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異世界物語は面白いけど、流石に一世代時が過ぎれば現地弟子が台頭する  作者: 米屋品楠
四章 セイテンノセントウ【西の都応答なし】
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4-03 アキサン総督とロリ

 ここはイストール地方の西端。アキサン


 そして向かいの大陸間に挟まれたザイダル海峡に面し、周りが山に囲まれた要塞都市だった。

 街は多くの人間で栄えているが実は周りの山には凶暴な獣が生息しており、昔から自然の要塞となっていた。

 港から、“隣大陸”に見栄張って造られた街アキサンの中央をぶちぎる一つの石詰めの道の突き当たりに、大きな王冠(尖塔)のある目立つ建造物が迎えてくれる。ここ「総督府」にはアキサンの行政機関が集中しており、この大陸における最前線の“守り”を命じられてきた歴史ある場所だ。

 少し前まで冷戦状態であった隣大陸と目と鼻の先であるため、アキサンは防衛の機能が極めて重要であったし、世界的な四つの大陸の緊張が緩和された今では、その土地性を生かした大陸間の貿易の要として、発展する潜在性があった。

その目立つ建物から、街を一望できる部屋が、総督のいる部屋だ。

 歴史や責任も背景に、アキサンの最高責任者である総督は、今もアキサンの行政や力である守護隊の全権を担っており、街の顔であり、アキサンの支配者であった。しかも季節によっては周囲を囲む森林に生息する四足獣のコルピタラという危険な猛獣のためにアキサンは陸の孤島になってしまい、大陸の中央部とは閉ざされて、より一層アキサン総督へ権力が集中していく。

閉鎖的であって他の権力の影響を受けづらい土地性にあり、そもそもの目的であった隣大陸の危機への対処は考えなくて良くなった。

 リスクの少なく未来の富が確実なアキサンは、権力者にとって実績の作りやすい美味しい役職だろう。


 現アキサンのトップ。総督エケ・ウリモである。


 総督の部屋は個人の部屋としては総督府の中で一番広い。そこの自分の椅子の後ろにある小さなガラス窓からアキサンの街を見下ろす。

足下から正面奥の港まで街の縦横を通る、対岸の大陸の奴らに見栄張ってかなり強固な石造りの道沿いには、ガラス窓のレンガ造りの建物が軒を連ねる。少し路地に入ると木造の建物になっているという建築配置の特徴も確認できた。

 外を確認した後、エケは振り返って部屋を見渡した。辺りは円筒状の壁に囲まれた豪華な装飾を施された部屋が広がっている。目線の先には手前に特注で作られた歴代の総督が使った椅子と机。机の上には、読みかけの書類と小さなバスケットの中に商人からおすそ分けされた隣大陸の菓子。丸くて味はまあまあ旨かった。

 そこからやっと正面で直立したままの部下に目を向けた。


「で、用件は何だ?」

「総督閣下突然申し訳ありません。私はアキサン守備隊所属サーダイ・センであります。入室前にいきなりの総督の怒声に何ご」

「分かった。で何だ?」

「はい。大変情けない事なのですが……先刻、敷地内で取り逃した人物がいまして……」

「侵入者か? それなら手筈通りに警戒をだ! 最悪“隣大陸”の奴らが……」

「いえ侵入者の正体は分かっています。珍入者と言いますか、悪戯ものと言いますか……。私の子供が隠れて遊んでいるようなのです」

 サーダイの報告を聞いた後、はぁ~~~~~~と無駄に長いため息を吐いた。“無駄に”長いため息。(「長い。なげぇ。」)

「早くに女房を亡くしてからというものの、男一人で不器用なりに育ててはいるのですが……あの、元気は良いのですが、変に落ち着かないというか……お調子者でして」

「おてんば娘という訳か」

「いやぁ恥ずかしいもので……」

「可愛いのだろうな」

「そうです」とサーダイは即答。

「で、子供がこんな悪戯するのか分かるだろう?」

 少し悪戯っぽい口調に変えて、守護隊長は立ち上がりつつそう問いかけた。

「サーダイ・セン。あなたは素晴らしいアキサンの戦士と聞いた」

 褒め言葉をかけつつ守護隊長は反時計回りで近づく。サーダイは真っ直ぐ前を見つめたまま、立ったまま動かない。

「例えば帰るのが遅かったり、靴下脱ぎっぱなしになったり、弁当忘れたり、弁当忘れたり! それだから娘にもやれやれと思われる裏でかなり寂しがっているわ!」

(「そうだそうだ! おんなのあつかいをわかっていませんね。あーほ」)

「失礼ながら閣下以外の声が」

「うるさい」

「…………」

「うるさい! 私の口から言う! おてんば娘をとっととなだめてこい! これを解決せずに仕事をするな! 邪魔だ!」

 サーダイはエケの感情的(笑)な言葉に黙ったまま一礼し、最後に「失礼しました」と一言だけで総督の部屋を退出した。

「これでご満足でしょうか? お嬢さん。私の演技の程は?」

「お嬢さん~? はお姉さんでも言われるか」

 机の下から出てきたツバルは一人で納得。

「もう毎日毎日おとうさんが全然言うことを聞いてくれないせいだ!」

「うんうん」

「人間は少し懲らしめてやらないと分からないもん!」

「……お嬢さん。誰に聞いたの?」

「おとーさん。人は何かに対してしみじみ体験するか、想像しないと分からないって言ってた。だからおとーさんにこのとてもか弱いツバルの意見を……ね♪」

「それは良かった。その言葉を言ったのが聞いてくれる人で」

 コンコン

「失礼します。総督。護送の時間が……ってツバルちゃん?」

 アキサンの防衛任務を主にする守護隊長が入室した目線の先の意外な来室者に気付いた。

「おねえさん外国のお菓子ありがとう。お父さんにもちゃんと伝えておく」

「光栄です。守護隊長。お嬢さんのお帰りだ。扉を開けておくように」

「へ?」

「ご苦労」

少女は父親より階級の高い人間を顎で使い、エケにエスコートされながらでーんと胸を張って堂々と部屋を出て行く。その顔は父親への反抗作戦の完全勝利を疑わない自信に満ちていた。

パタン

「すみません。サーダイとこのガキ……部下の娘が何故総督と一緒で? 確かあいつはあの子を探し回っていたはずなのですが?」

「彼女曰く“将来のとてもえらい上官の娘”らしい。未来の守護隊長は総督よりも偉くなるようだ。今の内に顔を売っとけ」

「はぁ」

 納得を仕切れない部下の反応を軽くスルーする。

  「ギャー! お父さん!」

  「ツバル! 何悪さしているんだ!」

  「すきゃはっみましぇん。助けてください! 父上お許しを~~~!!」

 部屋の中にいる二人が無視出来ないほど、外から父娘のいちゃつきの様子が聞こえてきた。

「すいません。あいつには、こちらからきつく言っておきますから……」

「結構早く捕まったな……」

「へ?」

「いや何でも無い」

 机に立てかけていた日本刀を腰に差す。

 総督は一度だけ振り返り、他に誰もいない自分の部屋を確かめた。

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