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第12話 神と呼ばれし者

 ロイドに倒された使徒と聖霊は天使アメータリエールとして甦った。

その天使を面白そうに眺めるエイミー。彼女は思い出していた。

2000年前に貴械の軍勢を率い神々の軍勢と戦った遥か遠い昔の記憶を。

あの時戦った天使とは違う紛い物感を目の前の自称天使に感じていた。

しかし感じる力は本物の天使に劣る者ではない不思議な存在。


「あなた本当に天使?私の知ってる天使とは違い過ぎる」


「愚かなり。私は真に天使なる存在、紛い物の天使など消え去る存在。

 実に道理、真の運命」


「自称天使か・・・街から遠ざけたから遠慮なく戦えそう。

 冒険の後半戦で会う様な敵と帰還早々に戦うなんて。

 でも楽しみね、偽天使の実力。ロイドは下がってて」


「畏まりましたお嬢様」


 静かに彫像のように佇んでいる天使は余裕の笑みを浮かべているように見える。

エイミーは一歩前へ出ると2000年振りに神装を身に纏う。


「貴械神装現界『天衣無縫』、神装陣展開、スターストーンを待機状態で接続」


そこにはかつて『貴械の姫神』と呼ばれた往時の姿があった

ゆっくりと手を前に掲げるアメータリエール。


「愚か者が何をしようと無駄です。実に笑止、真に千万!与えるは『千万喰口(モータルグラトニー)』」


天使の周りに無数に浮かび上がった銀白色の球体にニヤリと笑った様な口が現れ

天衣無縫を身に纏ったエイミーへと喰らい掛かって来た。


「数の暴力ね。雷光鞭トール、迎え撃て『千却爆雷』」


 襲い掛かる無数の喰口から逃れる様に高速移動するエイミーは雷光鞭より

爆雷球を弾幕の様に無数に生み出しばら撒いていく。

天使の生み出した喰口は次々と爆雷球の弾幕に呑み込まれ対消滅していく。

対消滅の光が夜空を明るく照らしていた。


「まだ足りない様ですね。与えるは『億万喰口(ハイモータルグラトニー)』」


天使の周りにさらなる喰口が生み出され今度は弾丸の様に撃ち出され襲い掛かる。

それを超速の鞭捌きで撃ち落としていくエイミーは 大気を撫でる様に鞭を振るう。


「滞留せよ『濃残雷霧』」


雷光鞭トールから生まれた雷が霧の様に大気に残留し辺りを埋め尽くす。

『ビリビリッ、バチバチッ!』と大気が震え襲い掛かる喰口を呑み込み

消滅させていく雷霧。これで時間を稼ぎ喰口を殲滅せんと雷光鞭を構える。


「ほんとただの力押しね。なら力には力でお返しね『天地幕雷』!」


『ズドドドドーーーン、バリ、バリバリバリーーーッ』


 エイミーが雷光鞭を一振りすると夜空に雷雲が湧き起こり天から無数の雷が轟き

舞台幕が彼女の前で閉じられたかの様に雷幕が現れ、雷霧が晴れた後の喰口の

行く手を遮り呑み込み消滅させていく。


「広がれ雷幕!」


さらに雷光鞭トールを振り回すと雷幕が周りを呑み込む様に広がっていき

すべての喰口を呑み込み天使さえ吞み込もうと襲い掛かった。

慌てる様に回避するアメータリエール、雷幕が消えた瞬間そこへ

チャンスとばかりに迫るエイミー。


「唸れ『雷撃』」


急迫したエイミーの雷光鞭の一撃が天使へと襲い掛かりアメータリエールの肉体を

薙ぐ様に撃ち付ける。雷撃が天使の全身を這い打たれた衝撃で吹き飛んで行った。

『プスプス』と全身から煙を上げる天使へさらなる追撃を仕掛けるエイミー。


「放て『燦雷刀』!」


エイミーが雷光鞭を振り回すと鞭から何本もの雷の刃が生み出され天使に向けて

翔んでいく。


『ズザーン、ズザーン、バリバリーーーーン・・・』


 攻撃の後には原型を留めず『ドロリッ』と溶けた天使の姿があった。

アメータリエールの溶けた体の一部が蠢き、そこから頭部が現れた。


「実に意外、真に予想外。やってくれましたね。我が天使たる肉体にこれほどの

 ダメージを与えるとは・・・それは一体・・・」


天使は雷光鞭トールを見詰めていた。


「そういうことですか。Sランク冒険者かと思っていましたが偽りの神の手先か。

 実に素晴らしい、真に僥倖。偽神の先兵を狩る栄誉に巡り逢えるとは」


 相変わらず的外れな事ばかり言う天使を呆れた様子でエイミーは見ていた。

天使は溶けた体を元に戻すと己が胸に手を突き刺し何かを取り出した。

それを見ていたエイミーは思わずに吹き出してしまう。


「心臓から神像?こんな場面で駄洒落で来るなんて、それに天使の核が神像?

