第17話 宝石奪還大作戦 -槍使いVSフレイヤ-
「……やっぱりこうなるか」
いざ戦闘になればフレイヤは高確率で暴走するだろうし、ウララはついていけないだろう。
そこまでは想定の範囲内だった。
想定外なのはピンク髪のお姉さんが現れたこと。あの縄はかなり厄介そうだ。
「イルはウララのロープを切ってくれ。俺はフレイヤを連れてくる」
「りょーかい」
死角に隠れていた俺たち兄妹は二手に分かれて行動することにした。
ガギィン!
金属と金属の激しく衝突する音。
フレイヤと戦っている槍使いはかなりの腕前だ。
割り込んでいったら俺まで殺されかねない。
「エル殿、すぐに済むから待っててほしいのだ!槍を回収しないと、あたしは帰れないのだよ!」
フレイヤは笑顔で叫ぶ。
明らかに戦闘を楽しんでいる様子だ。
「お前らごとき悪職など蹴散らしてくれる!俺は星付きの槍使いだぞ!喰らえ!」
浅黒い肌をした男は槍を構えて俺たちに向かってくる。
どこからどう見ても、なかなかの身のこなしだ。
『極意5:真の盗賊こそ柔よく剛を制すのだ!』
槍使いと相対する中、俺の頭の中に爺さんの極意が聞こえる。
今日はその顔まで浮かぶような気さえする。
誰なんだ、この爺さん……。
「うぉおおお!重突撃」
必殺技らしきものを叫ぶ敵。
渾身必殺の一撃でまともに喰らったら風穴があくだろう。
だが、間一髪で奴の槍を避ける。
さらには奴の槍の重心を見計らって、そぉっと手を差し出す。
「ふはは、よくぞ避けたぞ!しかし、俺様にはさらに6つの究極技が残っている!」
技を避けられたにもかかわらず、槍使いは不敵な笑みを浮かべている。
「あんた、槍もないのにどうやって突撃するんだよ?」
「なにを!?お、俺の槍をどうしてお前が!?」
そして奴は気付く。俺が槍をすでに盗ってしまったということを。
ポイントさえ見計らえば余計な力はいらない。これが俺の刀狩りのスキルなのだ。
「返せ!俺の槍だろ!貴様、他人のものを勝手にとってはいけないと習わなかったのか!?」
地団太を踏んで怒り出す槍使い。
いや、どっちかというとお前がフレイヤの槍をぱくったんだろうが。
「おぉ、さすがはエル殿なのだ!それじゃ、このネコババ野郎にはお仕置きなのだ!」
1秒後、どごんっとすさまじい音。
それはフレイヤが素手で槍使いを壁までふっとばした音だった。
パンチが相手の顔面にめり込んでいた気がするけど、見ないふりをする俺である。
「エル殿、エル殿!凶悪な元槍使いをやっつけたのだ、褒めて欲しいのだ!」
フレイヤは褒めて褒めてと俺の前で目を輝かせる。
じゃれあっている場合でもないが、褒めないわけにもいかない。
俺は可及的速やかに「えらいぞ」と頭をなでる。すると、彼女はどこから声を出したのかはわからないが「くぅぅうん」と鳴く。
……くうっ、かわいいな。
戦いの真っただ中だというのにちょっと優しい気持ちになれた俺なのであった。
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