1-9 ミサスのサシミ
ミサス。今度は胃袋作戦だぁ!
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「ミサスって魚を捌くの上手なんだね」
「どうも。フームは棒に生地を重ねて焼いて、何を作っているんだ?」
「バームクーヘン。食後のお菓子」
「あー。真ん中が空いている他大陸のやつか」
台所でミサスはどこからか出した包丁を持ち、新鮮な魚をさばいていく。
魚を生で保管するのは、鮮度を保つのが難しく、食中毒にならないように品質管理は厳しい。
刺身は、釣ってすぐ新鮮なものしか手に入らない。
港のある街でしか食べれない高級品である。
ミサスは、胃袋でフームを落とそうとやる気十分だった。
フームは金属の棒を布の厚い手袋で左手で持ちながら、右手でお玉と炎魔法を交互に使用して、円筒の焼き菓子を作っている。
入ってきた二人は、ミサスの部下にあたる騎士団のメンバーらしい。
一日中、女性の前では頼りないミサスを見守る(追跡)していたようだ。
後ろで場所づくりを行っている。
「隊長は元々モンスター退治での功績があって、マツカイサ騎士団の青年隊に抜擢されたんだ。モンスターの殺し方はピカイチだぜ」
「ああ。その時は剣の師匠も近くにいたから、別に俺一人の手柄ではない」
「えっ。おじさんって剣の腕とか良かったっけ?」
「フームさん。その方はジョー・サカタさんではないです。
ミサス様には、他にも剣の師匠であったり、学問の師匠といったその道それぞれ別にいるのです。
間違いないですよね? 後、私の声は気になさらないでください」
「……」
フームは、ホッチさんとてもイケメンボイスでもっと聞きたいなと思っていたことを内緒にした。
「それにしても、隊長の師匠さんは謎な人だよな。
ただの可笑しい人だと思えば、城に顔パスで入場できる人だし。
この前、昼間にいた門番が門前払いしようと思ったら、上の方から絞られたらしい」
「私もミサス様のことは知れる情報は、この世の中ですべて網羅している自身はあります。
しかし、ジョーサカタ様との師弟関係だ。という以上のことは存じ上げません」
ここの部屋の主に全員の注目が止まった。
「別に。俺が汚いガキの頃、腹減って、ここに忍び込んで、捕まった」
ミサスは包丁を置き、刺身を彩に盛り付けた皿を机に置く。
「まぁその後に、色々なことが沢山あったからな。師匠限らず、色んな感謝する人がいるから、その人達に恥じない人物であり続けたい」
「あれ? おじさんの手紙にあったような」
「ん? フームさん。隊長の言葉と手紙の関係とは?」
「昼間の手紙にも、似たようなことが書いていた」
「ミサス様。受け売りですね」
「人の手柄を自分の手柄にするとか、どんな悪君かよ。隊長」
「昼間アドバイスした恩も忘れてませんよね?」
「あー言うな! もう! 分かったよ! 言葉のコスプレが大好きなんだ!」
かなり仲が良いんだなと、部下二人から弄られているミサスを見てフームは感じた。
「城じゃなくて良いのか? ずっとじゃなくても今日は長旅で疲れているだろ」
「隊長が職権乱用するところ初めて見ました。なら俺がここに泊ります」
「お前は帰れ。武器の整備でもしておけ」
「殿方と二人きりというのは、フームさんはとても気まずいでしょう。私が」
「何か別にやばそうな感じがするけど、テッラには別件で頼みたいことがある」
これって、どういう流れなのだろう。
あれだ。
ミサスがこのまま泊まるような流れなのではないか。
おじさんの知人だから、護衛はつけなければいけないとか言って。これは性善説に沿ってだ。
ミサスはバカそうだけど、一応帝国騎士団の分隊長だ。
冷静に考えて、何か非道いことされたら、普通は泣き寝入りになってもおかしくない。どうしよう。
フームは考える。
「よし。俺は帰る」
フームはむかついたので、丁度、ミサスの溝うちにストレートが入った。
ミサスを思いっきり殴った。割れていた窓から外へ飛んでいき、向かい側の建物の壁まで飛んだ。
「お前、いくらなんでも、朝までほったらかしにするのはないだろ!」
「部下の二人から伝言です。隊長。見損ないました。
それだから、もてないんです。隊長。また今度ベットの上でお仕置きします。以上」
「誤解だ。後、テプは殺す。テッラはそういった冗談を言うから、結婚できない」
「セクハラ。オタク」
「う、」
「でも、私のパンチごときで気を失うとか、帝国騎士団の。しかも隊長なの?」
「う、」
フームの言葉にミサスは名にも言い返せない。
翌日、二人は昨晩の机を使って朝食を取る。
フームへのミサスの印象は最悪だ。
それに、騎士団の隊長というものがここまで気配りのできない人物とは思わなかった。
これなら、最初から高慢な人物なら、まだマシである。
ここまで、歳が同じで気軽だから、変に苛つく。気にする。
「良いパンチだった。ぜひ帝国騎士団へ」
「ミサス。私はこのバイチークに一人で生きていこうと思って来たの。
かなり気を配ってくれたのはありがたいけど、もうやめて」
ミサスに最終通告を突きつける。
ミサスは黙って用意されている朝食を食べた。
昨日食い切れなかったバームクーヘンも飲み物で流し込む。
「分かった。朝食は美味しかったよ。
師匠が戻ってきたらよろしく伝えておいて。後、困ったらいつでも連絡してくれ」
今ではどうでもよいのだけど、顔によく表情が出るなと気づいた。
「さてどうするか」
フームは考える。
昨日は、生活拠点を確保することだけに頭がいっぱいだから、バイチークに来た目的を忘れかけていた。
私はバイチーク大学に入学するために、ノシン村からここまで来たのだ。
ミサスが守護隊の人に話は通していたようで、盗みに入られた部屋調査もすぐに終わってもういない。
一応、昨日ミサスから大学の場所は聞いているので、ノシン村の教師様からの推薦状を持って向かおうとする。
入学手続きが終わったら、生活資金を稼ぐアルバイト探しをするつもりだった。ミサスの話はあまりにも出来過ぎていた。
おじさんの弟子だとしても、世話になりすぎはここで生活するのを苦しめるだけだ。
それに、私の身体は、周りに比べて変だ。
私はあまりにも恵まれすぎている。
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