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893の妹は覚悟を決めます  作者: 白李
思春期
7/13

深白の価値

「深白はどこに行ったんだ!!」

「さあ?家出でもしたんじゃないですかー?」

「紅哉、お前はなにも知らないのだな」

「まあねー」


浦組の幹部会にて若頭の紅哉と組長の紅哉たちの父親が言い争っていた

というより一方的に紅哉が言われているだけである

だが紅哉はとくに気に止める様子もなく笑っている


「どこに行ったというのだ」

「誘拐か?」

「現在浦組にたてつく無謀な組織などいるのか?」

「いや、下克上を狙っているのかもしれない」


ザワザワと他の幹部が話していく


「しかし深白か…」

「あいつは浦組の公共物」


公共物ねぇ…あいつのことをそんなふうに思ってたんだなこいつら


「奪ったところで」

「代わりはいくらでもいるか」


バキッ

壁に拳がめり込む音がした

その音に幹部会が一気に冷え切る


「碧生落ち着け」

碧生の額には青筋がヒクヒクと動き、壁の穴は隣の部屋まであいている


「すまんな俺の部下が」

そう碧生を止めた紅哉ではあるがこちらも殺気を出して発言した者達に目線を送っていた

呼吸がしづらい

そこまで会議室は冷えきった


「深白が…俺の妹が浦組の公共物だと?

バカにするなよ、俺の所有物だ

誰に許可とってあいつを使おうとしてんだ?

それに俺の兄弟全てに手を出したら分かってるだろうな?てめえら」


紅哉は組長の方をみた


「親父、あいつに最近厳しかったんじゃねぇか?

明らかに傷が増えていた

そりゃ脱走もするだろう」

「…しかしあれぐらいは普通だろう

傷もすぐに治るものだ」


「へぇ、普通ねぇ」

組員をチラリとみた

皆姿勢を正す


「まあいい、深白は俺らで探す

誰も口出しも手出しも不要だ」


紅哉は貼り付いた笑顔のまま席を立った

そして出ていくまで誰も声をあげられなかった



「恐ろしい子だ」

組長がボソリと呟いた




「あぁイライラする!!

蒼生殴らせろ」

「2倍で返すがそれでも良ければ」

「やめる!」

紅哉は廊下で叫びながら歩いていた


「なんだよあいつら

深白を物みたいに言いやがって」

「間違ってはいないだろう」


深白が公共物とまで呼ばれるようになったのはいつ頃からだっただろうか


あいつがあの容姿で数々の大物政治家の元に潜り込ませ、弱みを握ってこさせたことは1度や2度ではない


年に見合わない表情と頭脳

これにより男たちは深白を信用する

それを見込まれ、浦組の幹部のために働いていることもあった


もちろん兄貴の許可を必要としていたが、余程でない限り兄貴も許可を出さないことはなかった


そしてほぼ確実と言っていいほど成果を上げて帰ってくる

いつしかあいつは便利な道具のように扱われるようになっていた


「間違ってるぞ蒼生

あいつは公共物じゃねぇ」


兄貴がニヤリと笑った

嫌なことを考えている時の顔だ


「俺の所有物だ」


深白は公共物の方が幸せだったかもしれない

厄介な男に捕まったものだ


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