第29話-2 形勢逆転サドンリー
「くそっ、ウララを狙え!殺しても構わん!」
シルフォードが叫ぶと、敵の弓兵たちが弓を引き絞り、無数の矢を一気に飛ばす。
やっべぇぞ、いくら何でも全部を盗むことはできないかもしれん。
「させないぜ、鉄の縄壁!」
ここでもハイジのスキルが発動!
縄を壁状に変化させて弓矢からウララを守る。これもかなり無茶苦茶なスキルだな。
「きゃあっ!?」
しかし、ウルルの盾として奮闘していたセキレイさんが魔法を喰らって吹っ飛んでしまい、その隙にウルルが連れ去られてしまう。
「がはは!これで形勢逆転だ!ウルルの命が欲しければ、踊るのをやめろ!」
卑怯を体現したようなシルフォードの言葉が響く。
ウルルの喉元にはナイフが突きつけられており、一時の予断も許されない。
俺が行くか?と勇者に目配せをした時だった。
「ひぐわっ!?」
ウルルを捕まえていた男が突然前のめりに倒れる。
よく見れば、その頭にはあの武器が刺さっているではないか。
「ウララ特製の麻痺毒をしっかり味わいな!言っとくけど、ミネウチだからね!」
その声はイルだった。
彼女の手元には大小さまざまな飛び道具。
今度は武器をたくさん持ってきたらしい。
ぶんっ、ぶんっと敵に投げつけてばたばたと敵をミネウチしていく。
「今日も素手で登場なのだ!ヴァルキリーのフレイヤ、いざ参る!」
「「「このあいだの狂戦士ぃぃいいいっ!?」」」
そして、聞きなれた声がもう一人。
フレイヤが敵の後ろ側から突如現れ、一気にタックルをかましてふっとばす。
予想外の方向からの攻撃に敵は大混乱。当初の勢いを失ってしまう。
「何をしておる!戦いは数だ!囲いこんで数で押しつぶせ!」
しかし、シルフォードも案外、頭が回るらしい。
守備のために林道に配置していた兵士たちをこちらに呼び寄せる。
どうやら俺たちを一人一人囲い込んで潰す作戦なのだろう。
冷静に見れば俺たちは4人しかいないのだ。数で押し切られたらやばい。
グギャアアォォォオン!
そんな時だった。
森のほうから凄まじい叫び声が聞こえる。
「し、シルフォード様!後方から森の主が!ギガントリザードがやってきます!」
じりじりと押されるのを覚悟していた俺だったが、まさかの援軍が現れる。
超巨大なモンスターがやってきてシルフォードの軍勢を襲い始めたのだ。
巨大なしっぽを一振りするだけで、数十人が森の中に吹っ飛ばされる。
こんなのが来たら俺たちもやばいんじゃね?
「エールーっ!助けに来てあげたよ!」
その巨大なトカゲの上にはリースが座っているではないか。
まさかあれを操っているのか!?
しかし、巨大トカゲの攻撃は一回だけで終わる。
その後はどすん、どすんと歩いて森へと帰っていくのだった。
しかし、すごいじゃないか!
死ぬほどエグい援軍だったぞ。
「エル兄、相変わらず要領悪すぎ!」
「エル殿、あたしのタックル、見てくれたのだ?」
「エル、昨日の借りを返してあげたよ!」
「三人とも最高だぜ!」
イル、フレイヤ、リースの三人は俺のもとに集まってきて、お互いの無事を祝う。
あぁもう、一番いい時に来てくれたぜ!
「ふふ、エル兄、マナがそろそろ足りないんじゃないの?」
「実はそうなんだよ、頼めるか?」
「「まっかせといて!」」
イルとフレイヤが俺の両手をそれぞれの胸におく。手のひらに彼女たちの命の熱を感じる。敵兵の前だが、今は恥ずかしがってもいられない。
「あんたたち、敵に囲まれてるのになにやってんのよ!?へ、変態の仲間たち?」
リースは驚きと誤解の声をあげるが説明は後だ。
マナがなけれりゃ俺はゾンビ以下の働きしかできないわけで。
「うぉおおおおっし!」
集中力のなせる業なのか、10秒もたたないうちに俺は完全に活力を取り戻す。
今なら何百本でも刀を盗むことができるぜ。
「こうなったら総力戦だ!全員殺してしまえ!」
「エル、敵の主力が来るぞ!」
「あぁ、いくぞ!」
「やってやるのだ!」
シルフォードの怒号と俺たちの叫びが重なる。
雄たけびを上げる騎士団に重戦士に魔法使いを迎え撃つ、ハイジにフレイヤにイル、そして、リースのモンスターたち。
俺は敵の武器を、防具を、魔法の杖を奪い続けるのだった。
ごぽごぽごぽ・・・
そして、その時は訪れた。
俺のアイテムボックスが武器と防具であふれかえり、フレイヤが5度目の突撃を成功させ、イルの手裏剣がほとんどなくなり、リースの狼たちが敵を挟撃した頃合いだった。
「おやおや、騒がしいのぉ」
王位継承を司る銀狐様が現れ、やけにのんびりしたことを言う。
「銀狐様、私が次の王となるウララ・シルビアにございます」
「ふむ、ウララよ、やはりお前か。王者の道は険しいが覚悟はあるのか?」
「……はい、もちろんです、銀狐様」
「いいだろう、我が娘よ。王者の証として薬師の加護を与えよう。ゾゾイの森を守るがよい」
銀狐様ウララの額に手を置くと、二人は一気に輝き始める。
ついに、王位継承の儀式が完了したのだった。
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