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3-13 マツカイサ帝国の皇帝

マツカイサ帝国の若い君主が初登場です。

 “世界の英雄の子”は、存在がもれなく戦略魔術師に位置づけられる。

 例外なく魔力か強力な一芸に秀たものが個人の生まれつき努力関係なく現れるからだ。


 そのたった一人が上陸するだけで戦争を仕掛けると同義。大陸間の移動を海路でバイチークで訪問したのも、それだけ道中の国や勢力を刺激をあたえないためだった。

 簡単に国を滅ぼせるからだった。


「ジョーがいらないこと言ったかもしれないが、二人には上の空中庭園にいる皇帝陛下(おとうと)には許可はとってある。今頃は青臭い国の代表で狸でもに揉まれているだろうよ」

 ボットは大きな声で笑った。


「だから二人とも。この三人の護衛を頼むぞ」


 ミサスとネードはしぶい顔をした。



 それを横目にマウは浮かんでいる姉達に声をかけた。

「クモン姉さま! ビオンテ姉さま! ガイノ姉さま! 明日からのスケジュールをたてましょう! この二人は優秀な騎士ですから!!」

「そうそうマウへ伝えておくことを忘れていました」

 クモンは竜の頭を船へと近づけて、乗船した。ビオンテやガイノも装備を解除しつつ、後に続いた。


「変に大きなホテルに泊まると他の方も巻き込んでしまうから、マウの自宅に泊まらせてもらうことにしたわ」

「え」

「妹の家に単身訪問する機会は少ないですし、我ら姉妹水入らずでお泊りですわ。大家(ジョー)さんにも許可を頂けましたし」

「え」

「安心しろ。しっかり寝間着と着替えは持ってきている。足りないものあれば買い出しへ行けばよい」


 マウはしぶい顔をした。



〇天空会議場

 ミサス達がしぶい顔をしているはるか上空。

 ここで世界の四大勢力が集う国際会議が開かれていた。

 世界の英雄の娘がはしゃいでいる姿をガラス越しに見ていたものがいた。

「皇帝陛下。会議が終了してお疲れでしょうが、議長国として各国代表の方に挨拶があります」

 秘書官に呼ばれ振り向いたこの国(マツカイサ帝国)の若き国家元首。

 伝統色であるマルーンを基調とした洋装にまとめていた。

「アジサイ。世界は広いな。兄上の口癖がよくわかる」

「はい。陛下と共に歩けることを光栄に思います」

「休憩と練習はこれくらいで良いか」

 深呼吸をしてその場から離れようとすると、小太りの貴族達が近づいてきた。

 この世界における宗教観。地方を超えた信仰もテッラ教の総本山パーチティにおける最高の聖教師である一人。

 そして兄上(ボット)が口にしていた狸だ。

 外の埋め立て地域にポツンとある大きな屋外テントを見た。

 そして取り巻きの一人が汚い者を持つかのように鞄から一冊の本を出してきた。

 表紙には女性が服をはだけさせて扇情的な顔をしている。

「いくら日程が遅れていたとはいえ、世界の会合の目の前に低俗なものが目に付くのは失礼ではないのか?」

「そうだ! 隣大陸の皆様に失礼だぞ!」

「我がイストール地方が野蛮だという悪名が広まったらどうするんだ!」

 ルゥカフの取り巻きが次々と罵倒を投げかけてくる。


 そのプレッシャーに皇帝は一言息を吐いて、顔を整えた。






「知らんがな」


 とても爽やかな顔で吐いた言葉。ぽかんと聖教師達は反応に困った。

 その間を逃さず、松国の皇帝に仕える秘書官。アジサイは途中に入って、付け足した。

「皇帝はお伝えしています。前提からして特定の人物を中傷している訳でなく、マツカイサ帝国の法にも破っていない書物になにも言うことはございません」


 その裏で皇帝はアジサイから一つの資料を手にした。一瞬で見通して答えた。


「今ではマツカイサ国の国書と呼べる勇敢記はイストール地方の識字率は9割へ向上させた功績として全世界の学者で支持されています。今手に持っている資料はこの後その偉業について交流会を組んでいます。確かあなた方の特徴として我が父が勇敢記の執筆者と公表した際、一番に酷評の声を上げたのはあなた方だ。思想の侵略だとおっしゃっていたのは私も記憶にあります」



「ふん。だから青臭い国は嫌いだ」と言い放ったテッラ教の面々を見送る。その二人は次の会場に向かっていた。


「あいつらの狡猾さを強く煮詰めた嗅覚はどうなっているのだアジサイ」

「古くからの貴族社会にある光景です。理不尽と思える揺さぶりをかけて難癖をつける。そういった社会に揉まれるとプライドが高くなります。人のことはあまり言えませんが」

「人類史上ここまで平和な時代が来たと言っても、舞台を変えた争いは無くならないか」


 皇帝はため息をついた。


「慣れないな。いかなる政治の障害であったテッラ教を、世界の英雄(イーゼ)は味方にすることに成功したという事実がいかに化け物じみた存在だったのかわかるな」

「皇帝……いえ()()()大丈夫ですか」

「急に女の声を出してくるな。驚く」


 口角を上げて皇帝――プラム・マツカイサは会場に進んだ。


「アジサイ再確認する」

「最初の会合は大陸横断鉄道を技術顧問を派遣頂いたシャトラキ地方の――」

「兄上とサカタ氏の趣味か。物流を整備することに同意するが、バイチークとターピティを鉄道で結ぶ事業も私にはできない。そして一番触れてほしくない話題は?」

「ナメルの脱走です。報道各社が情報をつかんでおり、時間稼ぎも不可能です」

過剰信者(オーバーカルト)か。兄上がわざわざ出向いて捕獲したナメルも逃亡された。世界の英雄が消えてこういう罪なことを残した」

「対策は変わりません。要人ブロックには各国の護衛に合わせて、マイネン団長率いる帝国騎士団第一隊が固めています」


「まだまだ一日が終わらなさそうだ」


 アジサイの扉を開けた皇帝は歩みを進めた。



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