一話
よろしくお願いします。
錫色の満月だ。レーネは洞窟の岩肌を見つめながらため息を吐く。ついにこの日が来てしまったのかと、今更ながらに思った。思い出すのは、つい先程の事だった。
「「「「お前など一族の竜とは認めんぞ。そのように凶兆の月と同じ色をしたうろこだけでも一族とは認めがたいのに、それに加えて異常に大きいその体。極めつきは額の竜玉だ。月竜は月の加護を受けた証として、月と同じ蜜色の玉を賜ったというのに、お前の竜玉はまるで新月の夜の空のようではないか」」」」
体中が痛む。周りには大勢の竜がいて、レーネを罵りながら鋭い爪を向けてくる。うろこを剥がされ、骨を折られ、翼の皮膜はボロボロに破れていた。
「っだが父上、私は確かに母上の胎から……っ産まれ落ちたぞ。母上が貴方と以外と番っていないこと、……ぐぅ……貴方が一番知っているのではないか」
レーネは痛みを堪えながら、周りを囲む竜の中でも一際銀に輝く竜に精一杯の反論をするが。
「父上などとと呼ぶんじゃない。シーレイアの事を母上などと、どの口で言うんだ。このバケモノが。シーレイアの事は私が一番知っている。知っているからこそ赦せんのだ。何故あの美しきシーレイアが汚名を着せられなければならない。お前などというバケモノを産んだ汚名を。『三眼のバケモノ』レーネ、今日はお前が産まれてから百年目の日。一族の掟は果たされた。この日このときをもって、お前は一族から正式に除名される。あとは何処へなりとも行けば良い。二度と私とシーレイアを親と呼ぶことは許さない」
それは、長い幽閉の時が終わった合図だった。月竜の一族では、どんな竜であっても、成人、産まれてから百年までは一族として面倒を見なければならない掟がある。
レーネは鍵を外された洞窟の中で、少しも振り返らずに飛び立っていった竜たちを見ていた。
幼い頃に愛されていた記憶がある。それはそれは美しい竜だった母が他の竜とは違う見た目の私を差別せず、育ててくれた。父も小さかった私を宝物のように抱いていたのを憶えている。…………何時からだっただろうか、産まれて間もないはずの私の背が他の子竜を追い越し、成竜を追い越そうとした時だっただろうか。私をバケモノと罵らる声が大きくなり、母が汚名を着せられ、父の心が憎しみに傾いたのは。
もう、壊れていたのだ。帰る場所なんてなかった。私が縋り付いていただけだった。記憶は麻薬の様だ。愛されていたと知っていた。だから、その愛を取り戻そうと色々なことをした。美味しい物を食べてほしいと狩りをした。誰よりも高く飛ぼうと隠れて練習をした。いつか、いつか笑って褒めてくれると思ったのだ。お前は自慢の娘だと言って、抱き締めて欲しかった。でも、待っていたのは洞窟の奥深くへの幽閉だった。
与えられた傷はあっという間に癒えていく。これも私だけの能力の様だった。次々に痛みが消えていく。それでも今のレーネにとってはその感覚が余計に自分をバケモノだと知らしめているようで、恐ろしかった。
レーネはまた、ため息を吐いた。あぁ、私は何処へいけば善いのだろうか。
はいはーい。私だよ。
今日は魔族と夜の城のビジュアルについて説明していこう。
まずは、魔族。魔族は長命種の中でも国を作るほど数がいない種族の総称なんだ。国によっては魔族の定義の中にエルフ族が入ってたり、吸血鬼族が入ってなかったりするよ。エルフ族は国を作ってるけど数がいないし、吸血鬼族は増やそうと思えば幾らでも増やせるからね。
次は夜の城のビジュアルだね。君たちにわかりやすく言うと、うーんそうだな。某灰かぶりのお姫様が嫁いだ城を魔王風に改造したみたいな感じだよ。作りはあまり変わってないね。魔王に使える文官やら武官やら使用人やらが、住み込んでたり、通ってたりする場所さ。
うんうん、今日の私の仕事はこれで終了、またね。
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