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第18話 宝石奪還大作戦 -捕縛の女勇者-



「大臣の屋敷に忍び込むとは大胆な賊め!これでも喰らえ!」


 フレイヤの頭をなでていると、こちらに炎が飛んでくる。

 きゃおらっと間一髪で避けるが、皮膚をじりじりと焼く真っ赤な炎に驚きを隠せない。


「火炎剣を避けるとはさすがは悪職だ!」


 見れば屈強そうな顔をしたおっさんが立っているではないか。

 その剣はメラメラと炎をまとい、控えめに言ってめっちゃかっこいい!

 おっさんは魔法剣士っていうジョブなのだろうか。

 生まれて初めて実物を見たが、かなりレアなジョブのはず。


「俺はこのシルビアで冒険者ギルドの長をやってるガタカという。こう見えて二つ星冒険者だ。ヘルムート相手に手加減はできん。殺すつもりで行くぞ!」


 ガタカと名乗ったおっさんは怒号をあげて俺たちに切りかかってくる。

 手にはメラメラと燃え盛る剣を持っており、そこから炎を飛ばすことができるらしい。


「フレイヤ、出番だぞ!」


 俺はあわてて槍をフレイヤに渡す。


「おぉっ!骨のありそうなおっさんなのだ!あたしはヴァルキリーのフレイヤなのだ!」


 おっさんの猛烈な攻撃を槍でいなすフレイヤ。

 ガギン、ガギンと金属のこすれる音が攻防の激しさを物語る。


「北方の怪物、ヴァルキリーときたか!俺たちの冒険者ギルドに入れられねぇのが残念だな。ようし、お前の本気を見せてみろ!」


「にゃはは!悪いが、まだまだあたしの実力は30%ぐらいだぞ!」


「ふん、それなら俺も本気の半分ぐらいを出させてもらうぞ!」


 フレイヤとおっさんが無駄に暑苦しい掛け合いを始める。

 おっさんの火炎は連発はできないらしいが、距離を置かれると危険だ。

 それでもフレイヤは槍を回転させて火炎をいなす。

 俺は彼女の技術力の高さに見とれてしまうのだった。


 しかし、今の俺たちはおっさんと戦ってる場合じゃない。ウララを解放するのが最優先だ。

 いったんはこの狂犬(フレイヤ)を落ち着かせなきゃダメだな……。


「フレイヤ、ちょっとお預け!」


「な、なにをするのだぁっ!?」


 フレイヤの背後に音もなく近づいた俺は彼女の槍を回収してアイテムボックスに入れる。

 これなら彼女もおっさんと戦いたいとは思うまい。


「フレイヤ、いったんイルとウララのところに合流するぞ!槍はそっちで渡すから」


「えぇ!?せっかく強そうなのが来たのに!?」


「わがまま言うと、槍は返さないぞ?」


「ぐむむむ、心得たなのだっ!」


 フレイヤをなんとか説き伏せて、大臣の屋敷のだだっ広い中庭を思いっきり走る。

 おっさんは「待ちやがれ、卑怯だぞ!」なんていうが待ってやる義理はない。

 縛られたウララを助けるのが先だ。

 イル一人に任せるのはどう考えても嫌な予感がする。


「エル兄!こいつらしつこい!ロープも切れないし!」


 到着してみてみれば、イルはウララのロープを切ることができていなかった。

 ウララは地面に転がったままで俺たちに「助けて!」と叫ぶ。


 ……本当にこの王女様は縛られて転がされるのがお好きらしい。


「お前ら、俺たちが何人いると思ってるんだ?」


「こちらには捕縛の勇者様に、冒険者ギルドのガタカ様もいるんだ!」


 短剣や斧をも手に持った男たちが俺たちを見て笑う。

 確かに囲まれたら非常にまずい。

 向こうから火炎剣のおっさんが走ってくるのが見えるし、早いところウララを解放しなければならない。


 ……ふぅ、しょうがないか。


「フレイヤ、退却って言ったら退却だからな。今度は大丈夫だよな?」


「わかってるのだ。ヴァルキリーの名誉にかけて誓うのだ。だからほらほら、あたしの槍を早く渡してほしいのだ。おっさんとやりあうのだ!」


 その名誉の誓いがいかほど信じられるかわかったものじゃないが、それでも俺は彼女に槍をほいっと手渡す。

 槍は龍の文様が施されており、俺から見てもかっこいいものだった。


「いいぞ、火炎剣のガタカの真骨頂を見せてやる!」


「くふふ、ヴァルキリーのフレイヤ、参る!」


 無駄に暑苦しいおっさんを前にして、力強い声で名乗りを上げるフレイヤ。

 彼女はだだんっと踏みしめると、刃物を持った男たちの群れに飛び込んでいく。


「ふぐわっ!?」


「なんだ、こいつ化け物か!?」


 フレイヤの槍の前で男たちはどんどん吹っ飛ばされていく。

 小さい体のどこにそんな力が備わっているのか謎だが、とにかく頼りにするほかない。


「お前、あの時の小僧だな?ヘルムートは義賊と聞いていたが、ただの小悪党とはがっかりだぜ。大人しく、お縄になりやがれ!」


 そして、俺の前に立ちはだかるのが捕縛の勇者のお姉さんだ。

 髪の毛はピンク、顔立ちも姿勢も美しく、凛とした雰囲気は惚れ惚れする。

 こんな美人と敵対するのは非常に心苦しいが、ここで捕まってしまうわけにはいかない。


「喰らえ!百本捕り(ハンドレッドロープ)!」


 彼女が叫ぶとその背後から猛烈な数のロープが飛んでくる。

 幻術の類なのかと思ったが、全て本物。

 つまりは一本でも触ったら縛られるってことだ!


「いくら勇者だからって、こんなのありかよ!?」


 無数の縄がまるで生き物のようにうねり、俺めがけて追いかけてくるではないか。

 俺はナイフすら持っていないわけでロープを切ることさえできない。

 とにかく逃げながら、活路を見出すしかない!


「イル、まだなのか!?」


「まだ!っていうか、このロープ、固くて切れないんだけど!どうなってんの!?」


 ウララのロープさえほどければ何とかなる。

 そのはずが、イルからは予想外の言葉が飛び出す。ナイフですら切れないロープって何なんだよ。見かけは普通のロープだってのに。


「はっはっはっ!私のロープはどこまでも伸びるし、固いんだぜ!参ったか、この泥棒!」


 腰に手を当てて高笑いをする捕縛の勇者。

 限りなく伸び続ける固いロープだと!?

 シルフォードめ、やっかいなやつを連れてきやがって。


「追い詰めたぞ!お縄をちょうだい!」

 

 しかも、気づけば俺は四方八方をロープに囲まれている状態になっていた。

 さらにはお姉さんの「かかれ!」の一言で俺めがけて飛んでくるロープの束!

 普通じゃ避けられないだろうが、俺の身体能力だって伊達じゃない。

 腕が動かない間、とにかく足腰の鍛錬だけはやりまくったんだ。


「おらよっ!」


 俺は僅差でロープの隙間を抜けて、ウララたちのもとへと向かう。


「なにっ!?避けるなんて卑怯千万!盗っ人ならば、もっと正々堂々と戦え!」


 お姉さんはわけのわからんことを要求するが、俺は盗賊、逃げるのも仕事のうちだ。

 そういえば、大臣はどこに行ったんだ?


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