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2-14 遺された原稿

今回は、マツカイサ帝国首都バイチークにいるサブキャラ回です!

迷師匠ジョー・サカタと「世界の英雄」の娘マウはどんな話をするのか!

○バイチーク

「マウが、こうやって俺を食事に誘うことなんて、いつぶり?」

「影王様のことを聞く時以来」


 特別講義を終えたジョーは、友人の娘であるマウと共に鉄板のある料理店に来ていた。

 マウやフームと同年代の女の子が、この仕切りのある個室に通してくれた。

魔力で動かす鉄板を挟み、向かい合って座る。



 マウの父親は「世界の英雄」である。

 しかし、そういった色眼鏡で見る人は少ない。

バイチークの人達にとって「マウ」という女の子は、大変人気だ。

母譲りの美人なルックスが注目を集め、男女問わず人気が高い。

面倒見が良く、人を集めるカリスマで、魔力も素晴らしく優れたものだ。

身体能力も高く、父親譲りのずば抜けた力は備わっていた。

同世代で“最強”と呼ばれるのも納得する。


 十年近く前にバイチーク大学へ飛び級で入学。首席で卒業した。

 そのまま独立して、バイチーク城で給仕として働き始める。

 今は、ジョーが大家であるアパートの一室で一人暮らしをしている。

最近は、バイチークの大きな祭りの実行委員となったとジョーは聞いていた。


「フームから聞いたぞ。週一で鍛錬に付き合っているけど、遠慮無しにバカ威力でズバズバ魔法を放っているって。」

「やっぱり嬉しい。いつも本気で練習相手できる人がいなかったし。サンモはいつも原稿で。ミサスには私の強さは隠しておきたいし」

「そうか。仲良くなっていて嬉しい。フームも一緒に来れば良かったのに。今日は休みだろ?」

「あー大事な用事があるみたい。……それに今日は、ジョーおじさん聞きたいことがある」


 秘密の話だった。

 マウは、個室全体に誰も会話が聞こえないような結界を張った。


「フームのことは知っているのか?」

「あれは、生まれつきだよね。別に問題では無いよ。

 個性やアイデンティ。これは何にも言えない。

ホッちゃんの声や、私があの人の娘という事実から逃れないように」

「そっか。フームも良い友人を持ったな。」

「そうそう。凄いよあの子! 私が本気で魔法や魔術を使っても防いでくれるもん!

 他に出来る人は、バイチークの中では限られてくるし」

「なんだ? 丁度良い標的を手に入れたか。」


 違うし。友達だし。と結構キレ気味なマウをからかう。

 ジョーは上機嫌になった。


「一番悪かったのはミサスかな。やたら騎士団に入らせようとしていたって」

「あー。あれは、俺のせい。良いかなっと思って話をまわしていた。」

「それであの二人結構ギスギスしたよ」

「ああああ。一応、本人二人には謝っておいたから。」


 冷たい目線をジョーは感じた。

 少ししてマウが笑顔になったから、仕返しをされたと理解した。


「でも、そこの副隊長がとても頭の固いクズだから、ミサスがどれだけ守っても、続けなかったと思う」

「副隊長……イーサーか。注意しておく必要があるな。

全くボットのやつ、最近何を考えているのか分からない。」

「え、影王様と最近会ったの?」

「? それが一番の目的ではないのか。」

「違う。影王様の話も後で聞く」


 マウには、影王ボットの話題は最大級の周りに警戒しろといってくる。

 いつもは、誘っても知らないふりをする。

 年頃の娘の反抗期というものだろう。

 とジョーは、納得した。


「取りあえずこれを読んでくれる?」


 マウは、収納魔法の扉を開き、そこから束になった原稿を取り出した。


「なるほど。カズル……先日俺を監禁したやつの日記か」

「うん」


 ジョーは読み続けていた。

 マウから渡された原稿には、異世界転生者“カズル”の日記だった。


「確か、カズルの所持品等は全て回収されたはずだ。」

「ずっと前に添削頼まれていたの。

これはコピーしたヤツで短く編集したもの」

「ふーん」


 ジョーはパラパラとめくり、速読していく。

 内容はカズルという転生者のこれまでだった。

 前世はさえないニートで、交通事故によって死亡した。

途中“イシャララ”とう神からチート能力を手に入れた。

 内容は、危険回避。視界に分かりやすく色が表示される。

(これに関して、危険な区域や迷宮探索にアドバンテージを高く取れそう。

とジョーは思った。)

 異世界へ転生。

 しかし、転生した先はスラム街。

子供が生きていくには劣悪の環境だった。

両親は、子供に面倒もかけない自己中なクズばかり。

 罠にかけて殺し、妹と共に生きてきた……。


「一応、読んで、少し気になったところも添削した。」

「あ、ありがとう」

 

