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第39話 ハグられヒーロー


「起きてよ、エル兄のばかっ!」


「エル、エル!起きてよぉおお!」


「エル殿!死んだら恩返しできないのだ!」


 遠くから声が聞こえる。

 体中が痛い。耳がきぃんとして耳鳴りがする……。偏頭痛もだいぶあるようだ。


「ここは、俺は一体……?」


 瞼の裏に感じる光。

 ゆっくりと目を開けると、みんなが俺を覗き込んでいる。


「ええと、ヘルヴェノムはどうなったんだ?みんなはケガはないか?」


「退治したわ!エルが魔石を回収してくれて、それで終わったの!」


「かっこよかったのだ!この通り、ぴんぴんしてるのだぞ!」


 ウララとフレイヤが俺に抱き着いてくる。

 美女二人に囲まれるのはうれしいけど、体を圧迫されるとそれだけできついぞ。ううむ。


 おかしいぞ、俺はあの時、完全に毒を食らったはず……。

 よくて相打ちだって思ってたのにどうして……?


「ふふふ、イルがね、あなたの足からマナチャージをしたの。それからは私たちも加わって一気に送ってあげたのよ?おかげで私たちもくったくたなのよ」


 ウララは興奮気味にそんなことを言う。

 なるほど、あの時、俺の体が無事だったのはイルたちのおかげだったのか。


「少しは自分の命を大事にしろ、この盗賊!さすがに腕が光りやがる奴は半端じゃないけどな!」


 ハイジには怒られる始末である。

 まぁ確かに今回はこの光る腕に助けられたっていってもいいのかもしれない。


「がはは!捨て身で突っ込むとは、さすがはわしらの息子だ!」


「自慢の息子よね!起き上がるまでのマナチャージには気合が入ったわ」


 親父と母さんも寝たきり状態の俺を褒めてくれる。

 がっはがっは笑いながら俺の背中をたたくのはやめて欲しい。今度こそ死ぬ。


 母さんも俺のことをマナチャージしてくれてたの!?

 あぁ、くそっ、俺はどうして失神なんかしてたんだ!?


「他の化け物はみんなで片付けたのだ!火炎剣のガタガタはあんがいに強かったのだぞ!ただのおっさんじゃなかったのだ」


「ガタカだ!へへ、お前たちもなかなかやるじゃないか!」


 フレイヤはそういって他の冒険者やリースたちとハイタッチをしている。

 冒険者たちは傷だらけで包帯だらけだが、みんな笑顔だった。

 ジョブの壁を越えて、一緒に戦った仲間として認めあうことができたのだろう。


「エル兄!」


 そして、俺に抱き着いてくるのがイルだった。

 意外なことに彼女の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。

 俺が毒に入っている間に力がぐんぐん増したのはイルのおかげなんだそうだ。


 しかし、冷静になって振り返れば、かなり危険な行為だと思う。

 まかり間違えばイルまで死んでしまうぞ。


「まったく無茶しやがって……」


「それはこっちのセリフだから!捨て身の攻撃とかありえないから!私がいなかったら、死んでたんだからね!」


「一応、勝算はあったんだけどな……。ありがとよ、助かった」


 涙目になっているイルの頭にぽむっと手を置いてよしよしっとやってやる。

 いつもは斜に構えているけど、いざという時に頼りになるって本当にありがたい。

 正直言うと、俺の読みは甘かったわけでイルたちのおかげで勝ったようなものだ。


「ふふ。素直でよろしい。あぁー、よかった。エルが無事に帰ってきてくれて……」


 イルはそういってほほ笑んで、軽く俺に抱き着いてきた。

 その仕草はいつもの生意気な妹とは違っていて、俺は場違いにもドキリとしてしまう。


「……何照れてんの?」


「うぐはっ!?」


 ばしっと背中を叩かれると、体中に激痛が走る。

 うぅ、少しは手加減してくれよ、わが妹よ。

 それにしてもみんなが無事でよかった。


 俺たちは城壁の上でヘルヴェノムを倒した勝利の余韻を全力で噛みしめるのだった。


お読みいただきありがとうございました!

ブックマーク、評価を頂きました方、本当に光栄です。


あと数話で終わりでございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「作者、もっと頑張れ」


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