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七夕物語(雨ふらし風味)1
七夕。
大河に阻まれ、年に一度しか逢瀬を許されない二人の、ほんのひとときの甘い時間。
織姫。
彦星。
二人は、一年ぶりの想い人との再会を、静かに見つめ合うことで確かめ合った。
長い長い、無言の見つめ合い。
それは、会いたくとも会えない狂おしいほどの想いに身を焦がした、一年分の愛しき気持ちが、濃密に、身の内からこぼれだしてくるような沈黙であった。
なんと雄弁な沈黙。
視線を絡ませるだけで、二人の間には、すでに会話が交わされているのだ。
逢いたくて、
逢いたくて、
逢いたくて・・・
ようやく今宵、こうして逢えた・・・
手をのばせば、ほらすぐそこに、あなたが。
いる。
一歩足を踏み出せば、
すぅっと、抱擁できる場所に。
いる。
いる、
いる、
いるのだ!!
見つめ合い、まばたきすらしない二人。
小舟で、大河を渡り、岸辺に降り立った彦星。
それを迎えた織姫。
すい、
と、やさしいそよ風が、二人の間をすべりぬけていった。
「織姫ェ・・・」
先に声を出したのは、彦星であった。