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初来日者

2026/02/21


6:00

今日から外交が始まる。

港はリター側にある日本に近いところを指定した。

深さも長さも十分だ。

「ここは様々な国と近いですが、水深が深くて波が少し荒いんです。スキルを持った乗務員を

 乗せないと、直ぐ衝突してしまいますよ」

「大丈夫ですよ」

ここの水準ではまだ金属でできた船はない。

きっと驚くだろう。

今後、日本専用の運行ルートを作り出す予定だが、今は食糧危機を解決することが優先。

農業機器を送り、食料を持ち帰る貨物船のテスト運航が始まる。

ちくごといすずも念のために同行だ。

リター側の港町は常に様々な国との交流を行っており、大きな帆を張った船が沢山止まっている。

国の大きさは船の大きさで直ぐに分かってしまうほどだ。


9:18

港町のカフェの中で、船長達が自慢をしていた。

「昨日、この新しい船が入ったんだ。今までの2倍貨物が乗せられるんだぜ」

「うちだって負けていない。今回の船は150tも乗せられるんだ!」

そんなことをしていると、

「なんだか外がざわついてきたな」

店をでる。

「どうしたんだ!」

「あ、船長!あれを見てください!」

「な、なんだあれは!」

皆の視線の先には、日本の旗が上に掲げられた荷下ろしクレーン付きの大型貨物船があった。

自衛隊の船は、攻撃防止のため、ここから入れない。

「まあ、矢は届かんが、銃は届くんだよな...」

攻撃するつもりは一切ないため、大人しく待っている。

港に接近するにつれて港町の人々は、その大きさを実感する。

やがて、エンジンの音も聞こえて来た。

「これ、港を破壊してしまわないよな?」

船長が言う。

確かに石でできているとはいえ、接岸したら、排水で破壊してしまいそうだ。

「全く...なんでこんなに大きな船を使おうとしたのか...」

慎重に港へ侵入し、エンジンを止める。

クレーンでコンテナを港に降ろしていく。

「オーライ!オーライ!」

作業服を着た船員が地上で指示を出している。

港町は、建物よりも高い船から、人よりも大きい金属の箱が降ろされていく様子を、唖然と見ていた。

怪しい男が作業員に近づいて来た。

自衛隊員が拳銃を後ろで構える。

「この船はは、何処の国の船だ」

「え...?ああ、日本ですけど...」

「日本の国旗はあれか」

船に掲げられた日章旗を指さす。

「ええ、そうですけど...」

すると、男は向きを変え、町の人々に向かい、叫んだ。

「この方は、総神様の言い伝えに出てくる伝説の国だ!」

「え?」

船員、自衛隊員達は唖然とする。

なにか大きな誤解をされたような気がする。

そう思っていると、

「うおおおおおおおおおお!!」

町の人々は叫んだ。

何が何だかだが、作業には支障はなさそうだったため、巻き込まれる前に、早急に作業を進める。

そして、現地調査隊、自衛隊、作業隊を残して、引き下がる。


12:00

ここから農地まで、この国で一番、平坦な地形だというので、トラックを使い、農具の入った

コンテナを運ぶこととした。

10台の高機動車、軽機動装甲車を先頭に、電波中継車、調査車、そして大量のトラックで列を作り、運搬を始めた。

船も、自衛隊の護衛まで急いで引き下がる。

「この船は、帆もないのに、後ろに下がれるのか。流石、伝説の国の船だ」

怪しい男は、海の奥に消えていく船を見届けていった。


2026/02/21


12:30

「確認終わりました!何時でも出発できます!」

町の人々が興味深そうにトラックを見ている。

出発と聞いて、動くこと分かると、また、人が集まってきた。

一斉にエンジンを掛ける。

聞いたことのない乾いた音に町の人々は驚いていた。

電波中継車のお陰で無線で通信ができる。

先頭の高機動車が発車する。

馬車よりも滑らかな動きで発進する鉄の乗り物を皆、不思議そうに眺めていた。


14:22

