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3-11 デートをしたかった

 ロード!!

 ヘンティークリスト・パンストが柄のボタンを押し込むたびに、その認証音声と共に正大な音楽が流れる。

 魔術を発動させるために詠唱の手段を踏むが、最近戦術の流れはもっぱら無詠唱だ。だが加減を間違えたり、発動しない危険性があるので、畜音した音声で管理する即席のものが開発された。量産がしやすく、魔力が少ない弱者向けのもの。

 それを攻撃と同時に音をだして、連発してくる。

 剣は光るもので、師匠達好みに言うとビームサーベルだ。噂に聞くが警棒並みの携帯性で、対策のしてない刃そのものを切断できる代物。使い勝手にやや難があるが、守りを捨てた攻撃力を誇っている。

「キャープテンフィンガー!!」

「あっつ」

 と言いながらミサスは発砲していく。弾はホッチ特性の魔力を乗せれるもので、特有である炎属性を連発する。命中しても防御魔法で固めているのではじかれているが、当たったら大きく炎が出るのでめんどくさい。しかも肌を露出しているので、無駄にダメージをくらう。

「酷いな。読者の皆さんに本気を出してみろよ」




〇観客席

「あれホッチさん。ここで会うなんて奇遇ですね」

「……カリ・コロコロ」

 タキシードを着て男装をしたホッチにカリが近づいてきた。軽いワンピースを着ていて動きやすい。

「そんな怖い顔しないでください。変装の意図は察しします」

 ちらりとカリは闘技場の方へ目線を移した。

「ずっと騒がしいと思っていましたが、面白いことになっていますね」


「狩猟王の調子はどうですか?」

「おかげさまで。定期的に擬態できてるか確認するのがめんどくさいですけど」

 カリは鏡を取り出し顔を見た。傍からは化粧直しをしている女性にしか見えない。そして小さな箱型の膨らみと合体しているものが見えた。

「カードゲームですか?」

「はい。昨日晩餐会で会ったおじさんから教えてもらって。バイチーク発祥のカードゲームは世界中で流行しているらしいですね」

 バイチーク名産のカードはとても精巧な作りで世界中のカジノで使われている。その信頼性は最上級のものだと偽造やイカサマ対策に紙幣と同等な印刷技術を使われている。魔力の封印がついている。それ以外は何もない作りが正確なカード。

 一般にもゲームの種類によって流通しており、大きな主産業になっている。

「最後ミラレアル出身の殿方がとても強かったです。魔力を感じられない方でしたが、知略に翻弄されました。もしかしてホッチさんの知り合いですか?」

「……そうかもしれません。心当たりがあります」

「ふーん。で、ミサスの相手も知り合いなの?」

「はい。かなり好戦的な問題児で、とても手をやいてます。訓練に参加予定でしたが、ドタキャンをしてしまって」

 光る剣を取り出し、ミサス(カルパッチョ船長)に飛びかかっていくヘンティーの姿が見える。

 カリはケースをカード2枚取り出した。出てきたのはメリロイドラゴン。

 炎を纏い、とても熱くそして高貴さも見る者に伝えさせる。

「カード占いですか?」

「はい。召喚術を使ってボコボコ殴るものですが、淑女には似合ってるといわれました」

「これが出ると、どうなるのですか?」

 カリは一呼吸置いて言った。

「メリロイドラゴンはミサス。大好きな人。私は愛しているけど、2枚目はそういったクリーチャー……モンスターを生贄にして墓地に送るの。他のモンスター召喚や呪文を唱えるための生贄としてね」

