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1-2 マツカイサ帝国騎士団第二隊(青年隊)の訓練

ここから本文“現地弟子”ミサス・シンギザの活躍になります。

「隊長。後、少しですか?」

「まぁ待て」


 森林地帯。

 遠くでは野生動物の気配。

 こうして身体をくっつけて、地面に這いずり回ってくると虫が出てくる。


「虫も大きいものが多いですね」


 野太い声でホッチは、隊長に聞いた。


「地脈の影響が大きいホットスポットだからな」



 この世界は魔法がある世界。

 魔力は土地からの供給に依存しているところが大きい。

 これを地脈という。


 その分、海上等の魔力供給が薄かったり、補給のままならないところでは魔力使用は厳禁。

 貧血で倒れてしまい、生存確率が大幅に下がる。



 今、極限に息を潜めていた。

 ここはマツカイサ帝国所有のホットスポットだ。守護隊・遠征隊の演習。

 そして、バイチーク大学等の研究機関と共同で生態系の観察を行っている。


 二人はマツカイサ帝国騎士団 第二隊という青年隊に所属していた。

 この大陸から選りすぐりの「若年たち」を集め、優れた環境を提供するという前皇帝からの政策だ。

 世界の英雄が、大陸ごとにある四つの勢力を平定し、人類史かつて無いほど平和な世界になっていた。 そのため、武力の増強は鳴りを潜め、こうした多方面の発展に投資していく政策が盛んだ。



 普段はかなり目立つマルーン色ベースの制服を着るが、今は迷彩服で行動中だ。


 ホッチ・テッラは、情報を統括している諜報員。

見た目は、とても華奢な美人である女性だが、声が男声にしか聞こえない。

厳ついものから、演劇で見られるイケメンまで音域があり、初対面の方々へ混乱させないため、いつも男装をしている。


 そして隊長ミサス・シンギザ。

 マツカイサ帝国騎士団の第二隊 隊長だ。

 出自は恵まれたものではないものの、あらゆる指導者から貪欲に知識を吸収し、自らの力とした秀才だ。歳はまだ成人にいっていなく、騎士団歴代の隊長から見ても若い。

 専門は怪物退治と自称するように、集落から凶暴なモンスターを駆除するハンター。騎士団に来る前は、各地で多くの怪物を倒した経験を持つ。


「来たぞ」

 遠くに見えた四足歩行の動物がいた。


 コルピタラ。


 四足歩行をした胴体が大きな雑食系モンスター(猪の生態と近い。見た目は異なるが)。

 こうしたホットスポットでは数多いポピュラーな害獣だ。

 種類は多く、大陸の各所に点在している。

 その凶暴性から村を襲う動物兵器として採用例があったり、また肉も美味であり、都合が良い存在だ。

 騎士団の訓練対象にとっても、それは変わらない。


 二人の耳元には通信器具が備え付けられていた。ホットスポットの影響で近距離しか使い物にならないが、今は問題にならない。


 ミサスは剣を持ち、ゆっくり場所を変えた。

 ホッチは、このままコルピタラの動向を全てミサスに報告する。


 ミサスは、獲物の動きを確認していく。


「ピギャァァァァ」


 コルピタラが罠にかかった。

 丸々太った巨体が宙づりになり、足をバタバタさせている。

 ミサスは、静かに駆け寄り、その巨体に飛び乗る。

 それと同時に剣を抜き、急所に一閃。


「素晴らしいですね。隊長」


 既に肉の解体をはじめたミサスに対して、ホッチは静かに賞賛を送った。








○マツカイサ帝国所有ホットスポット キャンプ地

「隊長。私達が一番です」


 騎士団のキャンプにて、ホッチは成果を確認する。

 コルピタラの牙が他のペアより、圧倒的に山盛りだ。


「えー。俺結構切ったよ。それなのに、隊長ペアに討伐数負けているの!」

「ミサス隊長は、害獣駆除モンスターハントが専門だからな」

「隊長とコンビしたら、楽勝じゃん。副隊長は魔力の脳筋だし」

「テプ。隊長に向かって失礼だぞ。それに前に突っ込んで後半バテていたのは」


 新入りのくせにミサスへため口を使ってくるのはテプ。

 その横でそいつをスカウトしたイーサーがたしなめる。

二人とも返り血でべったりだった。


「隊長と副隊長とかのペアが頭抜けているだけ」


 ほとんどの団員達は、そのぼやきに同意する。


 普通コルピタラ討伐は一匹に対し、十人の連携した兵隊で挑むのが理想とされている。

 熟練の戦士であっても、一人で討伐するのは難しい。


 だが、若年層が固まる第二隊とは言え、イストール地方最強と呼ばれるマツカイサ帝国の騎士団だ。


 今回のホットスポットでの演習は、団員二人がペアを作り、二日の内にそのコルピタラを一体以上倒すことが設定されていた。全員がその目標を達成している。


 自然界で頂点のドラゴン・肉食獣等の生物が数を減らしたことにより、それより下位のコルピタラという害獣が大繁殖している。

 だが、近年そういった害獣による民間の被害への対策が充実して行きつつある。かつて無いほど大陸間の緊張が薄まり、大陸の矛である遠征隊の規模が縮小でき、その分盾である守護隊に予算や人員を割くことができるからだ。

 他に傭兵、個人のハンターや組織への報酬も昔よりは充実してきた(他大陸ではギルド制というものを使い、容易に個人レベルで参入できる話も聞く)。



 ミサスはそうした中で頭角を現してきた存在だ。

 ともあれ、今日は定期演習の最終日。コルピタラの肉でバーベキューもする。

 肉は美味だ。



「伝書鳩だ」

 盛り上がる中、団員の一人が叫んだ。


 ミサスは、肩に止まった鳩から、足に括り付けられた手紙を取り出す。

 それは帝国上層部からの作戦指示書。この魔力の感じ方から、盗み見ることを防ぐ封印がされているはずだ。


「ホッチ空けてくれ」

「かしこまりました」

 ホッチは慣れた手つきで開封をしていく。

「帝国騎士団本部より、ミサス・シンギザ隊長以下第二隊に緊急任務の命令。

 難易度B相当。

 ここ帝国所有のホットスポットに侵入したニルキ・コロコロファミリーの追跡、並びに拘束。

 やむを得ないときは殺害も許可する」


 読み上げた内容にミサスが一番声を上げた。


「ニルキ・コロコロ? 本当か!」

「ええ。隊長はご存じの通り、長く密漁をメインに私服を肥やしてきたハンター一家。その首領です。

 メリロイドラゴンの個体数の低下も、このファミリーが乱獲している疑惑があるくらいです」

「吾が大陸の象徴を汚すとは……」


 副隊長のイーサーが憤慨する。

 彼はこうした誇りや品格に敏感である。他にもこうした反応をした者も多い。


「ここに来て俺の初陣か」


 テプはにやついていた。かなり好戦的な性格ならではの顔だ。

 他にもそうした顔の団員はいる。反対な顔のヤツもいる。


「…………」

 一人だけ、ミサスは考え込んでいた。

「隊長命令を」


 ホッチが判断を促した。

 全員がミサスに注目する。



「現時点をもって訓練中止。ニルキ・コロコロとその一味及び追跡。捕縛する」

「了解!」

 全員が同時に返事をした。


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