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1-5 現地弟子の意地と説得

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「くそ。いつもより威力やスピードを出しているのに、倒れない!」

「治癒魔法もいつもより効きが良いから戦闘続行出来ているのがマシなはずなのに!」


 テプ、コンスは息切れを引き起こしている。


 他の団員達も、代わる代わる追撃するが、肩で息をするほどだ。

 体力の消耗が、いつもより倍になっていると実感していた。



「ホットスポットは地脈の恩恵の影響が受けやすく大きな力が出る。

 体感でいつもの五倍の実力ぐらい。

 その分調子に乗って、今の君たちみたいに飛ばしすぎてバテる。

 治癒魔法を使うのも体力いるしね。

 わざわざここで演習した目的には、大きな力を使ってみるものがあったはずだが」


 影王は、淡々と戦いの総評を語る。

 あまり消耗した余裕はなく、懐から瓶に入ったポーションをごくごく飲んでいる。

 瞬く間に体力や魔力を一定値まで回復させることができる。

 それも一番ランクの低い市販のもので、そこまで消耗していないということなのだろう。



「だが、全員がチートの種が光る人材ばかりだ。

 それぞれとても良いセンスを持っている。

 誰がこの隊を作ったのか知らないが、よく集めたものだ」


 とても笑顔というか、自らの言葉に酔っているような印象を受けた。



「よし。帰らせて貰おうか。帝国騎士団が貧弱という噂を広めよう」


 もう一口小瓶を口につけた。



「もう少し遊んでいかれたらどうですか?」

「ほう。ミサスか」

「ボルケニックシュート!」


 影王の真後ろを取ったミサスが、影王の身体ごと蹴り飛ばした。

 お返しとばかりに、森の中へ宙を舞って飛んでいった。


「「ミサス隊長!」」


 戻ってきたミサスの姿に、団員達は歓喜する。

 それに、今までダメージをまとめに入れられなかった影王をダウンさせたおまけ付きだ。

 みるみる団員達に士気が戻った。


 ミサスは、間髪入れず通信器具で全員に指示する。


「全員影王のスキを見て撤退する。合流地点は最初の訓練で使った河原だ。だが、」


 ミサスは一呼吸を置く。


「ただ、やられっぱなしでは癪だろ?」


 ミサスは笑顔で振り返った瞬間、前方から大きな魔力が頭上を通り過ぎた。



「ほう。やっぱり一矢報いに来たか」


 大きな声が聞こえる。

 ミサスに蹴られた跡をさすり、影王は収納空間から剣を取り出し、高く振り上げた。漆黒の剣身が業火で照らされ、魔力を増大させる。


「ノベルスタイル。“やっべ名前考えてなかった”」


 横一直線に振る。

 飛ぶ斬撃であり、威力は 影「王」たる大技だ。


 メキメキと周りを囲んでいた森林は倒れ、ミサスや騎士団員を中心にとても周りは開けた。

 影王は歩いて戻ると、呆然としている顔の多い


「これで戦う場所と条件は良くなった。で、やられっぱなしでどうした?」

「地獄耳」


 その独り言に、聞こえた全ての団員が同意する。


「火災をも防ぎますね。本気を出しても森を火事にする心配はしなくて良さそうだ」

「ほう。ミサスからそんな言葉が出るとは。大学で習ったか?」


 山火事の消火には、火そのものの鎮火より、木を切って燃え広がるのを防ぐ。


「あなたと同じく知識の欲では負けてないです。だからこそ師匠も一人ではありません」

「そうだな。ジョーのヤツが一番最初だったな」

「今さっきから聞いていて不思議なのは、異世界出身者を目の敵にしています。そもそも、あなたが一番“異世界かぶれ”ではないのですか?」

「考えは変わった。異世界出身者がこの世界や国を壊す。

 まだ個人相手ならば、懐柔したり色々できるが、先の動乱で世界各地に点在することを知った。

 あまりにも常識から、かけ離れた存在が多すぎる。

 組織や共同体といった形で攻めてこられると、この世界の文化や国や個性が次々と壊されていく

 あいつらの存在は許しておけない」

「ならば、この世界で生まれた子や孫。配偶者まで手にかけますか?

 私みたいな異世界転生者達の弟子といった関係者までも殺しますか?

 そもそも、あなたには異世界出身者の友人もいた筈です。今言われたジョー・サカタの他にも!」


 そのミサスの言葉に沈黙が生まれた。


 少し間を置いて、ミサスと影王は飛び出し、剣を抜き、互いの剣が交差した。

 金属の甲高い音が一音鳴り響く。

 影王はミサスの剣を弾いて、後ろに飛んだ。



 ミサスの顔は、かなり驚いた顔をしていた。


「頭の中を見たな? どうしたミサス。いつの間にか人を斬れるようになったのか?」

「……うるさい。リアル影王」

「面白かったよ。邪魔したなマツカイサ帝国騎士団第二隊の諸君」


 影王は笑顔を見せ、暗闇の中へ消えていった。









「マツカイサ帝国騎士団 第二隊」

 このかつてなく平和な世界の中で、未来有望な若者を大陸各地へ自由に派遣が可能な青年隊。

 多くの民のトラブル解決の役立ち、人材の経験値を上げることもできる。

 かつて睨みをきかせた存在を人道支援に役立てることは、世界中で好意的に受け止められている。


 だが、設立の真の目的は知られてない。


 圧倒的な個としての知識。

 天性な個としてのカリスマ。

 反則級の「チート能力(種とも。なぜか転生者は好んでそう呼ぶ)」

 奴らの正体を知った時、異世界の権力者はその者達に蹂躙される恐怖を憶えた。


 特にマツカイサ帝国は、それらの存在の脅威を的確に捉え、徹底的に影響下である「イストール地方」の改革に全力で取り組んだ。

 実際には、嫡子である皇子がそういった者達と距離が近かったとされている。

 そういった者達の、味方としての頼もしさと敵としての恐ろしさを充分に把握していたらしく、青年隊結成は早かった。


 全ては、世界の英雄をはじめとした「異世界転生者」「異世界転移者」に対抗するため。

 マツカイサ帝国次世代エリート育成を目的とした青年隊の結成。



 余談だが、先代皇帝の崩御した今では、影ながら見守っている幽霊話が、首都バイチークの一部で流行っている。影王は実は幽霊なのではないか? という説も出ている。


 そして、現隊長のミサス・シンギザ。

 若年ながら、様々な分野で精通した師匠を数多く持つ。

 その中には、転生/転移を経てやってきた異世界出身者も多い。


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