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#9 / 喫茶店


学校の放課後、ロナとセシリアは二人で喫茶店で新しいメニューを楽しんでいた。レイアはいつも通り習い事で早めに帰り、チェルシーは他の用事で遠出しているようだ。

「新作のケーキはなかなか絶品ね。流石ピノッキオのお店だわ。」

ピノッキオは喫茶店の名前だが、セシリアはよくこの店でデザートを食べているらしい。

「そんなに食べて大丈夫?」

「平気よ。お小遣いはある程度な金額なら問題ないわ。」

「それもそうなんだけど。」

確かにこの喫茶店のメニューは割と値段が高いものが多いが、それ以前にカロリーも気になってくる。

「こういう料理は、家では作らないの?」

「え?そうね。作るとしても、料理によってはキッチンの規模も大切だし。」

そもそも電化製品などないこの世界では、オーブンといえば大きなレンガで作られた物になる。

「錬金術で作れたりは、しないのかな。」

「複雑なものを作るのは無理だけど、小麦粉を直接生成するのなら可能かしら。」

「そうなの?」

「でもあまり意味はないわね。小麦をそのままロワールが吸い込んで小麦粉に生成するだけだもの。」

「それってヨダレで固まらない?」

「ロワールの気分次第では、ちゃんとヨダレ塗れにならないようにしてくれるんだけど。余程フランカのことが好きだったようね。」

ロワールがフランカをコピーするために吸い込んだが、ロワールは一体口の中でフランカをどうしたのだろうか。

「人間が吸い込まれたら、そのまま人間をコピーできるの?」

「え?うーん。それはどうだろう。程度によるだろうし、その人間を吐き出すのにロワールは変身後の体を加工しなくちゃいけないから。」

人間の口から同じ大きさの人間が吐き出されるところを想像してしまい、シュールさが漂った。

「それに、あまり大きすぎるものに変身するのも難しいから。ロワールの魔力にもある程度限界はあるし、自分の能力を超えすぎている存在をコピーするのも無理ね。」

「セシリアは、ロワールとどんな風に契約したの?」

「10歳の頃に、田舎にある魔術師の工房でロワールと出会ったのが最初ね。最初会った時、ロワールが私の帽子を飲み込んでその姿をコピーしていたんだけど。それに気が付かずにそのまま家まで持って帰っちゃって。」

「それで、どうしたの?」

「そのまま返そうかと思ったんだけど。魔術師の工房の人に悪さをする精霊だったからそのまま捕まえておいてくれって言われて。私はとりあえず、その魔術師の言うとおりにその精霊と契約しちゃったのよね。」

「えぇと。つまり、押し付けられたってこと?」

「えぇ。最初のうちはコントロールできなくて、食堂にある食べ物を食べたり、家具に擬態してメイドを驚かせたり散々だったけど。ある程度努力してロワールとの魔力がシンクロしていくと、自然に私の期待に応えるようになったわね。」

「ロワールとは、いい関係になれたってこと?」

「まだたまに、時々勝手に出てきておやつを吸い込む時はあるんだけどね。」

「あぁ・・。」

丁度、そのロワールは魔法陣の中から出てきた。精霊は術者と契約すると、その術者の守護霊として霊体化することが一般的である。

精霊によっては、その術者に対して有効なフォローをしてくれることもあるが。時々呪詛めいたこともあったりするらしい。

「ん?どうしたの?」


「いや、後ろ・・。」

セシリアが振り向く前に、ロワールはものすごい勢いでセシリアが食べていたケーキを吸い込み、すぐに霊体化して消えていった。

「・・・・・。」

「物凄く素早かったけど、やっぱり今でもコントロールできてないんじゃ・・。」

「くっ、これで私のおやつを直接強奪したのは何回目よ!?今すぐ出てきなさいロワール!」

そう叫んだが、セシリアの呼び声にロワールは答えなかった。

「・・・出てこないね。」

「はぁ・・馬の方がまだ上手く乗れるわね。ロワールの場合、知性がある分厄介っていうか。」

「精霊って、どの程度頭いいの?」

「さぁ。少なくとも犬よりはいいんじゃないかしら。中には精霊同士の戦いもあって、統率力のあるリーダーは人語も習得できるみたいだけど。」

「えぇと。精霊同士の戦いって・・群同士の争い見たいな感じ?」

「えぇ。と言っても、そこまで大規模じゃないけれど。ロワールの場合、土属性だからある程度の鉱石の原理を理解しているから。錬金術で高度な魔法を使えば、金を複製することだってできるみたいだけど。」

「それは、凄いことだね。」

「えぇ。でもその領域に達したロワールはあまり居ないだろうし、好き嫌いもあるから。別のロワールの個体でも、大量のよく分からない石を集めていたりするから。そのロワールにとっては金なんてそもそも価値はないものなんじゃないかしら。」

「そういうものなのかな。」

「私はロワールの変身、コピー魔法を使えば全属性の魔法を使えるから。重宝はしておきたいんだけど。」

火、風、水、土、空の五つの能力をロワールが能力をコピーすることはできるが。しかし一度コピーした後、他の能力をコピーすると前に覚えたものは忘れてしまうのが欠点である。

土系統の魔法は大体使えるので、別にその魔法を優先的に試しても悪くはない。

また、空。無色系統と呼ばれる能力は使えないものもあるとか。

ロワールにとって理解できる範疇にないものは扱えない魔法もあるらしい。

「でも、みんな中々コピーさせてもらえないのよね。ロワールがどこまで他の精霊の能力をコピーできるのか再現したいのに。」

「・・・。」

自分の精霊が吸い込まれて、ヨダレだらけになって帰ってくるのは嫌なんだろう。

「・・・でも、ロナの前だと。そこまで欲張るのもおかしいわね。」

「私は、別に使い魔が居なくても平気だから。何故か他の精霊とコンタクトしようとしても、跳ね返されるというか。上手く適合するのが難しいし。多分、ベルエスカの血統のせいだと思うけど。」

「そう。いっそ、神格級の精霊とかと契約してみたらいいんじゃない?」

「それは、そもそもその精霊に会うために危険な行為もしなくちゃいけないんでしょう?」

「うーん。もしかしたら、ってこともあるじゃない。」

「それってどういう状況なの?」

「空から突然、降ってきたり。」

「もしそうなったらいいんだけど。」

私の個人的な推測になるけれど、ベルエスカ家の昔の家系が他の魔物を打ち倒すために得たプラーナに精霊は拒否反応を起こしているんだと思っていた。

あの夜の日、私の祖母であるフアナに会った時は別の世界の人間のように思えていた。

明らかにフアナは、母親のレジーナと違う物を持っていて。そしてあの闇の獣を打ち倒した。

そのフアナが何故生きているのか不思議だけれど、それ以前にその血統を私も受け継いでいるのであれば。その危険な匂いのするプラーナは精霊にとっては毒なのだろう。

「そうね。適当に地道に探していけば、ロナに相応しい精霊は見つかるはずよ。」

「レイアとチェルシーの場合は、どんな出会いだったの?」

「そういえば、そこら辺は聞いてなかったわね。後でみんなと一緒に会ったら話してみましょうか。」

また、追加されたケーキを彼女は食べていた。セシリアの美味しそうなケーキを狙ってまたロワールが現れるが、その吸い込みをセシリアは阻止した。

この光景を昔から繰り返しているとなると、精霊を使い魔として使役するのは大変なのだと私は理解したつもりでいる。


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