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1-13 拘束された異世界転移者

※ブックマーク機能としおり機能の併用が、読むときに大変便利です。

○バイチーク城地下

封鎖された地下空間のその奥。

異世界転移者が拘束されていた。


 ジメジメとした牢屋。

とても湿気が溜まっているようで、衛生的にもよろしくない。

 放棄されて時間が経ち、存在の知られていない場所があった。



 ぽたりぽたりと水滴の音がする。

 手首には鎖に繋がれる。

 肉体から赤褐色へ変色した傷で覆われている。


「そうか。今年で五十になるが、この歳でマディストに目覚めそうだな。」


 拘束された男は、そう口元をそう緩ませる。


「しぶといヤツだ。ケラケラ笑っている」

「バカ言え。誰もかも年長者がメンタル強いと誤解されては困る。」

「ほう。物を食わずに生きながらえる理由は何だ?」

「オートファジー。自らの肉体を削って栄養を取るのさ。」

「確か少年漫画であったな。でどうした?」

「そういう作品は、お前みたいな豚が最初に” かませ”がお約束さ。」


 捕らわれた男は、デブにバットで殴られた。


「まさかミサスの強さが、俺と同じ転生者だったとかな」


 カズルの目の前にはジョー・サカタ。


 ミサスの最初の師匠であり、彼は異世界へやってきた人物だ。

 生まれ変わりといった転生はしておらず、肉体や記憶も前から引き継いでいる。

 特殊な能力は持っていない普通な人間。


 しかも、年齢を重ね、老けている。


 救いは魔力矯正器具を使い、この世界で生きていく上で不便にならないほどの魔力は使えるところか。


 それは今身につけていない。

魔力で肉体強化もできず、ただただ生まれもってからの身体で拷問に耐えていた。

この世界の住民も、魔力を欠いた状態が続くとマズイことになる。



拷問は、長く続いていた。

あちらこちらに殴打による痣や腫れが多く、見ていて痛々しい。


 カズルはこんな状態になってもジョーの口を割ることができず、イライラが収まらない。



 反対に、ジョーはここまで生きながらえてきた。

 頭はとても冷静で、カズルを刺激しすぎず、情報を聞き出していく。


「ミサスへの復讐かと思ったが違うな。

転生者を名乗ってきたから、別の理由があるな」

「異世界転生? 俺の場合、親がスラムのロクデナシなおかげで大幅に出遅れた」

「いや聞く限り凄いぞ。

スラムの暮らしから、バイチーク城の門番まで持ち上げだろ?

国家公務員級の安定した職業じゃないか。

前の世界価値観からでも、相当な勝ち組だぞ」


うるさい! とカズルは、もう一発殴りつけた。

ジョーの口から、血の雫が頰に垂れた。


「ジジイがそろそろ命乞いか? なら正体を現せ!」

「……誰と勘違いしているんだ?」

「抜かせ。お前が“世界の英雄”だろ?」


 カズルは踏み込んだ。


「英雄? いや、あんな歩くウィキペディアと一緒にするなよ」


 やんわりとジョーは否定する。


「バカ抜かせ!

外見が平凡な日本男性の黒髪だったり、やたら国の上層部と繋がりはあることを知っている!

