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3-8 男たちは話す

サブキャラ回です。ミサス達は同時刻飯食べています

〇バイチーク展望台

「ナメルが脱獄した!?」

 ミサスは声を荒げた。

「守護隊のポンコツはどうしているんだ。珍しい大手柄だと見直していたのに」

「それ私が助太刀した」

「…………だろうな」

 ボットの言葉に妙に納得した。


「俺はあいつの口に勝てないぞ。それ以外にも勝てるところはないけど。ボットも今やその身体で若年層を相手に遊ぶのは良いがとても危ないだろ。ナメルだけではなくて」

「そうだ。もう1人では対応できないほど。いや元々世界は1人では動かせないか」

 ボットは察したように呟く。

「それに大きな敵が動いている。この平和な世界に明確に、大きく動いているやつがいる」

「先の大戦は異世界転生者を利用した神の代理戦争が真相。イシャララとは違うのか?」

「違う。先の神の残滓か、ずっと世界の陰に隠れている秘密結社か正体が分からない。だが確証や証拠はある」

「そうか信じては良い話なのか」

「色んな異世界転生者らしき者の多くを監視してきたが、よくも悪くもこの世界(ホイシャルワイルド)の住民は既に知識や能力が過去ほど差が出てきていない。探すのも一苦労だ」

「警戒しないとな。いつか迫害を受けそうだ」

「別に悪い奴ばかりではないことは知っている。もしかしたらジョーの世界から新たに飛ばされた人物からもしれない」

「…………」

 言葉に詰まり、ジョーはバイチークの街を見下げる。港まで街の夜景がよく見えた。

 過去、ミサスはボットと初めて会った時の出来事を思い出す。そういえば会ったところもここバイチークだったなとふっと思い出にふけた。敵とはいえイシャララという懐かしい言葉が出たことが記憶のトリガーになっている。

「俺は遊びすぎたのかもしれないな。異世界に来たぞ!! と最初は生きこんだけど、ここはテンプレのような世界観や面白さがなかった。しょうがないから今までの価値観をはめ込んで必死に何か大きなことをしようと思ってきただけだしな」

「そうか。ならばジョーは私より優れている。傍からは独りよがりないつ来るか分からない敵に怯えていて対策するものより、多くの人の賞賛を得ている。鉄道も隣大陸で成功している移動手段を拡張しているから、これから松国だけでなくイストール地方全域に」

 そうだなとジョーは笑顔で答えた。


「ボット。今聞いておくべきことがある」

 ボットはジョーの顔を見た。

「最近会ったときは他に忙しすぎてフームをバイチークに呼んだ理由はなんだ。勝手に人の名前を使って。ブノを説得するのかなり疲れたんだぞ」

 ボットは少し笑った。

「広く世界を見たほうが良いなと思ってな。田舎娘のまま一生を過ごさせるのは酷というか、我々としたら酷な話だろう。お節介というやつだ」

「だったら一つ提案がある」

 ショーは立ち上がり言った。

「ミサスもそろそろ帝国騎士団では手狭になってきた。あの野生児が人を見ることにここまで能力があるとは思わなかった。イストール地方だけではなくて隣大陸まで」

「おいおい。弟と二重権威になるから、陰でいろいろと行動していた」

「その割には色んなところに手を突っ込みすぎだ。影王」

 二人の笑い声が響いた。






 そんな二人が見下ろすところに鉄板焼きのお店があった。自分で魔力を入れて発火する独特な調理器具がなかなかの良い味をだしていた。

 今夜のバイチークは西のモノ要塞から大規模訓練を終えた青年達が大量に入っていた。飲めや食えやと大騒ぎしていた。大きな団体客であるが、もうそろそろ守護隊に苦情が届きそうだ。

 お上りさんでもある“ヒロ”の英雄も例外ではない。

「ネードさん。あれは引きます。あそこまで追い込んでいたのに負けるとか」

「そもそも“あの”帝国騎士団と完全勝利を逃したじゃないですか。これなら故郷へ大きな顔をして帰れたのに……」

 部下からかなり弄られて酒を注がれる。それぞれ笑顔だったが、ネードは浮かない顔をしていた。

 大きく器に入った酒を飲む。

「まさかマウさんの好きだった男が、カズルだったのはショックだ」

「あー到着してから好みを探ってちらっと出てきた名前ですね。門番している中々のエリート」

「ほとんど大将がマウさんの情報しか集めてないときですね。今日噂にしてんですが、カズルはポックリ死んだらしいですよ。なんでもバイチーク大学でモンスター騒ぎの首謀者という噂が」

「屑じゃねーか。」

「で、そいつを殺したのがミサス・シンギザ。帝国騎士団一班の班長で我らの大将(笑)の天敵らしいくて…………」

「はっ。ならミサスを殺して恋人の仇を取れば振り向いてくれるはずですよ」

「それは違うだろ。ならあの後ミサスを含めたバイチーク共に仲良く談笑できるはずがない」

「例えですよ大将。あなたは舞台に乗ってない状態で、何とかマウさんと対等な立ち位置にいかないと。そして継続」

 分かった分かったとネードは酒をさらに入れた。










 随分寝てたか……。

 一人、頭がガンガン鳴っている重たいものを抱え、ふらふらと歩いた。

 寝床まで戻ってきた記憶がなく、意識もまだ虚ろだ。

 ふとドアのところに踏まれた今日の新聞を見つけた。一面は巨大な犯罪者の写真が掲載されていたが、顔が見事に踏まれていて確認ができない。


「ネード」

 目の前にふと男が立ち、新聞を取り上げた。その言葉にネードは飛び起きた。


「し、師匠!? バイチークに到着してからどこへ行っていたんだ!!」

「何。久しい顔を見に行っていたんだ。大変拒絶されたが」

 師匠と呼ばれた男は、ネードに水の入ったボトルを渡す。

 ごくごくと飲んだ。

「お前は“ヒロ”と冠が出ている英雄だろう。若さで許しているが、“英雄”たるふるまいをしろ!!」

「はい。それに師匠いつもとは違う顔をしていますね。変装でもしたのですか?」

「ああ。間の悪いところにストックにある変装用の魔術術式が時の人とそっくりだ。いけない」

 男はさらりと“本物”の顔を隠した。



 ネードはこの男の正体(ナメル)を知らない。

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