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2-22 クレパの心情

「ホットスポット?」

「はい。先日第二隊で訓練した帝国所有のホットスポットです。

 場所は、ここボルガリアからバイチークの間にあります」


 そうやって、ホッチは地図を取り出し、机に広げた。

 ボルガリアを中心にして描かれて、バイチークは目立つように印があった。


「バイチークまでの道は、ホットスポットを迂回するように通っています。

地理的関係だと、ここから直進して、ホットスポットを抜ければ近道です。

それに、ニルキを含めたコロコロ一族が没した地になります」


 ケコーンは、ホットスポットの場所をなぞった。


「反逆者を捕らえるには、守護隊を要請するか?」


 反逆者……。

 原稿をひたすら描き続けていたサンモの手が鈍った。


「いえ。危険だと思います。

 ホットスポットは、高濃度な魔力が漂う特殊な場所。

そして、ミサス・クレパ共に単独の戦闘力は高いです。

他にもクレヨという圧倒的な。そして無視出来ない存在。

遊ばれた影王の二の舞になります。いえ。あれ以上に酷いことになります」


「そうか。我々三人だけで確保しなければならないのか」


 ケコーンは唸った。


「よし。終わった」


 サンモは、とんとんと描いた原稿の束を揃えた。


「新作の原稿ですか?」

「うん。ホッちゃん。祭りに出す新作。

バイチークに戻ったら、印刷所にすぐ出しに行く。早い者勝ちなところあるから」


 そういって、原稿を紙袋に入れ、収納魔法を展開し、異空間に収めた。


「1つ。二人に聞いても良い? 何でミサス、クレパ、カリと敵対しているの?

 第二隊の仲間だし、カリさんも良い人だ。何で?」


「カリさんや、クレパにも手を出した敵です」

「本当に思っている? 私の作品のパンチラで鼻血を出す人だよ?」


 ホッチの言葉に、そう問いかけた。


「命令だからだ」

「ケコーンは、責任感が強いのは分かる。ただ、あまりにも一人で抱えすぎよ。

 他に何か隠していない?」


 ケコーンを見た。


 サンモは、キャラクター作りに、身近な人を参考にする。

 今回の作戦は、そういったモデル作りや、観察を餌にミサスが提案してきたから乗った。


 ケコーンが何か持っていることに確信があった。


「第二隊は能力主義。他を寄せ付けない個性や特徴がある人が集まる。

 だから、個人は個人の文化として敬意を払っている。

 作戦中に原稿を書いたり、男にうつつを抜かしていても」


 ただ。そうケコーンは口にした。


「マツカイサ帝国の一員として。命令は絶対だ。

 隊長も、必要ならば斬れと言っていた。これ以上悩んでも仕方が無い」



○ボルガリア~バイチーク 途中


 カリは、馬の姿になり、クレパとミサスを運んでいた。

 道は、ボルガリアから南西の方角へ。バイチークに繋がる。


 特に手綱や蹄鉄を着けていないため、すれ違う馬車や行商人から変な目で見られる。

 適当に、捕まえたから。大人しい。壊れたから。

 と適当に言い訳をして、過ごした。


 ミサスは、背中に布団干しの要領で、ぶら下がっていた。

 こちらも、注目を集める的だったが、変人扱いされて難を逃れた。


「昔から、魔力の経口補給をすれば、それなりに回復することは分かっていた。

 血がエネルギーや物を燃やすために必要な酸素。つまり肉体のエネルギーを運ぶことを発見された。これも異世界出身者からもたらされた知識と、極一部の人は指摘している。

 ならば、血管に直接魔力を注げば手っ取り早い!

 それは、半分合っていて、半分間違えていた。

 人それぞれの魔力には属性があって、対応している属性。器具を使用しないと危険。

 そうしないと、今の私。ミサス・シンギザみたいな、魔力酔いどころの症状ではなくなる。

 こういうのは、吸血鬼伝承で『魔物になる』から察するに……」



「ミサス。今さっきから同じことを言っている」


 カリがテレパシーで、小言にツッコミを入れた。


 ボルガリアから離れた後、ミサスは全身が痙攣し、大変危険な状態だった。

 魔力の拒絶反応が起こったのだ。

それは、魔力の暴走する一歩手前のもの。身体の内側から魔力で焼かれるような痛みが伴う。


クレパが一時的な魔力を封印させるための術を施し、安定した。


 今は、残る痛みを和らげるために、ミサスの独り言が長かった。


「元々、魔力の経口補給は、恋人同士でやるのが鉄板。

 流血を伴う体液の交換は神秘的と、一時流行ったらしい。

そこから、力のみを純粋に得ようとしたのが、不断の契りという古代魔法。

 今は、『愛の合奏』という変わる魔法が完成して、お役ご免になった。

配偶者・生涯のパートナーで発動される愛の魔法。

魔術の心得のある人同士ならば、切り札として練習している人が多い。

 因みに、これは男女ではないと成功しない。サンモから聞いたこと。

 カリの親父を含め、一夫多妻制度には、こうした技を安定して使う知恵があったとも聞く」


「何でそんなことを繰り返し言うの?

 もう勉強になったからさ」

「そんな小さな時の記憶が蘇るから。

最近。今さっきも激痛で、走馬燈が流れている時も見た」

「…………」


 カリは、それ以上何も言わなかった。



「家族ってそんなに良いものなのですか?」


 クレパが二人に聞いた。

 えーとね。と二人は答えづらそうだった。


「私にとって家族は知りません。

 カリさんは遠くで家族の存在を知っていた。

 ミサスさんは、ジョーさんを始め多くの師匠に会ったと聞きます。

 ただ私は一人でした。ここに別に哀しいとかの感情はありません。

 短剣を与えられ、食べられる分の食料を狩りました。

 私を殺しに来る暗殺者を、次から次へと倒していきました」


「大変だね」


 と一言カリは何も言えない顔をしていた。


「別に大変とかは思っていなく、当たり前のことでした。

 と言っても、今の第二隊の暮らしは面白いです。

 絶対に超えられない。知らない分野で一番の人が多くて面白かったです」


「ただ、やっぱりよく分からないのです。

 確かに生物のことを勉強して、交尾して子孫を残す理由として分かります。

 ミサス隊長とカリさんが、夜中ゴソゴソしているのも分かります。

 恐らく成長すると、性欲が強くなるのかもしれません」


 ゴホゴホとカリは身体を揺らして、ミサスは体制を起こしてカリに跨がった。


「だから分からないのです。

 子供を見ても、可愛いとかあまり思いません。

影王という人も、第二隊を作った偉い人だとは理解しています。

しかし、それ以上に私を3回も殺した実力者ということに、頭を支配されます

他の人と違います。だから知りたいのです」


「……うん。そういったことをしっかり考えるなら、俺は心配していない」


 それに。とミサスは前置きして、聞いた。


「クレパに短剣を与えたヤツは誰だ?」

「妖怪です。鼻の高い天狗」

「お、おう」


 分かった。という反応をミサスはした。


「ここから、どこへ行きますか? ミサス隊長」

「ああ。ホットスポットに向かう。

 もうちょっとしたら、宿屋に着くと思うから、その時起こして」


 ミサスは、また布団干しの状態になって、眠った。


二章完結後、しばらく更新をお休みします。ご理解ください。

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