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ハイクの歌
唄が咽喉から震え出る。
精霊が謳う。想いを世界に描くため。
わたしのちいさな想いは精霊の言葉。
精霊のことのははモミの木をふるわせ、トナカイの角を通って雪に落ちる。きらめくゆきは風に乗り、おおぞらたかくまいあがり。
空の空のまた空へ。オーロラとなって私の髪を焼くであろう。
どこかでまた鍋を煮るかほりがすれば。
わたしのことのはあなたにとどく。
トナカイの皮を剥ぎ骨の針を取れ。
靭帯の紐でブーツを縫おう。血を煮て肉を切り、今宵の糧を得るのだ。深い深い雪を掘り返し、鍋の水としよう。そこにある苔をトナカイたちが食むように私たちもずっとここで生きていく。
ここは朝のない国。
太陽が姿を消す季節。わたしはうたう。
精霊が詠んでいる。
こころを読んでいる。
あなたを呼んでいる。
きっと讀んでいる。
想いを勇でゆく。