「隊長!確認終わりました!問題ありません!」

一面に広がる田園地帯。

風車が静かに回っている。

そんな中、列を作って止まるトラックに、現地の人々は驚いていた。

エンジンを止めて、荷下ろしの準備を始めていると、正面から馬車が走ってきた。

農業大臣だ。

馬車から降りたところを敬礼する。

「セルジャック大臣、お待ちしておりました」

「これは凄い!どのようにしてこの隊列を持ち込んだのですか?」

「本国の貨物船で運送してきました」

「確かに船で運んでくるといっていましたが、鉄でできた馬車を持ち込むとは想定していませんでした」

「馬車ですか....。少し違いますが...」

「ほう、では、これはなんという乗り物で?」

「本国で製造されております自動車というものでして、その中でも貨物を運ぶためのトラックという部類です」

「ほう、仕組みが気になりますね」

「詳しいことはお伝えできませんが、ざっとこんな感じですね」

トラックの正面のカバーを外すと、複雑な構造になっているエンジンが見えた。

「う~ん。よく分かりませんね...。分かりました、ありがとうございます」

そうこう話をしていると、後ろから声が掛かる。

「作業完了しました。大臣、こちらが今回納品のものです」

上質な紙に納品証と綺麗な字で書かれている。

納品するものは、不整地な場所でも使用できる機械だ。

これでこの国の農業は推進し生産量が上がる。そして、その一部を日本に送ってもらう。

この流れだ。

「どのようなものですか」

「お見せします。こちらへ」

コンテナから降ろされた電動の草刈り機や、小型の耕し機などが一部にまとめられていた。

これらの機械は太陽光で動く。

説明は書類に書いた。

交渉は成立し、日本へ、この国の農産品を送ってもらうこととなった。


2026/02/22


10:00


リター王国上空

空を切る音が鳴り響く。

日本のF-4EJ Phantom IIが3機飛んでいた。

昨日のパーティーで、リター王国の国土から周辺国家の様子を伺いたい。と言ったところ、

「空を飛ぶものまであるのか!」

と、驚いていた。

随分とお酒が入っていたが、国民になるべく見つからないことを条件に許可を貰うことができた。

そして、今、リター王国上空を北上していた。

「北東の方向に城壁を発見」

「あれは、リターではないな。」

「情報からして、隣国のギルディ帝国との境だろう」

「帝国か...。余り関わりたくないな...」

「上空を飛ぶだけだからいいだろう。それが国からの指示だ」

「でも、絶対にこの国には何かありますって」

「はいはい。ほら、次へ行くぞ」

西に進むとガルド王国の国境線が見えてくる。

「これで確認終わりだ。帰還するぞ」

「はい」


「帝王。国境管理から報告です」

「読み上げろ」

「リター側の城壁で、巨大な鳥のようなものが言葉で言い表せないほどの速度で飛んでいたと報告を受けました

 複数人が同じものを見ています。何人かは、聞いたことがない音も聞いたと。その後、それはガルト王国方面

に向かったとのこと」

「ほう、それは興味深い。"例の魔術師"が言っていた、鋼鉄の炎竜のことだろうか。

 何にしろ、ここ最近、リターは安静にしていると思っていたが、そうでもないらしいな。分かった。リター情報局に

 潜入捜査官を送れ。くれぐれも殺すなよ。面倒事は避けたい」

「承知致しました」

「......」



2026/02/23


ここに来て、不思議なことに気づいた。

外国人を一人も見ていないのだが、なぜだろう。

確かに、戦争勃発寸前だったが、外交官すらいないのはおかしい。

調査を行う必要がありそうだ。


10:00


今日はリター王国の大臣達が来日する。

お互いを知って、交流を深めるというものだ。

日本から少し離れた(船が大きすぎて入らないため)港町へ向かう途中には、国民達が馬車に向かって手を振る様子が見えた。

その後ろを自衛隊車両が続々と走っていく。

