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第13話 緑都ファイ

ここから新編の始まりです。

 エイミー達は今メロアを離れ陸路を1週間掛けて緑都ファイへと来ていた。

ここはサハール川西岸に位置する都市で水の魔力に溢れる樹海湖を持ち

その周囲に広がる魔樹の森を一部開拓して農地とし、そこに街が発展した

砂漠の中に森林が広がるオアシスの様な場所だった。

二人は今道中で知り合った錬金術師のタッカール爺さんと一緒に旅をしていた。


「爺さんの家ってもう近いの?」


「そうじゃな、じきに見えてくるわい」


 ファイの郊外に広がる田園地帯に走る街道を爺さんの家のあるという

魔樹の森周辺部へ向かって歩いていた。

エイミーとロイドは錬金術師の爺さんの家へ招待されたのだった。

何故そうなったかと言うとファイへ向かう途中立ち寄った村で謎の疫病が

流行りそこで村人を助けていたのが爺さんだった。

そして、エイミーも協力して村人を助けたのだった。

そこで仲良くなり話を聞くに面白そうな事を言うのでエイミーは

興味を持ったのだ。


「この街道は魔樹の森へ向かう冒険者も利用する道じゃから

 冒険者相手の道具屋兼ワシの研究所じゃな。今は弟子に店番任しとる」


「へー、そうなんだ。爺さん家に着いたら魔樹の森も行ってみたいな。

 狩りと久し振りに採取とかしてみるのもいいかも」


「それはよう御座いますな」


「楽しそうじゃな、狩るならフォレストボアがおススメじゃぞ。

 あの肉はワシも大好きじゃ。あとコレクトマッシュルームは狩ると

 お宝をドロップする冒険者に人気の魔物じゃな」


「面白そう!早く行ってみたい」


三人は楽しそうに会話を弾ませながら街道を進んで行くと田園を抜け

雑草の生い茂る草原に出た。


「おおー見えて来たわい。あそこじゃ、あそこが我が家じゃな」


そう言って爺さんの指差す方向に周囲を高い石壁で囲まれた大きな屋敷が

見えて来た。


「凄い!爺さんもしかしてお金持ち?」


「儲かってはいるがの、全部必要に迫られて自分で作ったものじゃがの」


「タッカール殿は立派な錬金術師であったか」


「錬金建築とか使えるんだ凄いね爺さん」


「まぁな・・・」


 街道沿いには石壁と一体となった南向きの店舗があり屋敷の門は東にある。

爺さんに付いて門を抜けると店舗、母屋、研究棟、蔵に大型の倉庫の様な物が

並んでいた。そして庭に馬車の様な自動車に見える物が置かれていた。


「ねぇ爺さんあれ何?」


馬車擬きが気になり聞いてみるエイミーだった。


「ほうっ、気になるか?あれは馬要らずの馬車じゃの。まだ研究中じゃが」


「爺さん凄いじゃない、見てもいい?」


「見るだけならな。ワシは店舗の弟子に声掛けてくるからの」


そう言って店舗へ向かう爺さんを見送るエイミーたち。


「この世界に自動車の研究する錬金術師がいるなんてね。

 見たところ馬車ゴーレムってとこかな」


「本当ですな、こちらでも交通革命が起こるやも知れませんな」


 エイミーが色んな方向から馬車擬きを観察してると爺さんが帰って来た。

どうやら店番中の弟子も連れて来た様だ。


「二人に紹介しておこう、これがワシの弟子のサリアじゃ」


「皆さまはじめまして、私が弟子のサリア・マリハロールですわ。

 よろしくお願いしますね」


「マリハロール?・・・」


「あらっ、マリハロール商会をご存知。私そこの三女ですの。

 実家から独立してもう4年になりますのよ」


「本当世界は広い様で狭いよね。私達あなたのお姉さんのタリアにメロアで

 大変お世話になったの」


「そうでしたの、姉とは2つ違いの16才ですわ」


 緑都ファイに来て、しかも錬金術師の家でタリアの妹と出逢うという偶然に

驚く二人。その後も話をして一気に打ち解けるエイミーとサリアであった。


「こんな偶然もあるものじゃな。これから母屋を案内するからの。

 客間もあるから宿の心配もいらん。ゆっくりされるが良い」


爺さんの案内で玄関へ入り客間のある2階へと階段を上がり案内される。


「ここじゃな。夕食まではまだ時間があるから寛がれるが良かろう。

 夕食の時間にはサリアを寄越すからの」


「ありがとう爺さん、それと魔樹の森今から行こうと思うんだけど

 いいかな」


「構わんぞ。帰って来たら門にある呼び鈴を鳴らしてもらえばええからの」


 エイミー達は錬金術師の屋敷を出て魔樹の森へ向かっていた。まだ時刻は

午後2時くらいであった。ちらほら冒険者達も見かける様になるがなるべく

人目を避けるルートで二人は魔樹の森へと進んで行く。


「この辺から森へ入ろう。『透視』」


エイミーは『透視』を使って森を探りながら進んで行く。


「あれかな?50センチメートルくらいキノコ。『念動掌』で引き寄せるから

 ロイド仕止めてね」


「お任せ下さい」


エイミーがキノコへと手を差し向け『念動掌』で引き寄せると空中を

ジタバタしながら飛んでくるキノコをロイドが『スパン』と真っ二つにする。


『ボトッ』


「おっ!やっぱコレクトマッシュルームだった。何が出たかな?

