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2D to 3D  作者: タツミジロウ
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[第1話]宮代壮亮②

駅のB-6出口を出ると彼の働いている会社「東堂証券」はある。東堂証券は高さ198M近くはある全身を緑色のガラスで覆っているのが特徴の建物「ハイラントヒルズ滝タワー」の中にある。この建物は約10年前に作られた生まれて間もない新しい高層ビルだ。


もともとは「外国人のための至高のエンターテイメント施設」をうたい文句に作られた建造物で、当時は日本の漫画を美術作品として展示する「天心」。日本を代表するイベント、コミックマーケット通称コミケについての文献・写真などが置かれコミケの歴史を体感することができる「コミケ博物館」。インターネット上で外国人から高い評価を受けている日本の料理店20店が構えるエリア「HOT DOGSフロア」などとことん外国人を焦点に当てた店・展覧会・コーナーなどを設ける予定だったらしい。


しかし翌年、東京地下で起きた大規模な地震により多くの高層ビルが再起不能レベルにまで崩壊。

高層ビルに置かれていた大半の職場は、ビルの復旧の目途が立つまでこちらに移転することになる。

この時、このまま素直にもともとあったビルに戻れば「外国人のための至高のエンターテイメント施設」は生まれたのだろうが一部の人たちがこの場所を気に入ってしまったらしく彼らはここに滞在することを決意。東堂証券もその一つだったという。そしてビルの2~30%を職場に使われることになった。

結果、外国人のためのエンターテイメント施設という割には物足りずどちらかというと外国人も楽しむことができるオフィスビルという認識として世間に広まってしまった経緯を持つ。俗にいう「会社のいざこざにまきこまれた悲劇のビル」だ。


そんな悲劇のビルだが、今日は騒がしい。建物入り口付近から騒ぎ声が聞こえる。なんなんだろうと思い近くに寄ってみるとビル入り口にあるパトカー三台とその傍にいる警官たちがいた。

彼らは、ビルに入っていく社員に聞き込みをしているようだった。

いったい何があったのだろう....?



「すみませーん、少しよろしいですかー?」 現場の男性警官が僕に気づいたらしく話しかけてくる。

「ん?なにかあったのでしょうか?」会社の癖で無駄に丁寧語で応対する

「実は、人を探しているのですがこんな人なのですが知っていますか?」

そういうと彼は、懐から写真を取り出す。そこには60代くらいの和服を着た男性が移っていた。

白髪と老眼鏡が特徴で、右腕には腕時計を、左手には杖を持っている。

腕時計が某高級会社の腕時計で、このご時世で老眼鏡をかけていることから相当な名家なのだろう。

ガタイや顔の容姿も、そこら辺の人間とは一味違ってる。だが誰なのだろう?

どこかで会ったような気がするのだが.........


「知らないですね。誰です?」

「この人は、篠原しのはら 宗次郎そうじろうといいまして、このビルのオーナーさんなのですが......二日ほど前から行方不明になってまして.......」

「へぇ..........」

「今こうして捜索しているのですが....なかなか手掛かりがつかめないのです」

「なるほど、だから朝早くから...大変ですね。」

僕はこの警官との会話の裏で篠原宗次郎に関する記憶を探っているのだが思い浮かばない。僕はどうでもいいことを気にしてしまうタイプだ。どこかで会った気がするという一種のデジャヴを感じつつでもどこで会ったのかがわからないというのは他人事だとしても微妙に気になってしまう。真夏の中の汗疹みたいなものだと言ったらわかるだろうか。

「いやーすみませんねー 。こっちこそ朝早くからの応対すみません。」


その後、特に目立ったこともなく警官との会話は終わった。


「それではそろそろ行かせてもらいますね。」

「はいー。お元気でー。何かわかりましたらお電話くださいねー」


僕は改めて東堂証券へ向かった。


______________________________________________

東堂証券のオフィスは46階にある。中に入るとこのオフィスの始まりの鐘である眩しい太陽がガラス越しに入る。比較的高いところということもあり建造物に遮られることなくオフィスに入り込む光は朝のアラームにはもってこいでとても眩しい。


「おはよーソー。」

「おはよう。早乙女さん。」


自分の机に向かうと、僕の机の隣にいた女性が声をかけてくる。


朝早くから出勤している人たち数名がいた。

パソコンとにらめっこしている真面目な人。

スマホゲームをしている人。

そして机に突っ伏して寝ている人。

それぞれがそれぞれの時間を過ごしている。


彼女はその中のスマホゲーをしている人間にあたる。

彼女の名前は早乙女梨花(さおとめ りか)


僕の上司で.......僕がこの物語の主人公になるきっかけとなった人だ。



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