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2-20 ボルガリア着!

「よし。ボルガリアが見えてきた」


 コルピタラの襲撃があった村から出て2日後――――

 ミサス一行は、ボルガリアに到着した。


 バイチークからボルガリア。さらに北へ繋がる道と、今ミサス達が歩いている東西を結ぶ道が重なる交差点。

 イストール地方内陸の物流拠点の1つ。

 街の周りには、高い壁に囲まれている要塞都市。

 かつて、この街が大きな軍事拠点でもあった面影を残している。


 カリのいたコロコロの館へ向かう際、ここを経由した。

 10日ほど前のことだが、特に変わった様子もなさそうだ。


 街へ入るための守護隊の検問がある。

 それを通るための馬車の列が見えた。


「そういえば、クレヨが全然襲って来ませんでしたね」

「もしかして、ボルガリアへ先回りをしているかもしれない」


 ミサスとクレパは、そういった話をカリに聞かれないように話をした。

 あまりストレスを感じさせないようにする。


「どうするか。このまま正面から入っていくか。

それとも、マツカイサの特権を使って裏口で入るか……」


ミサスは、そうブツブツ呟いた。


「私ならば、どちらでもいけます」

「頼もしいけれど、相手も同じだよな」

「なら、私達の都合が良いように動けば良いです」

「それで行こう」




○ボルガリア 門 関所


「守護隊本部に直行しろと?」

「はい。マツカイサ帝国の方が到着するとそう伝えるように上からお達しです」


 ミサスは、現地の守護隊 隊員からそういった説明を受けた。


「分かった。場所は分かるから護衛は大丈夫だ」


 ミサスは2人を引き連れて、ボルガリアの街に入った。


 内陸の規模では、有数のもの。

 ボルガリアの街は、イストール地方各地の名産が集まってくる。

 近年は、バイチークの港経由で他大陸の品も見かけるようになったらしい。


 物や人が溢れ、市場の近くには美味しそうな匂いが漂ってくる。


 クレパがソワソワしていた。


「何か買ってこい。途中でつまみ食いはしないように。

 俺たちは先に行っている」


 ミサスは、クレパに硬貨の入った袋を渡した。



○守護隊本部


「あっミサス隊長!」


 守護隊の敷地に入った瞬間、建物からホッチが走ってきた。


「お怪我は大丈夫ですか! 血の臭い……戦闘があったのですか!」

「ああ。ホッチ。まだ魔力が戻っていない。乱暴なのは困る」

「分かりました! こちらへどうぞ!」


 ミサスは手首に違和感があった。


「手錠? ホッチこれは何だ?」


 ホッチは、ミサスの鳩尾に深い拳を入れた。


 呼吸が出来ずに、意識が遠のいていく。


 ミサス! ねぇ! とカリの声が微かに聞こえた。





 ミサスが意識を取り戻したのは、大きな部屋の一室だった。

 手と足が固定され、自由が効かない。


「サンモご苦労だった」


 傍らには、サンモの姿があった。

 恐らく、何かの治癒魔法を施し、覚醒させたのだろう。


「サンモ一体?」

「ミサス隊長。これから、お聞きする内容を抵抗せず聞いて下さい」


 そういって前にあった3つの席の1つに座る。

 他に2つ席があり、真ん中にケコーン。横にホッチが座っていた。


「おい。ケコーンどういうことだ?」

「隊長。落ち着いて聞いて下さい」

「拉致されたのが、知人。しかも味方であるはずの連中だ。

 俺が底まで冷徹で冷静だとは思っていないだろ?」


 ケコーンはその言葉に反応を示さない。

 クソ。無視かよ。とミサスは小声で言った。


「で、何だ。話は?」


 それには、ケコーンが答えた。


「カリ・コロコロ女史を拘束します。その後、バイチークへ護送任務に当たります」

「何?」

「ミサス隊長が行方不明だったので、私ケコーン・ヴァーボンがこの作戦の指揮官です。

 ただ立場上、ミサス隊長の方が上なので、色々とお話を」

「色々とって何だ。仲間を拘束して」


 サンモは口を緩ませたが、ケコーンは無視して話した。


「結論から言いますが、ニルキ・コロコロが危険人物という認識を、マツカイサ帝国上層部は変えていません」

「ああ。ただ、今回は病気のため療養していた娘への遺産相続の手続きだ。

 その遺産を差し押さえるほどの理由は出来たのか?」


「いいえ。遺産の書類関係は、最初の予定通り完了し、受理されました。

今回は “恩恵”案件です。バイチークで暴走した事件を引き起こした“狩猟王”。

しかもサクサクラ一族が狙っているとなると、上層部は本腰を入れてきました。

特にミサス隊長勅命の任務ではないですが、私達3人を妨害すると……」


「分かった。分かった。反逆罪だろ。

俺の仕事は、あくまで相続手続きの案内とかとかだ。

別にそれが終わったら、カリの身柄は好きにしろ」


 ミサスはふて腐れたように、手錠を外せとアピールした。