 金属・・・ミスリル塊!素材ゲット」


 こういう狩りならレンカとやっても楽しいだろうなと不意に思うエイミー。

その後もコレクトマッシュルームを見つけては狩るを楽しそうに

続けていた二人だったが5匹目を見つけた時にそれはやって来た。

『ブホッ』と吠えながらコレクトマッシュルームを喰わんと追いかて来る

フォレストボアに出会したのだった。


「ロイド、コレクトマッシュルームでフォレストボアが釣れたよ。

 急所一発でお願いね」


「分かっております。大事な食材ですからな」


ロイドは突っ込んで来たフォレストボアをさらりと躱しエイミーは

フォレストボアを釣る様にコレクトマッシュルームを念動で誘導する。


「舞刀両断『一踏穿』」


執事の必殺の突きがフォレストボアの額を貫き見事に仕止めたのだった。

続け様にコレクトマッシュルームも片付けるロイドであった。

ボアを爺さんのお土産にすべくアイテムボックスに仕舞うとエイミーは

ドロップ品を確かめる。


「水の魔力を秘めた青水晶だ。これもお土産だね」


 フォレストボアを手に入れコレクトマッシュルーム狩りを楽しんだ二人は

今度は採取を楽しむ事にしたのだった。


「まずは回復ポーションの素材のポイ草あたり探してみようかな。

 採取効率考えると森の奥側の方がいいよね」


そう言って下草を見ながら森の奥へ入って行くエイミー達だった。


「おっ、あったよ2000年振りのポイ草。感動の再会」


「こちらにも御座いますぞ」


この辺りはポイ草が集まって生えてるポイントの様だった。

ナイフを取り出し丁寧にエイミーとロイドは刈っていく。

30束くらいのポイ草を確保した二人は次の薬草を求めて探し歩いていた。


「マリ草があった」


「あれもマリ草ですかな、ポイ草とは違いそう多くは有りませぬな」


「これドケック草だよ。毒消しポーションの素材ゲット」


「それがドケック草ですか」


魔力回復ポーションや毒消しポーションの素材を見つけ採取を続けていく

エイミー達であった。


「今度はビレイト草だ。麻痺回復ポーションの素材。この森は薬草の宝庫だよ。

 魔樹の森に秘密の隠れ家作るのも面白そう」


「確かに。お嬢様このドス黒いキノコは何で有りましょう」


「えーと、それはね暗黒茸だね。闇属性の素材、それ回収ね」


そう言って暗黒茸採取用の瓶を渡すエイミーだった。


「魔樹の森は探せばもっと色んな素材が手に入りそうな場所って分かって

 来た甲斐があったね。あと少しだけ採取したら帰ろう」


二人は魔樹の森の中を探し回り帰るまでの少しの間も薬草採取を楽しんでいた。

その時だった森に薄っすらと霧が立ち込めて来た。


「霧だね、もう帰った方がいいね」


「そうで御座いますな。切り上げ時かと」


 二人が帰ろうと決めた時だった。さらに辺りが見えなくなるくらい

魔樹の森が濃い霧に包まれる。


『キャーッ、うわぁっ!』


悲鳴が森の中に響き渡る。警戒を強めるエイミーとロイド。


「誰か助けてくれーーーーーっ」


助けを呼ぶ声まで聞こえて来る。魔樹の森は阿鼻叫喚の場と化していた。


「ロイドこの霧ただの霧じゃないよ。惑わしの霧だよ」


「惑わしの霧ですか」


「何か近付いて来る。ロイド戦闘準備ね」


「畏まりました。何が来ますかな」


 白く惑わしの霧に包まれた魔樹の森で二人に迫る霧越しの影。

そして白煙の舞台でまだ見えぬ存在に警戒を強めるエイミーとロイド。

それはまるで魔樹の森を舞台とした物語の白い幕が上がるのを

待っているかの様であった。

今週の投稿はこれで終わりです。読んで下さった方々ありがとうございます。

緑都ファイへとやって来て魔樹の森を冒険する二人に迫る影。

次回は「惑わしの森」です。

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