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2-1 ミサスの右手

二章プロローグ

初めて会った時、ミサス・シンギザはとても野蛮だった。

 私の名前は、カリ・コロコロ。

 お母さんが違う弟妹達を見守る一番年上のお姉ちゃんだ。


 誰もが、とても偉いと褒めてくれる。


 ニルキ・コロコロは私のお父さん。とても有名なハンターだ。

 モンスターや怪物は、お父さんやお母さんが狩っていた。

 お母さん達と強力な夫婦魔法がとても綺麗で、とても鼻が高い。


 だけど、ミサスは私と同じ歳なのに、同じ大きさの者を狩っていた。

 それだけなら良いけど、とても周りを血で汚していた。

 刃物をグシャグシャとコルピタラ(四足獣)に刺して、解体していった。

 とても汚い。

「ねえ。とても斬るの下手くそだけど」

「何だ? じゃやって見せろよ」

 ミサスから刀を貰って斬り始めた。

 ドングリの背比べだったと思う(いや私の方が上手だった)。



「何でお前の父ちゃん。色んなものを狩れるんだ?」

「ここの大陸はギルド制といった冒険者は珍しいの。だから、組織をつくってスワリン連合印の全域で狩れる免許があるから!」

「へー。お偉いさんに媚び売っているのか」

「違うもん! お父さんが偉いもん!」

 そんなことを言いつつ、わーわーと喧嘩したのを覚えている。



 いつの間にか、ミサスと会いに行くときが楽しみになっていた。

「ねえねえお姉ちゃん。ミサス兄に会いに行ってくるんでしょ」

「ちゅーした? ちゅーした?」

 弟や妹達はそうやって騒ぎ立てる。

「気を付けなさい。男は次々と手を出す獣だから」

「そうそう。気づいたら、また一人一人と女が増えていくものだから」

 お母さん達は、色々言ってくるもニヤニヤしている。

 知り合いのおじさんおばさんもニヤニヤしている。

 唯一真顔で渋い顔だったのは、お父さんだけだった。



 あの時はバカだった


 私はいつものように、ミサスの狩りについて行っていた。

「また来たのか。カリ」

「酷いミサス。この前、骨折していたの誰が直したの!」

「すいませんでした」

「よろしい」

 私は、お母さんから治癒魔法をならっていた。

 それで天狗になりすぎていたんだ。

 周りをよく見ていなかったんだ。


 小さな動物が、一目散に逃げている様子を見かけたならば、逃げなさい。

「危険な大きなモンスターに追われているサインだからって」


サントスネークだ。

大きな身体がくねくねと器用にくねらせ、森の木と木の間を高速で動きまわる。

 私達二人は、この大蛇と顔があった。


 最初は盾魔法を展開した。

 だけど、すぐに割られて、私は後ろの方へ吹っ飛んだ。

ミサスは、寸前で避けて刀を出したけど、ひょいっと頭で叩きつけられてた。

 鼻の先で、コロコロと転ばされていた。


 遊ばれている。

 私は直感で分かった。

 知性の高い動物は、こうして獲物が困るのを楽しんでいる習性があると聞いている。



 目の前は大きな口を開けられていた。

 ミサスは、もう動けなさそうだった。

 私は手を伸ばし、ミサスの右手を握った。


 世界が暗転していった時、ミサスは、私の右手だけを持って行った。



























○バイチーク城 騎士団 第二隊 隊長 寝室


「はぁはぁはぁ」

 ミサスの呼吸は荒い。

 悪夢でうなされて飛び起きたのは久しぶりだ。


「どうかなさいましたか? ミサス様」

 ホッチが起きた。

 いつも仕事の時は男装しているが女性だ。

 美人だ。とミサスはつくづく思っていた。

 声は男性そのもので、本気で起こったときは怖い。

 最初、彼女は男性として間違われて同室に一緒になったのが、ズルズルなっていた。

 本人曰く「ある程度は勘違いされていたら都合が良い」らしい。

 因みに寝るときは、基本裸だ。

 そういう文化らしい。

 そういう文化なら仕方が無い。


「なんでも無い。ポーションのストックはあったか? 鉄分が強いヤツだ」

「ミサス様」

 そって顔を近づけて、ホッチはミサスと顔を重ねた。

「魔力補給に手っ取り早いのは、異性からの経口補給です。……私の場合、微量ですが」

「……すまないな」

 口づけの魔力供給は、古来から行われている。

 特に恋人同士のシーンは、愛情表現と共に創作の世界でもかなり使われている。

「連日、身体が回復しきらない程の魔力を行使なさっています。もう少しはお体を……」

「気遣ってくれてありがとう。だが、今やらなければならない」

「でも……」

「トラウマを克服するのは難しい。特効薬もない。これは、ジョー師匠が口酸っぱく言っていた」


「ただ、どうしても、自分がやることはある」


 ミサス・シンギザは右手を見た。

 先日、異世界転生者一族を虐殺した犯罪者から、畏怖と蔑まれた右手。

 死者の走馬燈をのぞき込める

 殺した相手の断末魔を読み解ける相手。


 かつて、死に行く友人の手を、最後まで手を繋いだ右手。


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