2-4 盗賊撃退
「耳を塞いでください」
通信越しの言葉に、ミサス達は落ち着いてサンモの言うとおりにした。
敵を探す音響魔法は、発動時に耳が痛くなるほどの高い音を出す。敵への牽制と同時に、サンモの位置を逆探知される可能性があるが、そこは護衛に任せておく。
サンモは優れた魔術師である。魔術結界の展開や、高度な魔法を使用する。
今回、彼女の役割は全員に指示や情報を伝える司令官だ。
先日の影王襲撃時や、“恩恵”に取り込まれたカズルにおいても、後方支援として力を発揮していた。
副隊長のイーサーやホッチの存在に隠れることが多いが、彼女も優れた指示能力を持つ。
「敵、五十名近くいます。かなり囲まれていますね」
「よし。クレパ聞こえているな。襲撃者を排除する」
「はい。半分の雑魚はお任せを。というかもうやりました。隊長達は強そうなものをお願いします」
おっそろしいよなと近くにいたケコーンと同意する。
クレパはこの大陸の裏世界で、悪名高い暗殺一家の生き残りだ。
短剣使い、そして危険察知や勘の鋭さ。第二隊で頭飛び抜けて優れている。
ミサスより先に影王の襲撃に対応できたのも、彼女の優れた身体能力の成せる技だ(念のために言っておくが、影王は物凄く強い)。
彼女の奇襲に対応するのは困難だ。
なすすべ無く、襲撃者はクレパによって屠られていく。
「私の出番はないのではないですか?」
「クレパが強いやつは任せたと言っていたから、ケコーンの相手はいるだろう」
ケコーンは、見た目通りパワータイプの斧使いだ。
ミサスより鍛え抜かれた肉体から繰り出される豪快な技や、あまり似つかわしくない繊細な武技。冷静な判断の出来る生粋の武人だ。
生まれはマツカイサ帝国で長年皇帝に仕えている名だたる武家の跡取りだ。幼いころから培われた英才教育の影響が垣間見れる。
余談だが、本人の知らないところで第二隊の隊長の競争にミサスに負けこそしたものの、人格や人柄の良さもあり、隊内部や周りと有効な人間関係を構成している。
「それにしても隊長。今さっきから、かなり殺していますよね」
ミサスの格好は、背中に矢を入れた筒を背負い、腰に剣と銃。片目用の眼鏡をつけて、遠くの敵を次々と射貫いていく。
ミサスの役割は、今回かなり兼務しているところが多い。この作戦上で“死の森”を抜けるための要でもあり、現在のような弓兵といった得意としないものを行っている(それでも出来るということに、十徳剣と言われるほどのミサスの器用さがかなり素晴らしい証明となる)。
的確にスパスパと急所へ射貫いていき、十数名ほど死体が辺りを転がっていく。相手の弓は、騎士達の盾魔法を貫通しなかった。
「最後の仕上げだ。ケコーンは左の強そうなものを頼む」
二人は、左右から強襲してきた“強そうなもの”に対峙した。
「おらぁぁぁぁ」
「フンフン!」
身体強化で繰り出される剣をケコーンは斧で受け止めた。
相手は、剣と盾を装備した男だった。
ケコーンよりは若いが、かなり剣筋が良い攻撃でケコーンは薄ら笑いを浮かべる。
「かなり基本に忠実な剣だな。センスが良い」
「余裕ぶりやがって」
相手はかなり焦りを隠せていない。
「我が熱き魂をここに、ファイヤーボール!」
ミサスは魔術師を相手に対峙していた。これも幼さの残る
左手で火の玉を剣で斬り、身体へのダメージを防ぐ。
「こういった対人戦で詠唱とか久しぶりに聞いた」
「…………」
間髪入れず、ミサスは右手で銃を引き抜き、弾を放った。
鎧のように纏っている相手の盾魔法を貫通しない。
が、肉体への衝撃は大きいらしく、痛いのを我慢する、しかめ面を浮かべた。
二人の幼い強そうな襲撃者との勝負は早くついた。
若手といえども相手した二人は、マツカイサ帝国騎士団へ所属する実力者だ。
ケコーンは男を追い詰め首に斧の刃を当て、勝負をつけた
ミサスは、魔力切れかつ全身のあちこちが痣だらけになって、泣き始めたところを拘束した。
サンモによると、すでに敵の存在は見られない。クレパは念入りに周りの警戒を行ってくれている。
二人を仲良く括り付けて木の上に垂らし、尋問を行う。
「先ほどの村のものですね。我々が帝国騎士団と知った上でこの襲撃。正気では無い」
「…………」
ケコーンの言葉にも、二人は無言を貫く。ミサスは尋問を続ける。
「無詠唱は先の世界を巻き込んだ動乱で、かなり普及した方法だ。詠唱込みは味方に被害が出るほどの大規模魔法を使う時しか使わない。詠唱短縮を目的にした“三単語法”もそうだ。古いもので、見た目通り若い君たちが使うようなものではない」
「…………」
かなり怒りをこめた感情を表す。
「どうだろうか。かつて帝国騎士団に無残にも破れた残党が、辺境の村でひっそりと暮らしているものもいる。その誰かに教えてもらったのだろう。それだと、かなりの老人だ」
「俺を殺せ!」
「お前の命で何になる」
若い男の叫びに、ミサスは一括した。
「まぁいい。たかが鉄砲玉ごときより、報復すべき相手は分かっている」
ミサスは矢を取り出し、先ほどいた村の方向へ向いた。
魔力を込め、“ボルケニックレイ”の発射体制を整える。
「知り合いの関係者だと思ったが、そういった偶然は無いな。それに俺は単純だ。言葉に出さないと分からない」
今まで半べそをかいていた女の子が
「助けて! カイチュンおじいさんがいなくなって、盗賊に村が乗っ取られたの!」
二人の叫びと共に、二人は大きな爆発が起きた。
「隊長! 西の方向です!」
「見えた」
ミサスは、サンモの通信の指示通り、矢を放った。
遅れて、遠くで大きな悲鳴が聞こえてくる。
「くそ。人間爆弾か」
「ケコーン。前方に敵がいる。蹴散らすぞ」
ミサスは指示を出した。
盗賊の頭は、爆発は成功したものの帝国騎士団二人が健在なことを感じていた。いや二人がそれをアピールするように、魔力を高めてこちらへ真っ直ぐ向かってきた。
「ほう。盗賊の首領は村長だったか」
敵国騎士の隊長に、うすら笑いを返しておく。
「一応聞いておくか。なぜ帝国騎士団と名乗りを上げた上で我々を襲撃した。まさか実力者にとって、雑魚スライムを大げさに対応したから。とそこまで油断なる判断はするまい」
「そうだ」
「まじか」
「同時に我に雪辱を与えた騎士団が、ここまで貧弱な烏合の衆だとは思わなかった」
敵がマツカイサ帝国に恨みを持つ隊長の読みは当たっていたよな。とケコーンは思った。
同時に、短剣を飛ばしてきた。恐らく毒か魔法陣が書き込まれていて、まともに受けるのは危険だ。
二人ともサッとよけた。
ミサスは同時に飛ぶ剣撃を放つ。
盾魔法が割れ、魔力効果の薄い所ができる。
同時に右手で銃を抜き、心臓へ近い脆くなったところへ、三発弾を撃ち込んだ。
ブシュッと血が噴き出し、そのまま仰向けに倒れた。
「まさか、剣を交えないまま……」
死んだ。
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