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第28話-2 女たちのチャレンジ


「ウララ、あんた、こっちの道ってやばいじゃん!山みたいなトカゲがいるんですけど!?」


「にゃはは!背中に木が生えててかっこよすぎるのだ!ヴァルキリーのフレイヤ、いざ勝負!」


「私だってわからないわよ!って、フレイヤ、勝手に飛び出さないの!」


 イル、フレイヤ、ウララは危機に瀕していた。


 予定ではエルのいる場所まで抜け道を行くはずだったのだが、その途中でギガントリザードが道をふさいでいたのだ。

 そのモンスターレベルはAクラス。

 「森のドラゴン」と異名を与えられるほど巨大な体躯を誇り、ゾゾイの森の主とも言われていた。


 フレイヤが飛びかかってしばらくすると、べしっ、ごがががっと派手な音が響く。


「フレイヤ!?」


 フレイヤがギガントリザードの尻尾で弾き飛ばされてしまったのだ。


「にゃはは、結構、固いのだ。素手だと傷もつかないぞ」


 フレイヤは着地に成功して傷は負ってはいない。だが、フレイヤの攻撃にも無傷のままであり、かなりの防御力を誇る強敵であることは間違いない。


「どうすんのよ、これ?私のナイフも歯が立たないじゃん」


「どうするのって言われても、毒すら効かないのよ?」


「とりあえず、もう一回、殴りたいのだ。先っぽだけでいいのだ」


 三人は顔を見合わせるが、アイデアが浮かんでこないまま時間だけが過ぎていく。

 ぐぁああああ。

 ギガントリザードは道に突っ伏したまま大あくびをして日光浴を始める始末だった。


「……あんたたち、何やってるの?」


 立ち往生していると、唐突に誰かが後ろから声をかけてくる。


「って、エルと一緒にいた露出狂女!」


「お前はあの時の魔獣使いなのだ!白黒の狼もいるのだ!にゃはは、久しぶりなのだ」


「こら、私の使い魔になれなれしくするな!」


 そこにいたのは魔獣使いのリースだった。

 彼女は真っ黒な狼に乗っており、その後ろには白い狼がひかえていた。

 二頭とも凶悪そのもののモンスターであり、森で襲われたら無事では済まない。


 イルとウララはぎょっとするのだが、フレイヤは狼たちとじゃれ合い始め、「わふわふ」「にゃははは!」「ぐふぐふ」などと狼とフレイヤの声が森に響く。


「あんた、何なの?野生児?」


 その様子をイルとウララの二人はぽかんとした顔で眺めるのだった。


「二人とも大丈夫なのだ!この狼は優しいやつなのだ。悪い奴はみどり頭しかいないのだ」


「悪い奴っていうな!私はもう悪事から足を洗ったんだから!」


「ふむ、それはよい心がけなのだな。それで魔獣使いは何しに来たのだ?」


「私はエル・ヘルムートを探しに来たんだけど……。あいつ、ゾゾイの森の奥に行ったの?」


 彼女は昨夜エルが助けてくれたことを伝える。

 朝になって、なんとなくエルのにおいを追いかけてみたら、三人に出くわしたという話だ。


「つまりは魔獣使いもエルに恩返しというわけね?見かけによらず義理堅いじゃない」


「見かけによらずって何よ!?……って、あなたは王女様!?悪いけど本物よね!?」


 リースはウララを見つけてびっくり仰天する。

 王女が悪職の二人に囲まれて行動しているなんて想像もできないことだ。


「そうよ?リースって言ったわよね、あの大きなモンスターどうにかできないかしら?魔獣使いならどうにかできるんじゃない?手を貸してほしいの」


「手を貸してって言われてもねぇ……。相手はAクラス級の森の主よ?2つ星でも負けかねない相手でしょ」


「お願い!私たちはエルのところに行かなきゃまずいことになるの!」


 リースのもとに駆け寄り、さらに大声を上げるウララ。

 拳をぎゅっと握られたリースはウララの必死さに何より驚く。王族が悪職である自分の手を取って力を貸してくれと懇願するなんて想像もできないことだからだ。

 これまでの人生で、彼女は邪魔者扱いされるか、危険視されるかのどちらかだった。


「わかったわよ。じゃあ、私があのギガントリザードと話して時間稼ぎしてみる。その隙に王女様だけでも抜け出せばいいんじゃない?一か八かだけど、やってみる?」


「……やるわ!」


 どうせこのままじゃジリ貧になる。

 そう思ったウララはリースの提案に乗ることにした。


「このウオウちゃんの後ろに捕まってて。この子、においでエルのところに連れてってくれるから振り落とされないようにね」


 リースはそういうと真っ黒いオオカミから降りて、真っ白いオオカミに乗り換える。

 そして、彼女は巨大なオオトカゲのほうへと歩み寄り、腕輪を宙にかざしてゆらゆらと揺らす。

 腕輪にはモンスターの意識を一時的に引き付ける作用があるのだった。


「ウオウちゃん!今だよ!」


 リースの合図を聞いた狼は一気に加速し、ウララを乗せて走り去る。


「おぉっ、やった!魔獣使いのやつ、すごいのだ!」


「……すごいけど、あのトカゲ、怒ってない?大丈夫?」


 しかし、安堵したのもつかの間、敵は巨大なしっぽを振り回して、リースを攻撃し始めるのだった。

 白いオオカミは俊敏にその攻撃を避けるが、一発でも喰らえば致命傷になる。


「やるっきゃないのだね!」


 三人は覚悟を決めて巨大なトカゲに対峙するのだった。


「エル、待ってて!今行くから!」


 そのころウララは猛烈に揺れる狼の背中に必死にしがみついていた。

 卑劣なシルフォードの野望をなんとしてでも阻止しなければならないと誓いながら。


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