 何かが起こる・・・」


胸から取り出した神像を両手で掲げたアメータリエールは祈りを捧げる。


「神よ我がエールを捧げます、与えるは『神像戦士アメータリオン』」


 アメータリエールが祈りを捧げると天使の肉体が神像へと吸い込まれていく。

すると神像は輝きながら体積を増していきどんどんデカくなっていく。

輝きが収まると最後には全長50メートル程の巨大な神像戦士と化していた。


「巨大なメタルゴーレム?いや巨大なロボット・・・アニメじゃん。

 ほんと場違いな展開だよ」


巨大ロボットアニメの主役になってしまいそうな意外な展開に驚くエイミー。


「これはこれで面白いかも。神装陣起動、貴械神装と雷光鞭を接続。

 神装転化雷装陣『天衣雷縫』」


 神像戦士を前にエイミーの天衣無縫は雷で縫われた様な衣装『天衣雷縫』へと

雷を纏い淡く輝く戦闘服へと変化したのだった。そして、敵と闘うべく上空へ

貴械神装の飛行能力で舞い上がった。


「ここからが本番って事だよね。思い切りやるよ!」


「神像戦士となった私は神を滅する力が与えられし者。足掻くだけ無駄と知れ。

 実に強大、真に無敵。我が名はアメータリオン」


そう告げると巨大な戦士が動き出す。徐ろに右手を振り上げ振り下ろして来た。

それだけで烈風が巻き起こりエイミーへと襲い掛かる。

それを次から次へと神像戦士が繰り出してくる。強烈な砂嵐が砂漠に吹き荒れる。

月夜の砂漠に吹く烈風を素早く躱したエイミーは砂埃の舞う視界不良の砂漠に

隠れたアメータリオンを探すべく『透視』を発動する。


「そういう事か・・・素早く砂嵐の中を移動しながらもこちらを見ている」


「私を見失い迷える子羊に与えるは『滅死線(フォーリンキャノン)』」


突然砂嵐を突き破る様に死滅の閃光がエイミーに向けて放たれるが容易く躱す

エイミーであった。それを見て次の行動に移る神像戦士。


「悪運の強い奴め。ではこれではどうでしょう実に卑劣、真に横暴。

 与えるは『多重滅死線(マルチフォーリンキャノン)』」


アメータリオンの眼や額、指先から多数の死滅の閃光が乱射され

エイミーに襲い掛かる。


「天翔ける『疾風迅雷』」


上空に向け放たれた数多の死滅の閃光を雷のスピードで天を翔け掻い潜り

躱し続けるエイミーは遂に反撃に転じる。


「貫け『雷槍』、10連装」


雷光鞭トールを振りかぶると雷槍が10本生み出され、それを巨体目掛け

振り下ろすと10本の雷槍が神像戦士の背中へと突き刺さる。

『グォー』と呻き声をアメータリオンは漏らすが攻撃は止まない。

エイミーは巨体の周りを雷速で天翔けながら雷槍を撃ち込もうとするが

そうはさせじと神像戦士も巨躯の至る所から『滅死線』を発射してくる。

撃っては躱し撃っては躱しのスリルを楽しんでいたエイミーは

次の展開を練っていた。


「まさかここまでやるとは予想外ですね。実に不快、真に警戒。

 与えるは『帯状喰口(モータルグラトニーベルト)』」


 エイミーより先に動いたのはアメータリオンの方だった。

神像戦士の周囲に帯状に展開する喰口に眼が浮かび上がりそこから

更に『滅死線』の攻撃が降り注ぎ、一部の喰口は本体から離れてエイミーに

追撃してくる。


「ウォーッ!苛烈な攻撃ね。こっちも・・・」


それすら雷速の動きで翔け抜けて躱し雷光鞭で迎撃していくエイミー。

見ている方が冷や冷やする様な攻防であった。


「まずは『千却爆雷』、次に『濃残雷雲海』っと」


