三話『狼の少年とクラス発表』
久しぶりの更新です。
随分と間を空けておいて文字数も少なめですが本当に申し訳ありません。
(あれ、楽しい話ってなんだろう?)
早速大きな壁にぶち当たってしまった。
俺、大上大雅は自分から何か話をするのが決して得意な方ではない。
もっと言えば、それなりに親しくなければ異性相手と話すのはもっと苦手である。
(…………何か、何か共通の話題を探さないとっ)
それが楽しい話なのかは置いておいて、重要なのはお互いが話せる内容が俺の引き出しにあるかどうかである。
しかし、探す必要はなくなった。
「そういえば、部活動のことなんだけど──」
部活。
この長土沢高校では生徒は何らかの部活動に所属しなければならないという校則があった。
そして、俺は玉木さんと同じ部活に所属している。共通の話題としてはこれほどうってつけのものはないだろう。
ここ最近の部活での記憶を思い出して、心当たりがあることを聞いてみた。
「……もしかして新入生への部活動紹介の打ち合わせの話かな?」
「そうそう、実は鳳先輩から参加できるならしてほしいって伝えてって言われてたんだ」
「……まぁ、打ち合わせくらいなら大丈夫だよ」
「今年は大上君に部長も期待してるみたいだし、去年よりも働いてもらうことになりそうだよ」
「なん……っ、マジか……、」
確かに、去年はほぼ幽霊部員だったので、そう考えると自業自得なのかもしれない。
働かざるもの食うべからずと言うように、今年は真面目に取り組もうと心に誓った。
そして、そんな話をしている間に校門に到着した。
つまりは運命の瞬間である。
新しくクラスが示された紙は下駄箱の窓ガラスに貼り付けられている。
「「……………、」」
今、この窓ガラスの前では謎の緊張感に包まれていた。
と言っても、それは俺が勝手に感じているだけのものなので玉木さんには関係ないだろう。
(…………たかがクラス替えでここまで緊張するしてるのは、生まれて初めてだな、)
そして、その理由が理由だからか、叶うならその願いが叶ってくれたらそれ以上のものはない。
例えそれが、叶うか分からないような恋でも。
例えそれが、叶わないだろう恋だとしても。
恋の神様に心の中で祈りながら、向き合う覚悟を決める。
「…………俺は一組から見ていくよ」
「なら、私は三組から見てこうかな」
そう言って、少し間を空けて玉木さんは三組の名簿が載っている紙を眺め始めた。
(よし……っ!)
俺も一組の名前が載っている名簿へと視線を向ける。
苗字が「お」から始まるので、基本的には最初の方に来る傾向が強い。自分の名前を探しながら、そのついでに今隣にいる少女の名前も探してしまう。
だが、どうやらお互い一組に名前が載っていることはなかった。
これで残るのは二組と三組。
「三組に私の名前も大上君の名前もなかったよ」
「一組の方も俺の名前も玉木さんの名前もなかった」
「ということは──」
「もしかして──」
バッ、と二人同時に二組の張り紙を覗き込む。
「「やった──っ」」
俺は右手でガッツポーズをして。
玉木さんは両手を合わせて喜んでいて。
「「…………っ⁉︎」」
同時に顔を見合わせる。
互いにはしゃいでしまった自分が恥ずかしいと顔を赤くして、互いに苦笑する。
(あ、あれ……? なんで玉木さんも嬉しそうなんだ? これは、その、あれか、自意識過剰になってもいいのか?)
だが落ち着け、と心の中の冷静な自分が待ったをかける。彼女との『違い』を思い出し、その想いの熱を冷ましていく。
ある程度落ち着いてから、俺は『同じクラスになった時の為にあらかじめ準備していた言葉』を玉木さんに向かって言った。
「これからよろしく、玉木さん」
「こちらこそよろしく、大上君」
これから残り二年間の高校生活は、同じクラスで過ごすことになる。