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第31話-2 災厄ヘルヴェノム


「エル殿!そろそろ突撃許可を頂きたいのだ!あたしには毒は効かないのだよ!」


 そういうとフレイヤはモンスターの兜を稼働させて駆け寄ってくる。

 その兜は炎攻撃だけでなく毒攻撃まで無効化させる防具なのだろうか。

 しかし、素手だし、体のほうは全然覆われてないんだけどな……。


「ヴァルキリー、お前の槍を返してやる!ガタカがお前との再戦を希望してるんだ。こんなところで死ぬなよ!」


 ここでハイジがまさかのアシスト。

 彼女はシルフォードの屋敷でなくしたフレイヤの槍を持ってきてくれたのだ。


「おおぉおぉお、ありがとうなのだ!ピンク髪はいけ好かないけど、実はいい奴なのだな。ガタカって人は知らないけど、ヴァルキリーのフレイヤ、いざ参る!」


 彼女は笑いながら槍を先頭に突っ込んでいき、四方八方に伸びた手を一気に切り刻む。

 ガタカってあの、火炎剣のおっさんのことだよな……。

 あれだけ戦ったのに、フレイヤに名前を覚えてもらえないらしい。憐れ。


「ギギャアアアア!」


 真っ黒い触手が落とされるとヘルヴェノムは気色の悪い叫びをあげる。

 フレイヤは敵の毒の供給源を断とうという腹積もりなのだろうか。思ったよりも知的な戦い方でちょっと驚く。


「あははははは!そろそろ本体も頂きますなのだ!相手が悪かったのだなぁ!」


 まるで悪役のサイコパスみたいなことを言いながら、フレイヤは槍を本体へとずっさずっさと突き刺していく。

 真っ黒な毒液が吹き出すが、フレイヤはそれさえも避ける!避ける!!避ける!!!


 あいつの身体能力はどうなってるんだ!?


「にゃはは!喰らえ、竜破閃光撃(ドラゴギガ)!」


 フレイヤが技の名前を叫ぶと、彼女の槍の穂先が青白く輝き始める。

 さらにフレイヤは槍を先頭にヘルヴェノムへと突っ込んでいく!なんて速さだ!

 その直後、ドォンと鼓膜が破れるかと思うような大きな音が響き渡る。


「……すっげぇ」


 その破壊力に俺は声をあげてしまう。

 今の技だけで、敵の体に文字通り直径1メートルほどの風穴があいてしまったのだ。

 フレイヤだけで勝ててしまうんじゃないか!?


「ギギギっギギギ!」


 しかし、敵もやられっぱなしでは済まさない。

 毒を外から常に吸収しているからなのか回復力が伊達じゃないらしい。

 フレイヤに開けられた穴はみるみるうちに埋まっていく。

 さらには敵の真っ黒い触手までも復活し、フレイヤの足を捕まえてぶん投げてしまう。


「はうわっ!?」


 運がいいのか悪いのか、触手に投げられたフレイヤは聖なる泉の中に突っ込む。地面よりはダメージが少なそうだけど、ずぶ濡れなのはちょっと寒そうだ。


「もぉ、怒ったのだ!これでも喰らうのだ!」


 びしょ濡れのまま陸に上がったフレイヤは泉の中に投げられたことで怒り心頭。

 身に着けていたマントを丸めてヘルヴェノムに投げつける。


「ギギャアアアア!」


 濡れたマントが当たった敵は耳をつんざく絶叫を上げた。

 さらにはフレイヤに触手を伸ばす。フレイヤはふらふらになっているではないか!


「フレイヤ!」


 触手が彼女を取り囲む前に、俺は彼女のもとへと跳ぶ!

 さらには彼女の腰回りを抱えて一気に跳ねる。


「大丈夫か?」


「くふっ、ちょっとだけやられたのだ……」


 フレイヤは触手に掴まれた時に敵の毒を浴びてしまったらしい。

 口では強がっているが顔色は悪い。

 相当、痛みがあるはず。


「フレイヤ、これを使って!森の毒に特別に効くポーションだから!」


 ウララがポーションの小瓶を取り出してフレイヤに渡す。


「ふぃーっ、美味しい!このポーションはすごく効くのだなぁ。くせになりそうなのだ」


 フレイヤはポーションの小瓶を飲み干すと感激の声をあげる。

 彼女の顔色はすっかり良くなり、いつもの薄桃色の元気な顔になっていた。


「みんな聞いて欲しいのだ。攻撃してわかったんだけど、あいつの体のどこかに魔石がありそうなのだ。モンスターなら魔石を排除して封印するなり破壊すれば終わるはずなのだよ」


 フレイヤは突撃で得られた情報を伝える。

 なるほど災厄級のモンスターであっても核となっている魔石を破壊すればいいのか。

 そういえば、銀狐様もモンスターの魔石を二分割したとかって言ってたっけか。


「……あいつ、巨大化しているぞ!」


 毒草を回収することによってエネルギーも増大したのだろうか。


「ぎぎっぎいっぎい」


 妙な声をあげながら、ヘルヴェノムはさらに空中に浮かび上がっていた。

 さらには巨大な球体の表面には複数の唇が現れ、どぐんどぐんと毒をまき散らし始めた。


「なんて行儀の悪いモンスターなのかしら!」


 ウララは怒るが、そんな問題じゃない。


「終わりだ、もう、終わりだ……」


 毒をまき散らすのを見た兵士たちが肩を落とし、絶望の声をあげる。

 無理もない話だ。

 豊かな森が異臭をあげながら枯れていく様子はこの世の終わりのようにも見える。

 

 上空に逃げられては攻撃も届きにくい。ハイジもフレイヤも険しい表情をしたままだ。

 さらには非常にゆっくりとではあるが、ヘルヴェノムは森の外へと向かおうとしているのがわかる。その方向はまっすぐにシルビアを示していた。


「敵の毒攻撃が強すぎて手も足も出ないとは……。くそっ、炎すら克服できていないのに……」


 ハイジが無念そうにつぶやく。

 縄はまだ残っているのかもしれないが、あの毒の前では結果は同じだろう。


 言っておくけど、俺は全滅するつもりはさらさらないぞ。

 俺の心の中にメラメラと燃える何かを感じているのだから。


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