第38話 湖の魔女ロマンティカ
「湖の魔女よ、私に力を与えてください!憎き帝国に復讐する力を」
ここはどこだ?
夢の中か?
目の前には宮殿のようなところで、男、それも獣人の男の人が誰かにひれ伏しているのがわかる。
その顔はどこかで見たことがある。
……そう、ヘルヴェノムの中にいた男の人の顔だ。銀狐様にそっくりの髪の色だった。
「ふふ、面白いわね。帝国を滅ぼす力が欲しいですって?かなりの見返りが必要になるわよ?」
「私の魂を捧げ、未来永劫、お仕えします。だから、私に力を与えてくれ!」
獣人の男の人は必死に懇願する。
相手の顔は見えないが、声から女の人だってことはわかる。
「たとえ、帝国に大打撃を与えても、あなたは妹に封印されるわ。英雄の妹に。未来永劫、死ぬこともできずにのたうちまわるの。それでもいいの?」
顔の見えない彼女は心から嬉しそうに笑ってそういう。
「構わない……。わが妹、シルビアに封じられるのなら本望だ」
男の人の決意を見届けると、顔の見えない彼女は静かに笑い出す。
「いいわ、あなたに力をわけてあげる。私のおもちゃになりなさい」
そして、彼女は男の頭に手を置く。
「うぐっ……」
獣人の男の人がうなり声を上げた後、彼の背中から真っ黒い植物が生えてくる。
それはまるで蝶や蛾のさなぎに寄生するキノコのようだった。
ほどなくして、その真っ黒い植物は「ギッギギギギッ」と奇声をあげ始める。
……その声は、あのヘルヴェノムと同じだった。
「さぁ、行きなさい。あなたの復讐の炎が燃え続ける限り、あなたは毒を抱え続けるのよ。この美しい世界を毒だらけにしてあげなさい」
そういうと女の人はけたたましく笑う。
「ふふ、まさかあなたが私のおもちゃを回収してくれるなんてびっくりしたわ。今回はあなたの勝ち。妹さんや、お友達に感謝しなさい」
彼女はこちらに向き直ると、俺の顔に両手を添えた。
その両手の温もりとともに、俺のぼやけていた視界が少しずつクリアになっていく。
目の前にいたのは真っ黒な服に身を包んだ、真っ白い肌の女の人だった。
息をのむどころではなく、心臓が止まるほどの美人だった。
「あんたは……誰だ……」
「ロマンティカよ、命の恩人の名前を忘れたの?早く迎えに来てね、私のかわいい人……」
次の瞬間、俺は真っ黒いトンネルを一気に抜けていく。
ロマンティカ、俺はその名前を知っていたのだろうか。
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