第14話ー1 エンカウンター狂戦士
「フレイヤ、俺の村に来ないか? 世話になったお礼にご馳走をするよ」
「行くっ! 言うまでもなくっ!」
シルビアの街を探し回ったがフレイヤの槍は見つからなかった。
時間は日没近くで、そろそろ村に戻らなければならない頃合いだ。
しかし、槍が見つからないままフレイヤと別れるのも忍びない。そこで俺はフレイヤを村へ誘うことにしたのだ。
馬車を使って村に到着すると、俺たちはいったん家へと向かう。
「エル兄、遅かったじゃん!留置所に入れられたかと思って心配したんだけど。ひょっとして脱獄してきたところ?」
物騒なことを言いながらイルが出迎えてくれる。
そんなにひょいひょい脱獄するか。こいつは俺をいったい何だと思ってるんだ。
「エル、お帰り!ちゃんと買い出しはできた?」
イルの後ろにはウララが現れて、俺の手をぶんぶん振る。
「あぁ、無事にすんだよ。買い出しのものはアイテムボックスに入ってるから後で渡す」
「エルってアイテムボックス持ちなのね!偉いわ~、いい子いい子してあげよっか?それとも私の高貴なマナをたっぷり召し上がるかしら?お風呂のあとがいい?」
たいした買い物をしたわけでもないのに無用に褒められる。
さらにはマナチャージをしようと胸元においでおいでのジェスチャー。豊かな胸元は甘そうな香りを発している気がして、非常に心惹かれる。
だが、家族の前だし、フレイヤもいるし、いけるわけないだろ!
「エル兄は子供扱いされるのは嫌なんだよっ。マナチャージは私だけの専売特許だから!」
「ふふん、男はみんな年上お姉さんに甘えたい生き物なのよ?」
「なによ、この女狐!」
「言ったわね、この刃物女!」
相変わらずいがみ合うイルとウララの二人である。
姿は美しい二人だが、やってることは非常に残念だ。
せっかく一仕事終えたというのに俺は玄関のところで立ち往生することになる。
「おぉー、いい家なのだ。ここの村は民家が木でできているのだな」
救いがあるとすれば、俺の連れてきた客人はとことん能天気な性格だということだ。
フレイヤは俺の家を見て、いたく感動した面持ちをしている。マントを身に着けている彼女は小動物のようにかわいらしい。
「こちらは旅人のフレイヤさんだ。街でとても世話になったんで食事でもどうかと来てもらったんだ。フレイヤ、こっちは俺の妹のイルで、こっちはええと……俺の依頼人のウララだ」
俺はフレイヤを二人に紹介する。
ウララを王女というべきにもいかず、俺はとりあえず依頼人と呼ぶことにした。
「どういうこと!?初対面の子を家に連れ込むなんて大胆不敵すぎなんだけど!そもそもこんな子供を連れてきていいと思ってんの?」
「そうよ!ここは依頼主にべったりであるべきでしょ! イルより年下なんて犯罪よ!これはもう捕縛の勇者に教育的補導をしてもらわなきゃだわ! とりあえず裸吊りの刑ね」
イルとウララの二人は見当違いなことを言いながらつっかかってくる。よっぽどフレイヤを連れてきたのが気に食わなかったようだ。
……てか、裸吊りの刑ってなんだよ!?
「フレイヤは俺の恩人なんだよ。今日の買い出しもフレイヤのおかげで完了したんだってば」
「にゃはは、それを言われると照れるのだ。でもでも、エル殿こそがあたしの恩人なのだぞ。二人ともよろしくなのだ」
フレイヤは礼儀正しくマントを脱いでぺこりと挨拶をする。
それから握手のために手を差し出したのだが、二人の視線は彼女の手には向かわなかった。
「はあああぁ!? どういうわけ、顔はガキっぽいのに体は大人なんてありえない!」
「くっ、暴力的すぎるわ!いきなり反則技!?」
二人の視線はフレイヤの胸の二つの丘に向かっていたのだった。
相変わらず大きい。
二人は口をあんぐり開いたままフレイヤを指さしてわーぎゃー言っている。
……言いたいことはわかる、あれは反則だ。
「ふふふ、イルはすごくかわいい妹さんなのだな。ウララはとにかく賢そうなのだ」
フレイヤはフレイヤで好き勝手に物事を言う二人を気に入ったようだ。
心が広いのか天然なのか、怒ったりする様子はまったくない。
「ふん、分かればいいのよ。とにかく!エル、後で作戦会議だからね」
褒められたウララはごちゃついた空気を仕切りなおすと、自分の部屋へと戻っていく。
夕食をとり終えたら、ついに宝石の奪還について作戦会議を立てるらしい。
いよいよ、王女様の泥棒を務めるタイミングっていうわけなんだろう。
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