 見上げると、マウはソースを作っていた。

 このお店は、自由に具材を組み合わせてソースの作れるオプションがあるようだ。

 材料は、卵黄・酢・塩・こしょうをボウルの中に入れる。

 そして、少しずつ食用油を入れて、かき混ぜていく。

魔法で身体能力を強化させ、すぐにそれは完成した。

 マヨネーズだ。


 マヨネーズは、異世界生活に相性が良い。

 材料がシンプルで、手に入れさえすれば誰でも作りやすい。

 酢の効果で、食中毒のリスクも軽減される。

 今では、物流が発達しているため、レシピを知っていれば誰にでも口にしやすい。


「でもマヨネーズ。俺が異世界で無双する前に、もう広まっていたな。」

「え?」

「いやこっちの話。この世界は、転生か転移してきた異世界出身者が多い

 前に話をしたと思うけど。」

「ああ。うん。」

「で、これをどうするつもりだ?」


 ここは聞きたい。

 ジョーは、マウがお節介な性格だ。ということは理解している。

 このカズルという人物は、ジョーにとって敵だ。

 何日も、バイチーク城の使われていない牢屋に監禁し、拷問を行った。

 しかもフームを襲い、ミサスが間に合わなければどうなっていたか分からない。


「これを読んでも同情することはないよ。絶対に俺は許してはならないと思っている」

「カズルは、おじさんやフームちゃんに迷惑かけた。ミサスが入らないと、何が起きてたか分からない。」

「なら何でこいつに関わる。

いたずらに犯罪者や頭狂った権力者に関わってはならないのは、身を持って知っているだろ!」

「恋をしていたからだと思う」


 その言葉にジョーは頭を抱えた。


「しっかりした頼み事には、丁寧に答えてくれるから。

 それに、異世界出身者でこんな話出来るのはおじさんしかいないし」

「分かった分かった。

時期的に祭りへ出す原稿だとは思うけど、これを出版してどうするつもりだ?」

「カズルは門番を不名誉除名される形だから、見舞金も家族に支払われない。

 保険とかは多分入ってないと思う。手当が厚いらしいしね。

 この原稿の添削は頼まれていた事だから。

儲けは期待出来ないけど本はアキサンの女学校で寮生活している妹へ渡したいと思う」


 マウは、しっかり伝えた。

 ジョーは、頭を掻いて答えた。


「分かった。だが、カズルの名前を使うのは避けた方が良い。

物凄くマツカイサ帝国の上層部がマークしているはずだ」

「あの“恩恵”を暴走させて、大学とかに被害を与えたから?」

「それもあるが、カズルが転生してこの世界でやってきた“異世界出身者”というのが問題だ。

ニルキ・コロコロは覚えているか?」

「あー。ニュースになったハンターの人でしょ?

 そして、影王様の格好をして、カズルが殺した異世界転生者の人。

 お母様達がお悔やみの手紙を出したって聞いたけど……」

「あいつ物凄くグレーな商売をしていたかららな。執念の如く金を集めていた。

 恨みは相当買っていたはずだ。

生き残りの遺族へ、報復を考えている存在がいてもおかしく無いくらいに」

「えっ。なら、命を狙っていた存在が他にもいたってこと?」

「全くないとは言えない。これ以上は陰謀論で、考えすぎても仕方が無い。」

でも、ニルキの財産は残っている。」

「悪い人なら、証拠を見つけて裁くことも可能だと思うけど」

「恐らくイストール地方のどこの国も動かないと思うよ。」

「?」

「異世界出身者に対して、忖度する。

ニルキはかなり影響力の大きな人物だから、絶対動いている。」


 少し分からないといった顔をマウはした。

 いつの間にか運ばれてきた肉を焼きながら。


「先の世界中を巻き込んだ動乱に関わったのは、この世界出身のヤツがいる。

そういう存在が、全盛期で活躍しているのが多い。

密な関係にあるものだから、異世界出身者に配慮する。腰抜けだといっても言い。

このままだと、どこかで恨みや妬みといったものを買いすぎる状況は好ましくない。」

「つまり、目立つのはマズイ?」

「バイチークで創作活動は盛んだ。だから、内容は問題ない。

 “世界の英雄の娘”が、“凶悪犯である異世界出身者”を庇う認識が一番怖い。」

「…………」

「脅しているけどね。

この原稿の出版には大きく見積もってそんな影響力があると考えても良い」

「父や母の泥を塗らない。迷惑かけないと、いつもの話?」

「一番は、個人単位ではない異世界出身者の存在が、何かの拍子でスケープコードになることだ。一番マズイことになる。

黒魔法使いとレッテルを貼られた異世界出身者の国。バルジャック王国も、それで滅んだ。

女子供関係なく殺された。酷い虐殺だ。」


 ジョーは、瓶からエール(ビール)をガラスのコップへ注いだ。


「今も、異世界出身者に対するそんな影響は出ている。

人道支援で現場に出ているミサス達の働きは民衆達に指示されている。

しかし、帝国騎士団の青年隊の設立目的は“異世界転生者”に対抗するための組織だ。

ギリギリの所で、共存できないか? とミサスは頑張っている。

その分、影王の動きが分からない。あいつは昔とかなり変わってしまった。

聞く限り、何かにとても焦っている感じで……」


 グーッと二人のお腹の音が鳴った。


「年取ると話が長くなるのがいけない。よし。食べるか」

「うん」


 ジョーは、キンキンに冷えたエール(ビール)を一気に飲み干した。


 二人が頼んだのは、「コルピタラ丸々一頭食べ尽くしコース」。

 大勢集まる貸し切りパーティー用で要予約。


 マウはモキュモキュ食べていた。

 焼けたものを次から次へと口に入れる。

 鉄板の魔力は常に高火力。


「沢山食べるな。今日の講演代が全て飛んだ」


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