港町では、自衛隊と海上保安庁や警察、警備員など、大勢が豪華客船の停泊する岸を守っていた。

町民はそれを興味深そうに見ている。

佐川が今回も担当だ。

「見えてまいりました。あちらが今回、日本に向かうための船です」

そこには数十mの高さはある豪華客船が停泊していた。

異世界との初の交流、つまりこの世界での顔を決めなければならないのだ。

だから、見せつけるかのような豪華客船「エクスプレス・ユートピア3号」を用意した。

エクスプレス・ユートピア3号は日本最高級の豪華客船であり、プール、映画館、レストラン、劇場は勿論あり、

乗員数は2000人の船だ。

今回は、これを大臣4人だけの貸し切りとして、利用してもらう。

「はああ!?」

総務大臣の声が漏れる。

「あ...あれはどのように...作られているのですか...?」

「ややこしいので説明をし難いのですが...」

佐川が答える。

「こちらへどうぞ」

船へ乗船すると、配管がむき出しになった機械的な通路がある。

そして、細部まで豪華な装飾が施された廊下を歩き、「中央ホール」と書かれた看板ついたドアをあける。


王宮でも見ることのできないようなシャンデリアに螺旋階段、船の中なのに噴水まである。

「こ、これは...」

言葉を失うとはこういうことだろうか。

喉元まで何か言葉が出てきてもそれを発声できないほどの不思議な感覚に覆われていた。


「体温を測ります。こちらを持っていてください」

異世界の謎の病原菌を日本に持ち込まれたら自ら破滅の道へ進むようなものだ。

2020年に発生した世界規模の感染症の発生から、日本は病原菌には人一倍敏感だった。

「こうやって、脇に挟んで、1分ほど待ってください」

佐川が実際にやって見せる。

「こうか?」

「そうです、この世界で流行っている病気などはありますか?」

「海接病がまた国民の間で流行っているそうだ。120人もの死者が出ている」

海接病とは説明と研究結果を聞く限り、こちらで言うところのインフルエンザそのものらしい。

この世界の技術ではまだ特効薬は開発されておらず、死活問題だった。

「熱はなし。大丈夫ですよ。こちらへどうぞ」

各部屋の設備と使い方を説明し終わったところで沖にでる。

沖からははつゆきとむらさめが接近し、護衛を始める。


11:23


岩手県釜石市


「なんだ、あの船。木でできてる帆船?めずらしい、写真にとっておくか」

海外との通信が遮断した今、海外の大手のSNSも使えない状況となっており、国内サーバーそれを復元しようとするものも現れているが、まだ完全体ではない。

月曜日の為、海沿いに人はほとんどおらず、木造船に気づいたのはこの青年一人だけだった。

「そんなことより早くどこかに就職しないとなー」

接近してくる木造船を眺めながら、そんなことを考えていたがよくよく木造船を見てみると様子がおかしいような気がした。

スマホのカメラを起動し、拡大して見てみる。

「(なんだあれ?よく見ると大砲がついてる。飾りにしては動くんだ。しかもなんだ?中世の騎士みたいな格好をしている奴らが乗っている。ドラマの撮影かな)」

そんなことを考えていると、

ドン!

何かを大きくたたいたような音が鼓膜に響き、周りの山に反響する。

やがて、風切り音を出しながら、青年の後ろの倉庫に激突した。

倉庫は明らかに鉄製の何かが壊れたような音を出し、煙を上げた。

「なんだ!」

近くを巡回していた警察官が異変に気付き、やがて木造船を発見した。

「そこの君!すぐに町の方へ逃げなさい!」

警察官が青年を避難させ、無線で連絡を行う。

しかし、

ドン!

また同じ音がした後、次は倉庫の隣の駐車場で爆発が起こる。

「ここにいたらまずい!」

警察官はパトロールカーに戻ると同僚に

「早く車をだせ!」

と叫ぶ。

本部から連絡があり、町に避難命令が出されたため、スピーカーで避難を促しながら、近くの小学校へ向かっていく。

【後書き】

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