家出少女
中高一貫校の受験戦争で殺伐とした空間を抜け、下校していると冬の冷たい風が肌に当たった
本来俺は1人で下校してはいけない身分なのだが、今日は1人になりたい気分だった
高校3年にして極道の若頭、命を狙われないわけでもない
けれど今は制服を着たただの高校生
その肩書きがあと数ヶ月ということにも少しだけ悲しみがある
それ以外にもおもうこともあるのだが
ふと今の季節に珍しく葉が散りきっていない木に目がいった
その木の葉が風に乗って落ちていく
木の葉を目で追うと少女と目が合った
少女というべきか、
俺の母校の制服を着ているということは中学生なのだろう
その中学生の息は荒くこちらに向かってくる
「お兄さん助けて!追われてるの!!」
俺の制服を掴み、目が怯えている
これは面倒事のようだ
「誰から?」
「お、お父さん…」
思春期での喧嘩か?
「お願い!私捕まったらまた酷いことされる!だから!!」
喧嘩の領域では止められていないらしい
よく見ればその子は冬にも関わらずブレザーを来ておらず薄着である
しかも切り傷が明らかに多い
少女の後ろに男どもがいた
その男を見ると少女は俺の後ろに隠れた
これは完全に巻き込まれたな…
「おい、そこの中坊
後ろにいる女をこちらに渡せ」
「はぁ…面倒だな」
「あぁ!?」
後ろに隠れた少女は震えている
これは少女を渡すわけにはいかないだろう
仕方がない
「無視してんじゃねぇよ!!」
拳が顔めがけこちらに降ってくる
その拳の勢いをそのまま流し、体が傾いた頃合いを見て、腹に足蹴りをいれる
仲間がやられたのをみて倒された男を回収し、他の男たちは立ち去っていった
「…もういなくなったぞ」
「ありがとう…お兄ちゃん」
少女は頭を深々と下げた
「じゃあ…私はこれで」
「待て」
立ち去ろうとする少女の肩を掴んだ
細い、栄養不足か
「どこか隠れ場所はあるのか?」
「…ありません」
「…俺の家に来るか?」
「え?」
俺でも言ってしまったと思った
誘拐だと間違われても仕方がない言葉だ
けど少女の反応は違った
「行く!行きたいです!!」
嫌悪感もなにもなくただ嬉しいという顔をしていた
「お前名前は?俺は珊 咲夜」
「私は浦 深白!」
本当に面倒事に巻き込まれたようだ