下に

 いるの。何かあるこのギルドには」


「遂に見つけましたな」


 隠された地下に謎の人型樹人を見つけた糸は更に地下施設に巡る通気口を

通って地下を探っていく。そして人を閉じ込めていると見られる牢屋を

発見したのだった。牢屋を次々と探る糸たちにより伝えられる情報。


「見つけた!タッカール爺さんだ。地下牢にいた」


「やりましたなお嬢様、しかし何故こんな場所に?」


「まだ分からないけど魔樹の森の事が絡んでそうね。まずは爺さんの

 救出だけど、先に地下施設の調査を終わらせてから救出ね」


 更に『探リート』を地下施設内へと伸ばし探っていくエイミー。

人型樹人の他に人もいる様だ。所々『遠シート』でも確認していくと

部屋の一つが礼拝堂の様に仕立てられていた。


「正陽神教団・・・」


「何ですと・・・」


 エイミーが驚いていると糸がまた何かを見つけたのか知らせて来る。

そこは地下施設の終点であった。そして『遠シート』で見えてくる物。


「地下水路に船着場?古い遺跡の様にも見える、それにこれ潜水艦・・・」


 錬金術師ギルドの地下深くに水路があり船着場が築かれ、そこに潜水艦が

停泊していた。そして船着場全体が水没して水門が開く様に思える構造を

していたのだった。船着場を見下ろす様にここの管理施設が作られている。

そして全体が古い遺跡のようであった。


「何なのこの施設、一方はサハール川へと通じてるのだろうけど

 もう一方はどこへ通じてるの?」


エイミーは錬金術師ギルドの地下施設全てを確認し終えたので爺さん救出に

向かった。


「爺さん今助けるからね。扇移『突ピート』閉扇」


『パンッ!』


「爺さん助けに来たよ」


「なんじゃ?急にエイミーちゃんが・・・」


 エイミーは一瞬で地下牢に移動すると驚く爺さんを尻目に今度は糸を

屋根へと送り『扇移』で無事爺さんを救出したのだった。爺さんを連れて

宿に戻ると簡単に事情を聴くエイミー。


「錬金術師ギルドで何があったの?」


「そうじゃの、ギルドマスターに魔樹の森の病原体について報告したら

 急に顔色が変わっての。突然襲われてあの地下牢じゃ」


「ギルマスが犯人、そして正陽神教団と繋がってる・・・」


エイミーが爺さんから取り急ぎ事情を聴くと立ち上がりテラスへと

出て行く。


「爺さん、私達まだ調べたい事があるからまた地下に行って来る。

 朝になったら帰っていいからね。サリアが心配してる」


「ありがとな、ワシも聞きたい事があるがそれは後じゃの」


 二人は爺さんを宿に置いて再び錬金術師ギルドへと向かった。

『探リート』で地下の船着場と管理施設を探って行くエイミー。


「今は誰も居ないみたいね。扇移『突ピート』閉扇」


『パンッ!』


 エイミーとロイドは船着場の管理施設へ一瞬で移動すると中を調べ始めた。

古い遺跡を思わせる佇まいに高度な文明を窺わせる装置が並ぶ。

船着場を窓から見下ろす側に水門の開閉装置に水位調整装置と操作盤が並び

通信機まで設置されていた。持ち込まれたテーブルに資料が無造作に置いてある。

それを手に取るエイミー。


「ここって水路迷宮の入口なんだ。あれがサハール川への開閉水門、こちらが

 水路迷宮への水門でその先は樹海湖に繋がってる・・・面白い、行くよロイド」


「はい、お嬢様の冒険にどこまでも付いて行きますぞ」


 エイミーとロイドは古い遺跡内の船着場へと降りて行き水路迷宮の入口へと

進んで行く。水門の横にある人用の出入り口を開け中へと入って行く二人。

エイミー達が目にした地下水路は綺麗に整い灯りに照らされていた。

そして、その装いの綺麗さとは裏腹にまるで二人をダンジョンが呑み込まんと

待ち構えているかの様な不気味さであった。

タッカール爺さんを救出したエイミーとロイドは

緑都ファイの地下に広がる迷宮に挑む。

次回は「地下水路迷宮」です。


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