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第22話 しょうこりもなく作戦会議第2回目


「簡単なのだ!ウララがあのシルフォードとかいう男を吹っ飛ばせばいいのだ!コツさえつかめば素手でも内臓破裂ぐらいちょちょいだぞ!」


 フレイヤは「それだ、それしかない、それで行こう、抜き手で一発」と勝手に盛り上がる。

 しかし、ちょちょいで内臓破裂できるのはフレイヤぐらいだろう。

 それに、もしウララがシルフォードに一矢報いたとしても彼女自身が無事では済まない。

暴力で解決するのは、最後の手段にしておきたいわけで丁重にお断りする。


「フレイヤ、ウララみたいな王女様がそんなのできるわけないでしょ!頭を使わなきゃ!」


 イルはフレイヤの案を一笑に付す。イルはこう見えて冷静なタイプだ。そうそう、頭を使った作戦じゃなきゃだめだ。


「やっぱり武器でしょ!物陰からナイフで脳髄を一突きすればいいじゃん?耳の鼓膜から刺突器で脳まで届かせるのもいいし」


 ……まさかの逆パターンのご提案。


頭を使うっていうか、頭を突くだろ、それは!

 そもそも二人とも素手で内臓破裂とか、脳髄一突きとか語彙が物騒すぎるんだよ。


「そうだ、いいこと思い出した! エル兄がウララに変装して王宮に行けばいいじゃん!」


「はぁ?ウララに変装なんて、できるわけないだろ!」


 イルが何かを思いついたらしく手を叩く。

 しかし、それはあり得ない提案だった。俺みたいな目つきの悪い奴がどうしてウララみたいな姿になれるというのか。超絶美人なんだぞ?そもそも性別が違うだろうが。


「……ふふふ、試したいことがあるんだよね。エル兄、ちょっと、顔かしてみなってば」


「おい、ちょっと待て、何を!?痛い、ひぎっ、やめろぉお!」


 イルはおもむろに俺の傍にやってくると、俺の顔を両手で揉み始めた。

 その手つきは残忍極まりないもので猛烈に痛い。尋常じゃない痛みに涙が出てきそうだ。


「えーと、目つきはこんな感じで。眉毛の角度は……これか」


「ひぐぅ、いてぇ、やめてください、イルさん!」


「いいから、いいから、ほーらできた!」


 激痛マッサージが終わった俺はウララたちのほうに顔を向けさせられる。

 一体、何の意味があるんだろうか、新手の拷問だぞ。


「うそっ!?」


「あはは!性格がちょっと抜けてそうなウララなのだ!」


「そっくりです!」


 ウララとフレイヤとセキレイさんは口をあんぐり開けて俺の顔を覗き込む。


「ほらほら、エル兄も見てごらんよ」


イルは俺に手鏡を渡してくる。


「な、なんじゃこりゃ!」

 

そう、そこにはウララがいたのだ。

 髪型は完全に俺なのだが、顔つきは完全にウララそのものである。顔が一回り小さくなった感じがするし、モンスターにやられた顔の傷も消えている。

 

うっそぉ、俺、美少女になれる系男子だったのかよ!?

 ……嬉しくねぇぞ、言っとくけど!


「あー、声をなおすのを忘れてた。……ここかな?」


「ふぐぉっ!?」


 イルは両手の親指を俺の喉元に思いっきりぶっさし、さらには親指をぐりっ、ぐりっと回す。

 これまた失禁しかねないほど強烈な痛みが喉全体を覆いつくす。


「何するんだよ!……って、ひえぇええ!?」


 声が変わっていたのだ。

 確かにウララっぽい声に変化していた。


「何これ!?」


「あははは! 優柔不断そうなウララができたのだ!」


「ゆ、夢なのこれ?エルが私で、私はウララで……」


 三人は俺の変貌ぶりに驚いて、それ以上何も言えなくなる。

 というか、ウララは混乱の極みに達して青ざめている。

 顔の構造のみならず、声まで変わるとは……。しかも、これって何なんだ!?


「あの魔女のお姉さん、去り際にエル兄は姿かたちをある程度なら変えられるって言ってたんだよね。マジで変わっちゃうなんてびっくりだけどさ!もしかしたら髪も変えられるかも。エル兄、ちょっと念じてみてよ」


「ウララみたいな感じにしてくれって? まぁ、ダメもとで……よし、どうだ?」


「……変わってるわ。かなり似てるかも!」


 ウララはもはや開いた口がふさがらない状態。

 顔や声が変わるだけじゃなくて、髪型まで再現できるなんてどういうことだ!?

 右腕が使えるようになって以降、俺の体はどんどんおかしくなってないか!?


「なんか、体がそわそわするんだけど……。全力で盗みを働いている時みたいな感じというか」


「あっちゃー、この変装術はマナをどんどん使うっぽいね……」


 なるほど、ただの変装術じゃないらしい。

 体内にあるマナを使って変装するスキルだったのだ。マナが切れたら俺はもとに戻ってしまうわけで危険な賭けになりそうだ。

だが、今はこれしか選択肢がない。

にわか仕込みだけど、このスキルで窮地を打開するしかない。


「でさぁ、エル兄、お願いがあるんだけど!せっかく王宮に行くんだし、お宝をとってきてよ。門外不出のお宝とか武器とかいろいろあるでしょ?」


「あほか!そういう仕事じゃないだろ!そもそも、お前はこないだ盗んだだろうが!」


「なにさ、ケチ!あれは味見でしょ!?」


「盗みに味見とか言わねぇよ!」


 イルージュ・ヘルムート、こいつはこいつでなかなか邪悪なのであった。

 ケチとかそういう問題じゃない、そもそも王宮のものは王族のものなんだし。将来的にはウララのものだって言える。


「あのぉ、差し出がましいようですが今のままではすぐにバレてしまうと思います」


「えっ、どこかおかしいっすかね?」


 しかし、セキレイさんから横やりが入る。

 ウララのことを身近で見ているからこそ分かることがあるんだろうか。


「はい、ウララ様の姿勢や、物腰、そして、しゃべり方が全然違います。ウララ様は『言わねぇよ』などと下品な言い回しは絶対におっしゃりません」


「……たしかに!」


 セキレイさんの言うことはもっともな話だった。

 俺が身代わりになって潜入しようとしても、物腰や口調でばれてしまっては意味がない。それにしても下品な言い回しって歯に衣着せぬすぎやしませんか。


「よし、徹底的にあなたを私以上のウララにしてあげる!なんだか楽しくなってきちゃった」


「ひぃいいい」


 思わず飛び出る悲鳴である。

 かくして俺はウララ以上のウララになるべく、猛烈な特訓を受けるのであった。


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