「大丈夫だよ。暴れたりはしない」


 サンモは立ち上がり、鍵を持って歩いた。

 外れたと同時に、前のケコーンに対して飛びかかる。


「よし。ケコーン一発殴らせろ!」


 肘を大きく引いた。拳は固く握られている。

 ホッチが間に入り、少し躊躇した。

 その隙を逃さず、ミサスの襟を掴み、身体が宙を舞った。


 ドシンと大きな音を立て、ミサスの身体が床にたたきつけられた。

 そのまま、ホッチは関節技をかけて、制圧した。


「くそ。ホッチ手加減してな痛い痛い! 離せ!」

「ミサス隊長。物凄く不機嫌になると、言葉使いが悪くなるクセですね」


 ケコーンが、ミサスの前でしゃがみこんだ。


「失望しました。あなたが邪魔しないように、ここの牢屋へ拘留します」


 外にいる守護隊員へ伝わるように、大きな声で呼んだ。


「このカリ・コロコロの話が早いのだよな。

軟禁されていたとは言え、たかが女の子一人に大国が振り回される。

コロコロ一族は多くの弱みを握って、各国から発行される狩猟免許を独占した。

……という噂話は聞く。

どっかの狸ジジイか、クソ親父のメンツの意向が大きく出ているの?」


 ミサスの言葉に、ケコーンは初めてドキッとした。





「ほう。第二隊の皆さんは仲間割れですか。

 帝国騎士団と名付けても、所詮ままごとと言う訳か」


 その声に、一同警戒がマックスに上がった。


 声の先には、館ぶりの暗殺者の姿が入った。


「見たところ反乱か、隊長の暴走を止めるものか……碌なものではありませんね」

「クレヨ。どうやって入った?」


 ケコーンが応対する。

 見ると、傍らには別室に閉じ込めていたカリの姿があった。

 気絶して、横たわっているようだ。




 そう気を取られている内に、クレヨがノーモーションで手裏剣を投げた。


 ケコーンは短剣を抜き、払い落としていく。


「おまえこそ。女性を狙うなど、紳士の風上にも置けない」


手裏剣の先には、サンモがいた。


パンパンパンと三連続音が鳴った。


 緩んだ間隙に、ホッチの拘束を解き、腰にあった拳銃を借りてミサスが引き金を引いた。


「ちっ。当たるが、防がれるか」


 ミサスは、ホッチに拳銃を返す。


「銃か。確かに良い武器だが、子供に肌をつねられる方が良い。

 だがタイミングは見事だ。隊長が相手するか?」


「いや。一応俺の仕事は終わっている。後は、ケコーンの責任だから関係ない。

これから行ったこと無い娼館でも行って、憂さ晴らしを行おうかと思ったけど、師匠から性病に感染するリスクするから、絶対辞めろ! 処女を抱け! と言われていたのを思い出した」


「なるほど。集められた情報は少なかったが、ミサス・シンギザ。

ニルキを初めとした一夫多妻一族と色々関係があったと知っている。

これらが全て異世界出身者だとすれば……。すなわち、現地弟子というところか」


 この時、情報収集に一番詳しいホッチが、一番クレヨという男に脅威を感じた。

 国家レベルで一番極秘な事柄だ。そして推理力もかなり的を得ている。


 勿論、一番は対峙しているミサスのプレッシャーの方が大きい。


「ちっぱいも最近良いと思っているのだよね。

短剣使いなら、ここに来るまで腰使いが良かったから」


 クレヨは、一本魔力を込めた。

 だが、身体ごと壁へ押しつけられた。


 三人は何が起きた? と状況を掴めずにいる。

 目の前には、見覚えのある四足の獣がいただけだ。


「コルピタラ?」

「どこから?」


 コルピタラは、真っ直ぐミサスの所へ行き、背中へ乗せた。


「よし! カリこのまま逃げるぞ!」


 扉を突き破り、豪快に部屋を飛び出していった。







「どいたどいたぁぁぁ!」


 ボルガリアの街を、コルピタラ(カリ)とミサスが駆け抜けていく。

 前方には、盾魔法を展開し、道なりにどんな障害物も排除していく。

 というより、ミサスの声で人が避け、自然に通る道が出来ていく。


「ミサス隊長。面白いことやっていますね。

 何かの記録に挑戦ですか?」


 モグモグと頬を膨らませ、つまみ食いをしているクレパが飛び乗ってきた。

 袋の中には、美味しそうなパンや揚げ物が詰まっていた。


「クレパ。マズイことになった。三人でこのままボルガリアを出る」

「え? 何かあったのですか?」

「ちょっとカリをこのままでは守りきれない。

 ややこしいことに、ケコーン、ホッチ、サンモが味方では無くなった。

 クレヨが乱入してきたし、こっちに注目を集めたから、全力で逃げる」


 クレパは短剣を握り、やる気十分。


「それとクレパ。セクハラをしたことを詫びる」

「? 何をしたのですか?」

「あとで、カリから説明を聞いておいて」


二章完結後、しばらくお休みを頂きます。再開は8月下旬を予定しています。

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