2-6 カリ・コロコロ
「久しぶり。ミサス」
「カリ。ご無沙汰だ」
「マツカイサ帝国騎士団第二隊隊長。野蛮に肉を食らう獣姿とは全く違う身分になれましたね」
「おかげさまで。誰かさんの呪いのおかげでね」
ミサスは右手をグーパーしながら答えた。
ミサスを含めた三人は屋敷の客間にて、ここの主人「カリ・コロコロ」だ。ニルキ・コロコロの第一夫人の娘にあたり、コロコロ一族唯一の生き残りになる。
カリの真向かいに、ミサスとサンモが隣同士で座った。ミサス斜め後ろに護衛としてクレパが立っていた。
この部屋には、世界中の動物や怪物の剥製が飾り付けられていた。全てが貴重の品種の物で、メリロイドラゴンのものは、フームには絶対見せられないなとミサスは考えた。
対称的に、サンモとクレパは目の前の女性に圧倒されていた。
サンモは自らを圧倒する魔力量。ここが桁外れの魔力量を持つホットスポットの影響だとしても、桁外れの魔力量が溢れている。
クレパは、魔力の大きさよりも、いつも初対面の相手に行っている脳内シミュレーションに基づいた暗殺方法が構築出来ずにいた。見えているものに引っかかりを感じ、迂闊に動けないでいるのだ。
ミサスは、二人の部下の動揺を感じ取り、カリに家族について話をした。
「そう。影王さんが最初に……。正体は皆さんご存じなの?」
「ああ。マツカイサ帝国騎士団に青年隊を設立した立役者ぐらいには。真相が判明するまで、師匠を疑わなければなかったのは、辛かったが」
カリは、ミサスの話を噛みしめるように聞いていた。
「それで、その偽物をミサスが殺せたの?」
「いや。トドメを刺したのは、後ろにいるクレパだ」
話を振られて、クレパは軽く会釈をした。
「でも、わざわざ部下連れて、ここまでわざわざ来ないでしょ。いくら父にマツカイサ帝国の上層部が忖度したとしてもね」
「世間では、かなりニュースになっている。良くも悪くも」
「…………他には?」
「ニルキ・コロコロの財産の相続を示した書類だ。ここにサインをくれ。確認したところ、債務処理等は不意の死亡時に備えていたようだから、借金等の心配はいらない」
「今回の一番の目的は、古代魔法器具“恩恵”の継承儀式にある」
「えっ父さん。そんなもの持っていたの」
ここで初めて、カリは驚きの表情をした。
「ああ。しかも通常とは違う形になる。これから説明する」
「珍しいですね。ホッチ殿がミサス隊長の副官を担っていないとは」
ケコーンは、正面に座ったホッチに向かって話しかけた。
二人は別に来客用の待合室に通されていた。
ニルキ・コロコロは、数人の夫人とその子供達で構成される大所帯である。それは、先の帝国所有のホットスポットの現場で、遺体の種類と数が物語っていた。
その子供たちの世代の年長者が、カリ・コロコロにあたる。母親譲りの魔力量であり、将来は優れた魔術師を期待されていた。
そんな彼女が名指しで席を外すように言われて、ケコーンと仲良く一緒にいる。
「はい。私は魔法の才能が無いもので。あまりお気に召さなかったのでしょう。ただ、学業や銃の扱いといったところで、帝国騎士団にいる理由にはなりうると思います」
腰には、ミサスのものとは違う構造をした拳銃を、腰のホルスターに入れていた。
「いやいや。ホッチ殿は我が第二隊の頭脳軍団に所属しているではないですか。拙者は武術しか鍛えていないので、この隊の経験は、毎日刺激的です」
ケコーンは先ほどから俯いている。
「いえ。魔力に鈍感なもので。こうしてホットスポット下では皆さんより、楽に行動できます。今回は完全な裏方に徹したいと思います」
ホッチは謙遜に徹する。
「それにしても、カリさんが隊長の初恋の人だとは。あの人もなかなか」
「……そうですね。妬むところです」
目の前の雰囲気の変わりように、ケコーンはたじろぐ。
「それ以上にミサス様には、複雑な想いがお有りのようです。特にカリさんの現状を考えればすぐに察しがつきます」
妬ましいと、またホッチが口にした。
「分かりました。ミサスの計画に乗りましょう」
ミサスの提案に、ケリは即決した。
「なら、皆さんここに滞在する必要がありますね」
「ああ。許可を願えるか?」
「はい喜んで。この屋敷は、私の部屋以外自由に使って貰っても構いません。食料は、穀物は十分備蓄はあると思うけど、肉とか薬草が必要ならば、森へ採りに行って頂戴」
ミサスは頷いた。
「明日から頼む」
「お願い。ミサス」
互いに握手をした。
「そうそう。掃除をする必要があるけど、温泉を引いています。よろしければ、是非お使いください」
「温泉!」
サンモが一番飛びついた。
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