爆雷球をばら撒き弾幕で喰口を食い止め雷雲海で雷光鞭トールから生まれた雷が

雲海の様に大気に残留し神像戦士の辺りを埋め尽くすと敵の攻撃が薄くなる。

自らチャンスを作り出したエイミーがここぞと仕掛ける。


「勝負ね轟け『大天地爆雷』」


 砂塵舞う月夜の砂漠に『ピガッズドドドドォーーーーン』と雷鳴が響き渡る。

巨大な稲妻の鞭が砂塵に隠れていたアメータリオンの巨体を押し潰すように襲い

無数の雷撃が神像戦士の巨躯を蹂躙した。そして余りの威力に砂塵も消し飛んだ。


『ウォーーーーーッ・・・、グフッ・・・』


 砂煙の晴れた砂漠に苦鳴を上げ片膝を着く神像戦士は防御シールドを展開して

防ごうとした様だが、それが所々破られ巨体の至る所が溶け落ち焼け焦げていた。

そこへ更に追い撃ちを掛けるエイミー。


「おのれ・・・実に不遜、真に許すまじ。与えるは『球状喰口(モータルグラトニードーム)

 捧ぐは『滅死暴光(フォーリンオーバードライブ)』」


アメータリオンはエイミーと自らを包み込む様に喰口のドームを築くと巨体が

光に包まれ始める。


「やばい・・・これは自爆攻撃ね。スターストーン起動エネルギー供給開始。

 貴械神装対消滅フィールド展開、指向性防御フィールド展開、防御フィールド

 多重展開」


『ピカッーーー、デュデュドドドジドォーーーーーーーーーーーーン』

エイミーが守りを固め終わった瞬間砂漠は光に包まれた。エイミーが居た場所は

直径1キロメートルに及ぶクレーターと化していた。


「これでやっと片付いたか・・・偽神の先兵がこれ程の力を持つとは

 実に予想外、真に望外の結果ですね。後はあの男を始末して終わりですね」


神像戦士アメータリオンはかなり力を失い全長25メートル程に縮んだ体で

呟いていた。


「轟け『極天地爆雷』」


「何だと・・・」


『ドゴゴゴッドッガーーーン・・・ズズズズズシーーーーーン、ビリッ、バチッ』

神像戦士が気付いた時には天地を覆い尽くす長大な雷の鞭が天を震わせ

大地を震撼させた後だった。その直撃を喰らったアメータリオンは原型を

留めること無く溶け落ちドロドロと蠢き最早反抗の力は残されていそうも

無かった。そこへ現れ『透視』で神像戦士を見詰めるエイミー。


「やっと見れた、結界のエネルギーを削った甲斐があった。『透過掌』」


そう言うと掌をスルリと透過させ液体と化したアメータリオンから念動で

核を抜き取った。核を奪われた巨大な液体はサラサラと崩れ去った。


「これはいい。こんな技術を使う神か・・・面白い!

 闇の宝珠、樹呪魔法『暗黒樹の苗木』、『樹根封印』」


1メートルはあろう大きな球体の核を『闇の宝珠』を使い封印し

アイテムボックスへとエイミーが仕舞うとそこへロイドがやって来た。


「お嬢様ご無事で何よりで御座いますが、冒険は程々にお願い致します」


「ちょっと遊び過ぎたかもね、危うくロイドを巻き込んじゃうとこだった。

 ちゃんと逃げてくれたみたいで安心したよ、ほんと」


 神像戦士アメータリオンと化した天使アメータリエールを倒したエイミー。

二人は空へ舞い上がるとメロアへと向かい飛び立った。

まるで神話の戦場と化し今は静寂に包まれた戦いの傷跡を残す砂漠と

空に舞うエイミーとロイドを月光が優しく照らしていた。

メロアでの激戦に勝利したエイミーとロイドは新たな冒険の舞台へ旅立つ。

次回は「緑都ファイ」です。

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