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#8 / 使い魔の能力


学園の授業では、ある程度乗り越えられそうな部分はあったが。プラーナや魔法の活動量はベルエスカ家の長女としては低い値になっていた。

直接、魔力遺伝をフアナから受け継いだはずだが。勉強はともかく、魔法の力だけは上手く使いこなせていなかった。

魔法の練習場では、使い魔の訓練も合わせて自由な授業が行われが。私はその使い魔を使役できなかったため、適当に観察することが多い。

使い魔、精霊を使役することが魔法の使用条件となるけれど。契約を果たすために私は五大元素、全種類の精霊を試していた。

しかし、どれも外してしまい私は魔法を扱うには他者の使い魔を必要とする始末になっていた。

ベルエスカ家の長女としてかなり中途半端な成績を残してしまうが、ただ人によってはたとえ契約を果たしていても扱い切れない人は多いようだ。

「さて。じゃぁ、やるわよロワール。」

セシリアの声に反応した、土属性の魔力を持つロワールは空中を舞う。丸い球体みたいな見た目に、翼をはやした感じの使い魔だ。

セシリアの目の前には、レイアと彼女の使い魔がいる。フランカという名前の使い魔は、火属性で外見は狐のような見た目をしている。赤く炎で燃え盛っているような毛並みをしているが、別に今戦うわけでもない。

「えっと。本当に大丈夫なんでしょうか。」

「平気よ。このロワールの魔法スキルを甘く見ないでくれる?」

「う、うん。」

レイアは何処か心配そうに身構えていた。そのフランカも、目の前にいるロワールに警戒心を抱いていた。

「別にこれは攻撃魔法じゃないし、あまり痛くないから安心しなさい。」

「なんだか、フランカがものすごく嫌がってるんだけど?」

「んー、ロワールが怖いのかしらね。こんなに可愛いのに。」

「で、でもそのロワールって・・他の精霊を時々捕食・・・。」

「さて。じゃぁ、魔法実験を始めるわよ。」

レイアの心配は無視され、ロワールに号令が降った。

「さぁ、フランカの能力をコピーなさい!」

グルン、と一回転したロワールは大きな口を開く。フランカはゴクリと一度は息を飲んでいたが、そのロワールの口から協力な吸引魔法が発生したところで逃げようとした。

しかし、その魔法から抗うことはできずにフランカは吸い込まれてしまった。

そして、ロワールは一瞬飲み込んだような動作をした後に光り輝いた。

ロワールは先ほどのフランカと同じ見た目になり、地面に着地する。そして、そのフランカの口が大きく開き、物凄い勢いでレイアのフランカが地面に吐き出されたのだった。

「いやぁああああ!!私のフランカがあぁあああああ!!??」

「うわぁ、これ、大丈夫かな。」

ヨダレでかなりベトベトになっており、もはや死んでいるようにしか見えなかった。

レイアは泣いて抱き着こうにも、そのフランカはヨダレで近づけない。

「とりあえず、ロワールのお得意な変身魔法は完璧というところね。なかなかいい実演だったわ。」

「うぅ・・。」

「ロワール、フランカの攻撃魔法をそのまま使えるわね。」

ロワールはうなづく。

「向こうにある標的に向かって、炎属性の魔弾を放ちなさい!」

セシリアによる攻撃命令通り、ロワールはコピーしたフランカの能力を使って魔力を引き出す。

頭部の前に赤い魔法陣が浮かび上がり、ロワールの鳴き声とともに炎の球が発射された。目標である藁人形に命中し、その藁人形は燃え盛った。

「なかなか上出来ね。これを利用すれば、私は全属性の魔法を扱える術者になれるわ。」

「人の使い魔をヨダレだらけにしておいて・・!」

「いい。これからの時代には魔法使いの力もまた必要になってくるの。使い魔の全能力を引き出し、自然に存在する神秘をどこまで再現できるのかが私たちの試練なのだから。」

「大体、あの程度の威力なら私の使い魔の方が上です!」

彼女のフランカは、復活した後に赤く燃え上がっていた。明らかにロワールに対して怒っているようだ。

「ヨダレだらけにされたのが嫌だったのね。まぁ、誰だって食べられるのは嫌だけれど。」

「まるで大きな鳥がウサギを丸呑みしているかのような状況でした。」

「そうだっけ?」

「フランカ、全力で目の前にある藁人形を全て燃やし尽くしなさい!」

フランカの口から火炎放射が放たれ、一気に目の前に藁人形を燃やし尽くす。

確かに、見た目の迫力はフランカの方が上だったが・・。

「あわわ、別のところまで燃やしてるわよ止めて止めて!」

「あ、あれ?やりすぎちゃった?いやー!延焼してるーー!?」

「えーっと・・。」

遠巻きで見ているのもなんだけれど、私は彼女たちの力にはなれそうになかった。

そう茫然と見ていると、上空から突然大きなバブルが放たれてその延焼した炎が掻き消えていった。

「全く。攻撃力に気をつけてくれると嬉しいんだけど。なんで私がお花を積みに行っている間に火事になるわけ?」

チェルシーが戻ってきたようで、彼女の方に青い鳥の使い魔が降り立つ。

フリエルという使い魔は水属性というのはわかっているけれど、かなり派手な見た目だ。

「ロワールのコピー能力を試しただけよ。」

「あぁ。あまりやりすぎると時々使い魔を捕食する時あるからやめた方がいいんだけど・・。」

「やっぱり・・!私のフランカを亡き者にするつもりだったんですね!?」

「いやいや。そうじゃなくて。え?捕食?」

ロワールは全然そんなことしないという感じに笑顔だったが。フランカは対照的に攻撃態勢に入ったままだ。

「ロワールのコピー能力は、自分の体に蓄えたものを遺伝子レベルまで解析する魔法なんだけれど。野生のロワールの場合、解析がすんだ後にそのまま捕らえた精霊を捕食する時があるから。扱いには気をつけた方がいいんだけど。」

「そう。それなりに食いしん坊なのね。」

「確かにその通りだけどね・・。」

「でも、この子は大丈夫よ。友人の使い魔を食べたりなんかしないわ。」

「んー。その信頼は大丈夫なのかな。」

「じゃぁ、次はフリエルの能力をコピーしようかしら。」

「ダメだよ。例え食べられなくてもヨダレだらけになるんだからさ。」

「そうです。いちいち帰ってお風呂に入るのが面倒になるだけじゃないですか。」

「うーん。仕方がないわね。適当に薬草の解析実験でもするかしら。」

その方が私もいいと思うけれど。

使い魔を持っていない私はただ適当に、異世界の青空を楽しむしかなかった。




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