「……」

「この2枚出したのはわざとだけどね」

 ホッチの苦々しい顔のあとに続ける。

「だけどホッチらしくない。わざわざ一つの札として想い人を出すことはしないはずなのに」

 カリの言葉に図星をつかれたホッチは言葉に困った。



「そうかもしれません。私はもう時間が無くなってしまいました」

 ぽつりとホッチの口からその言葉が出た。


「ホッチ久しぶりってほどじゃないね。さっき会った」

 二人が横を見ると、マウと護衛している青年騎士ネードがいた。

 ズコズコと二人の間に入って、ネードを困惑させる。

「カリさんだよね。噂には聞いているミサスの幼馴染」

「はいカリ・コロコロです。面と向かって話すのは初めてですね」




「おっと! また乱入者が現れた! フードを被った謎の男!」




〇闘技場舞台

 その男はふらりふらりとミサスとヘンティーの前に現れた。

 黒い敗れかけているローブと、フードの隙間から見せた生物感のない肌。

 人の形をした屍人(アンデット)のようだった。

 

 ミサスへ腕が伸びる。筋肉が裂け、中からは骨が見える。

 持っていた短剣を投げ、それでも止まらない攻撃から新たな短剣を構えて受けた。

 防御の魔法で弾いたが、そのまま後ろの観客席へ突っ込んだ。


 一人の首が飛んだ。


「おいおいマジかよ」

 いくら眼下で残虐ショーは行われてようとも、安全な筈の客席にまで被害が及んだ。


「久しぶりだなミサス」

 空間が悲鳴で支配される間に、気に入らなかった門番が口を開いた。


 ロード!

 ヘンティーが必殺技を出した。飛んでいく斬撃は男の横を通り過ぎ、後ろにあったVIP席を直撃した。

「あらら手ごたえがなくて後ろのお偉いさんに当たってしまった。ノーコンを読者に笑われる」

 そこに油を注いだ。


〇観客席

「逃げましょう皆さん」

 ネードは促す。


「え、守護隊の騎士さんだったら、あれを倒すのではないの?」

 カリは疑問に思ったことを口にしただけだ。

 おいおいこの女は何を言っているんだとネードは呆れたが、横から渦巻く大きな魔力を感じた。


「ホッチ。声が聞こえなかったけど、あれはカズルかな」

「カズルではないと思います。この前見た恩恵“狩猟王”が暴走した時のキメラに似ていますが」

「そう。なら私が出る」


 マウ


「それはだめですマウさん。ここで目立ってしまっては変装したかいがないです。それに」


「泣いています。冷静でない状態で()()()()()由来の力を使ってはいけません」



〇闘技場 舞台

「様子を見ると、第1章のボス(カズル)が変わり果てた姿で再登場した顔してるな」

 ヘンティーの言う意味はよく分からないが、的は得ている言葉を発するなとミサスは思った。


 するとすぐ横に上から大きなものがやってきた。片膝をまげ、腕を地面に置いたヒーロー着地を決めた。

 そして転がっていた盾を拾う。


「ネード来ていたのか」

「惚れている女に見栄張って来た。本当は一緒に逃げたい」

「まじか。あの様子だと完全に振ったと思ったのに。マウは変なものでも食ったのか?」

「何の話しているんだ。顔見知りか?」

 お前が言うなと思ったが、ミサスは直ぐに案を確認した。


「二人ともあいつを倒すなら組まないか」

 ミサスは提案した。


「十徳刀のお膳立ては嫌いだ」

「いや。今日は後方支援を行う。今日の装備だとあいつには勝てない。ヘンティーは攻撃手。ガンガン攻めろ。一番の目立ちどころ。ネード盾あるなら壁役をしてくれ」

「なるほどRPGの有名コマンドね」

「くそ度胸がいるやつか」


「で攻略方法。屍人系は浄化魔法がセオリーだが、相手の身体能力的に合成魔獣(キメラ)関係だと思う。これだとどこかに核となる魔石があるはずだから、手数でその場所を見つけて破壊してくれ」

 この指示に、二人は納得した。


「俺は魔力お化けではないから、浄化魔法の連発は難しい。短い時間で決めてくれ。貧血でぶっ倒れたら回復は難しい」

 魔力を回復するポーションの瓶を口に咥え、ミサスは敵を囲む魔法陣の発動を行う。

 ネードはどんどん再生してくる腕を盾で跳ね除けて二人を守る。

 ヘンティーは、ボタンを押してありったけ必殺技の斬撃を連発していった。

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