母襲来
ドンドンドン
私は今ピンチである
扉を叩く音が止まらない
それどころか鍵を内側からかけたのにそれさえも破られそうなほど激しくドアノブを動かされている
「いるのは分かってるんだよー!出てきなさい!!」
多分だが私に言っているわけではない
ここは咲夜の部屋だ
咲夜の彼女?…ストーカー?
といっても仮にも極道一家の珊組の敷地内にある一室だ
そう簡単に一般人が入れるわけではない
セキュリティ甘すぎか!珊組!
ズドン
1人ツッコミを終えたころ、ドアが破壊の音と共に私に降り掛かってきた
ドアに下敷きになることを頭で予想しながら身を固めた
「大丈夫か?深白」
目を開けるとドアを止めている咲夜がいた
「あ!咲夜ー」
ドアを叩いていた人は女の人であった
過去はモテていたのだと分かるほど顔は整っており、笑えば花が舞っている
しかも咲夜とは面識があるように見える
「おい、お袋帰ってくるなら連絡よこせよ
つかドア壊すな」
「ごめんごめんー」
悪びれない様子は紅哉に似ている
咲夜に手伝ってもらい、ドアの下から抜け出した私は服をはらった
「…お袋?」
「あぁ俺の母親だ」
「やっほー」
手を振る咲夜の母親の顔をたっぷり見たあと深白は状況をのみこんだ
「て、ことは珊組の姐さん…?」
「そーいうことよー、
いやー咲夜も人さらいするようになったか
立派になったなった」
咲夜の肩をポンポンと叩く
「さらってねぇよ、家出の…「家出させたのー?さっすがー「話を聞いてくれよ…」
咲夜がため息をついている間、咲夜のお母さんは私のもとにやってきて、頬をモチモチしたりフニフニしたりと遊んできた
「はぁの、咲夜のおはぁさん」
「なーに?咲夜のフィアンセさん」
咲夜が後ろで違ぇってと小さな声で言ってる
「家出したきたので泊めはぁせてもぉはってるだけへぇすよ」
頬を引っ張られてると上手く話せない
咲夜が頬から手を離させた
「そうだ、こいつはさらったわけでもフィアンセにしたわけでもねぇ
ただの家出少女を俺が保護しているだけだ」
「えー面白くないーー」
「息子に面白さを求めるな」
誘拐を褒める母親というのも珍しいと思いますけども…
見た目が若いため咲夜と並ぶと姉弟のようだ
「姉弟みたいですね」
「あなた、名前は?」
「え、と、深白です」
「深白ちゃんいい子好き!」
深白に抱きついてきた咲夜のお母さん
咲夜にすぐにはがされていたけど
「私のことはお母さんって呼んでいいからね!
ずっと娘が欲しかったのよー」
「え、あの、ちょっと咲夜のお母さん」
「じゃなくて?」
「お母さん…?」
「それでよし!!さあ出かけるよ!」
連れていこうとしたお母さん?をまた止めた咲夜
「いい加減にしろよお袋」
「もう何が悪いっていうの!」
「全部だ、まず話を聞け」
「あなたの話は単調すぎて面白くないの!」
「報告に面白さを求めるなよ…」
そこから咲夜の説明が始まった
ここに来たわけ、家出して来た理由、そして私の家については私に目線で同意を求めてきた
頷くと私の家のことについて言った
何故かお母さん?はその報告に喜んでいたけれども
「面白かったから今回は許すわ」
「そりゃどーも」
「深白ちゃん!」
私の目の前に立ち、キラキラした目でこちらを見ている
「あなたは敵対組織に攫われた悲劇のヒロイン
そしてあなたを連れ戻そうとする家の人たち
けれどあなたは敵対組織の若頭と恋に落ちる
自分の家か恋人かどちらを選ばなければならないあなた
なんて可哀想な子なのー!」
犬をなでるように、頭を撫でられている
それより今言われた言葉はひとつたりともあっていない気がする
「お袋俺の話聞いてたか?」
「聞いていたわよ、つまり深白ちゃんは悲劇のヒロインってことでしょ!」
「聞いてねぇやこれは」
「あの、私は攫われてもいませんし、恋にも落ちてません」
「そんなこと小さなことよ、これからそうなるに決まってるじゃない!」
小さくはないと思う…
もう咲夜をお手上げと会話に参加することをやめた
どうやら咲夜のお母さんに気に入られてしまったらしい