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3-30 異世界物語は面白いけど、一世代時が過ぎれば流石に現地弟子が台頭する

〇某所 海上


 マツカイサ帝国は国の主要産業の一つである出版の祭り。バイチークで盛り上がっている。

 一つは情報を大量に記録できる記録表現として。

 一つは偽造できない印刷を利用してカード賭博は盛んだ。


 一つは魔法陣を書き込み、誰もが安価に使える魔法道具の大量生産で普及した。



 数日前、葬儀に出席した時も遺言の声が記録された魔導カードから読み上げられていた。

 壇上には殉職した守護隊の4人の遺影があった。

 特にマッさんは、このホイシャルワールドで色々なところでお世話になった人だった。


 その仇はすぐ横に凍結封印しているナメル・ナメ――――


 ジョー・サカタは横に固定されている氷塊を見た。

 氷の屈折が強く、顔の様子は確認できない


 ナメル・ナメの凍結処理を行い、移送している。

 特別性の空を飛ぶ空中艇で、周りに三艘護衛の船が並走している。

 特殊な結界で、高度の高いことによる風や温度は快適に保たれ、透明なドームで空。


 ジョーは海の広がる水平線の先へ目線を移す。



 ホイシャルワールド

 かつての友人がやってきた世界に私は生きてきた。

 よくあるネット小説の設定にあてはまらない。

 魔法という特殊な力があるのは()()()()()

 でも死後の思い描いた地獄や楽園でサバイバルや無双やチートでもない。


 むしろ箱庭に閉じ込められたようで抵抗を感じる。




 俺は異世界に迷い込んだ。


 中年になったはずの肉体なのに気持ちが昔のまま。

 執拗に“世界の英雄”に間違えられる。


 仲良くなれそうな異世界からの転生者(生まれ変わり)は倫理感ハッピーな欲獣ばかり。


 それ以上に、確かにあの時死んだはずの自分が生き残っている。

 人生を休めれないのか。



「ジョー様。顔色が悪いです」


 思いふけっていたところに、自動人形がタオルと共に声をかけてきた。

 礼を言い、顔を拭いた。


 ()()の後ろには、同様に義体に自立式の魔法陣を書き込んだ自動人形が数体動いている。

 影王(ボット)カリ・コロコロ(ミサスの幼馴染)のように魔力によって欠損している肉体の補助をしている訳でなく、モノとして都合よく人間の姿に寄せている。


 ゼロポイントへ向かっている。

 先の大戦。その黒幕であった神イシャララとの決戦の地。

 戦後、世界を変貌させる特異点となった場所に世界の英雄の居城が建設された。

 様々な問題があって入城するのは最低限の人数しか認められない。



「機械に礼をお伝えするのは変ではないですか?」

 

 後ろからマウが声をかけてきた。

 世界の英雄の妻の一人。正装として白のマントとマスクをしていた。


「見た目で。特に美少女」

「ですってミソ。()()()()()に褒められるのは光栄ですよ」


 顔をくいっと僅かにかたむける。

 この仕草を構成した技師はとても良い腕をしているといつも感心する。


「辞めてくれ。俺は」


 遮るようにマウはずっと顔を近づけた。


「あなたは転生者にある()()()()を未だに発症していない。あなたと同じ世界から来ているミフだって、マロンを救い出すことで一区切りしている」

「予定物語というか、今更エゴで暴力を振りかざすと老害でしかない。極端な例がこの氷だ」

「あなたが自力で魔力を使えないことは知っています。しかしあなたの本気は……」


 その先をジョーは指で口を縦に止めた。


「敵にはみすみすやられるつもりは無いし、腰の矯正器具でやんちゃも含めて日常生活はおくれる」


 腹部にあるベルトのバックルを触る。

 玩具のような見た目だが、かなり頑丈な箱と動力ユニットを内蔵している。

 この自作の矯正器具によってジョーは女の子(フーム)に家を突き破る力で殴られても、打撲で済む。

 他にも異空間収納があったり機能は様々。


「それに次の世代が大人になり、俺らの世代を押しのけて台頭しはじめている。“英雄(イーゼ)”になれず、人間としてこの世界で骨を埋めそうだが、現地弟子が活躍するのはうれしいぞ」