白状してその力を寄越せ!」

「分かった。同じ異世界出身のよしみで教えてやる。先の世界規模の動乱は転生者らのデスゲーム。

その胴締めを殺したことで、その設定は消えた。

基本この世界は冥界だ。

素直に死ねるとは思うなよ?」


 ジョーの最後の抵抗に、カズルは気にくわなかった。

何回も殴り、蹴り、意識がなくなるまでいたぶり続けた。







「おっさんをいたぶっても、しょうがないな」


そんな理由で、手を止めた。


「そうか。

だから歪に文明の発展に差があったのか。

ここの土地はこれが発展しているのに、ここは技術不足。世界中で歪な発展。成る程」


 冷静に考えれば、悪くない情報だった。

 異世界転生してから、目立たないようにしてきた成果がこれだ。



 カズラのチート能力は「危機回避」。

 誰にも見えないスキルパネルから、脅威となる存在を色別の矢印で教えてくれる。


 スラム街に住んでいた実の親は、濁った色をしていた。

これは関わるのが長くなるに連れて、俺自身を駄目にする存在だ。

転生先から、かなりのハンデを負った。



 それについては、しょうがなかった。遠回りだったが危機回避が出来る分、最善の手を打ち続けることができた。

結果論として、異世界転生者のバトルロイヤルとやらも、巻き込まれずに済んだ。

 因みに、スラムの親は上手い具合にくたばるように仕向けた。

今は、マツカイサ湾の底だろう。あの人達は色々借金していたからな。



「そうそう。例えば、ここにいるミサスの犬とかを見つけるときにも役立つ」


 肉体強化魔法を行い、壁越しに聞き耳を立てていたやつを捉えて引き抜いた。


「ホモ野郎と思っていたが、ロリコンに転向したのか」


 ギトギトした腕に掴まれ、生理的な嫌悪で見上げるフームの姿がいた。


「俺は、ロリ魔女が好きだな」

「キモイ!」


フームは抵抗するも、大きな手から逃げ切れなかった。














○バイチーク城 帝国騎士団 第2隊 室


「テッラ。独り言良いか?」


 ミサスは、横で書類整理をしているホッチに声をかけている。

 マツカイサ帝国騎士団第二隊は、マツカイサ城に大部屋が一つ当てられている。

 中央に大きな机と黒板。

団員達はその下に収納されている椅子を使用して会議を行う。

一番の上座に隊長の机と副隊長の机がそれぞれ直角に並んでいる。

 隊長の机の横には、一回り小さなホッチ専用の机が増設されていた。


「何でしょう?」

「最近、何かに逃げられている気がするんだ」

「フームさんではないのですか? いい加減にしておかないと、訴えられますよ」

「何かロリコンっていうのも聞くのだけど。この前は、男色家で……」

「…………」


 ミサス様は、人間関係の観察は下手くそのようだ。(ホッチメモ)

 オンの場合のホッチは物凄く真面目だ。参考にしたい。(ミサスメモ)



「体力自慢の獣やバカなら分かるが、田舎者だから人間の考えていることが難しい」

「自覚しているだけ十分だと思いますよ」


 ホッチは立ち上がり、ミサスの机に書類を置いた。


「私、少し調べさせて頂きました」

「新たな俺のことだな」

「ええ。ミサス様のことでしたり、行方不明になっているジョー・サカタ様のことであったり、影王の正体の考察であったり」

「影王の正体?

あんなの剣の腕が立つ浪人とかだろ。

他大陸で言う冒険者と言ってよい。

そうやって世界を歩き渡ってきたとかだろ。

というか、ほとんど俺の師匠そんな人ばかりだ」

「結論から言うと、影王の正体は……」


 立っているテッラの口を押さえ、そのまま身体ごと机に押さえつけた。

 ミサスは、身体をかなり密着させ、顔を近づける。


 いつも、ミサスの個室にホッチは忍び込んで誘惑しているが、今回は違った。



 どこか妄想して、望んでいたはずの展開だったけど、いきなりのことで動揺が激しい。

段々落ち着いてきてきた。

少しは膨らみのある胸を押しつけ、ミサスの背中へ手を回した。


「絶対に影王の正体は探るな。頼む」

「…………」


 ミサスの顔は真剣だった。




「あっ! ミサス!」

「ゲ、マウ」


 声の先にメイド姿の女の子がいた。

胸はぷるるんとホッチより大きい。


 でも、その正体はミサスにとって幼馴染みのマウだった。


 我に帰って辺りを見渡した。

口を押さえ、服は乱れていて、どう考えてもホッチを襲っているにしか見えない。



しかも、少し涙ぐんでいる。

 マウは、顔を真っ赤にして睨んだ。


「とうとうこんな所でホっちゃんを襲うとは(怒)」

「ま、待て! 誤解だマウ」

「問答無用!」


 マウの鉄拳制裁が、ミサスの身体を殴り飛ばした。


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