 ジョーの本音か強がりを含んだ作り笑いに、モウは呆れる。


「隠し事はできないか」


 ジョーはガクッと頭を垂れた。






「お取り込み中失礼しますが、お久しぶりです。我が父のニセモノ。」


 突然の声に二人は声の主へ顔を向けた。

 何か大きな音や魔力を感じた訳でない。

 突然、現れた。


 突然の来訪者は黒い姿をしていた。

 よく見たら首から下が身体の形に合わせて鎧を肘や膝の関節につけているスーツ。

 この世界では異物としか言えない見知らぬ光沢のある材質で作られている。


 男は反りのある剣を手に先をむけていた。


 二人にとって見知った顔だった。


「世界の英雄の長男。タロウ」

「……ニセモノの故郷だと、タロウがありきたりな名前か。父上から聞いたものと同じだ。精巧で不気味すぎる」

「人様の血縁に他人が言うのに抵抗あるがバカ息子が一番似合うな。マウはお前の代わりにイストール地方に縛られた」

「そう。マウには贈り物をしないとな」


 侵入者タロウは妹の近況を聞いて笑った。

 ニセモノと呼ぶ隣にいる存在に声をかける。


「モウ母様。このニセモノと遊ぶから手出し無用でお願いしまーす」


 タロウは剣を片手で構え直し、持ち手の尻を反対の手のひらで押し込んだ。


「ロード!」


 機械音声が鳴り、定められた曲が流れる。

 長くは無かった。


「懐かしいのではないですか? ニセモノいやSキラー」


 ジョーは返事をしない。

 ただ周りには見えない怒りの枷が外れた。

 異空間収納から武器を取り出した。



       〇   〇   〇



「奥様は加勢できないのですか。隣の船から護衛騎士が飛んできませんし」


 自動人形のミソは表情を変えずに主人へ問う。


「あくまで運送任務。地脈からの影響を受けずらい海上を直進にゼロポイントに向かっています。残っている貯蔵魔力を使うと墜落してしまいます」

「ならば自殺志望でもない限り、相手も同じでは?」

「純粋な力勝負。火器といった武器の使用。そしてマツカイサ帝国が帝国たる礎を気づいた使い捨ての魔力カードでの供給。それを全て行った上でここにいるのでしょう」

「つまり詰んでいると」

「はい。撤退です」


 モウは自動人形達に命令をした。



       〇   〇   〇



「それにしても耐久は悪いが誰もが使いやすい武器は国力として重要です」

「その武器はどこで手に入れた。服も」

「言いませんよ。工業品に強いシャトラキ地方のどこかで作られていたのでは?」


 挑発して真実を喋らないタロウと、既にほぼ出所を知っているジョーとの不協和音を強くする。

 剣の相手をジョーは木刀でしていた。魔力矯正器具により凍らせて硬度をあげている。


一番弟子(ミサス)が参加した演習は見てないのですか? あ使ってないですね。賭場で命令外で使った者がいたか」


 タロウは独り言で納得する。

 ジョーは情報を聞き出していく。


「侵入時に使ったのは影楼(かげろう)。ボットの技を使った。暗殺したのはお前か」

「さあ。“世界の英雄”に味方していた存在が仲間だけではないし、そもそも殺して技を奪い取れるような簡単さは無い」


 答えは言わない。

 手は出してくる。


 今回は武器の性能に頼りっきりと攻撃を繰り出してくる。

 それぞれ効果音と共に殺傷能力のある斬撃を繰り出す。


 

 移動や攻撃に全て肉体からの魔力を使ってない。

 手に持つ剣や黒いスーツで力を増幅したり、力を生み出している

 身体能力が高いことは明白だ。


「あなたのように世界の英雄を殺して、力を奪い取ることはできませんよ」

「……」


 

 もう一回武器の底にあるボタンを押し込んだ。

 決められた魔力の出力を一時的に爆発されるコマンド。

 大きな飛ぶエネルギー刃は膝を曲げ、上半身を後ろに反らしたジョーには避けられた。


「まあ良いです。親族に少し顔を見せた事とやるべきことは終わりました」


 バラバラと氷塊は斜めに両断され、上半分の自重によって分かれている。


 丁度中身の首のところで分かれていた。


「テロリストの口を塞いだところでどうする。必要な記憶はすでに確認済みだ」

「情報を得たところで、証明はできないでしょう?」

「裁判でも起こすつもりか」

「世界の偉い人が隠蔽します。この平和な世界の維持のために」


 一瞬でドンとジョーは間合いをつめ、飛び蹴りを腹部にくらわせた。

 両腕を使った防御の上から。


 タロウは後に数メートル飛ばされて耐える。

 ここで口角を上げた。


「最後にパトロンからの言葉を伝えておきます」


 結論から言うと含みのある言葉の最後にジョーは反応してしまう。

 その後タロウは小型艇の結界を破り、眼下に広がる海へ消えていった。







「Sキラー坂田譲(サカタジョウ)。私は生きているbyアトー総統」


これにて第3章は終わりです。

更新日時確認いただくと引かれますが、超超マイペース更新にお付き合いありがとうございます。一気読みの方ここまで読了ありがとうございます。


皆様報告します。

次の第4章は既に大部分を書きあげています(?) というのも4章に当たる話を軸に、色んな要素を前日譚ということで第1〜3章を構成しましたが、入れ過ぎました。遅くなったのもモチベーションの問題という言い訳もします。すみません反省点です。


ただ昨今の身の回りを整え、無理のなく終わりまで書こうとおもいますので応援お願いします。(特に感想欄で催促すれば爆速になる可能性大です)


次 第4章 セイテンノセントウ よろしくお願いします

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