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893の妹は覚悟を決めます  作者: 白李
幼少期
3/13

小学生1

小学生の頃私は自分の枷について知った

自分の生い立ち、母の死の理由、そして私は紅哉の勢力を伸ばすための道具だと知った

近い将来私は誰かと結婚し子を作り紅哉の権力を揺るぎないものにするために生かされている

そう父から聞いた

それまでは自由にしていいと言われた

道具として生きることは自由なんてものではない

私は今も昔も鎖に繋がれた人形と同じなのだ

冷静に状況を判断しなければならない

私は小学校から今日は1人で帰っていた

いつもは安全のために翠兄さんと一緒に帰っているのだが、今日に限って低学年の私は授業が早く終わってしまった

念の為早くに終わったので1人で帰宅していると紅哉兄さんに連絡していたのは不幸中の幸いであった

学校から家まで歩いて30分小学生にしたらそれなりに遠い道のりだ

その長い道のりのなかゆっくりと黒色のワゴン車が近づいてきているのに気づかなかった

人気ない路地で視界を遮られ薬品か何かを嗅がされたと気づいた時には意識は飛んでいた



最悪だ

目が覚め今いる場所が倉庫だと分かった

動いていない機械に教室3個分の敷地の広さ以前はなにかの工場だったのだろう

そして男5人組、縄で縛られている手足、可愛いすぎる私

完全に誘拐だ、そうに違いない


「お嬢ちゃん起きたかい」

無精髭の30代ぐらいのおじさんがニタニタと嫌な笑いをしながら話しかけてきた

不機嫌極まりない

「見ればわかるでしょ、この低俗が

顔についてるその2つの目玉を洗ってから出直してきなさい」

おじさんはタコのように顔を赤らめた

けれどほかのおじさんは笑い転げていた

「お嬢ちゃんは度胸のある子だねー

さすがは浦組若頭の妹さんだけある」

浦組うらぐみの子供ってこと分かってるっていうことはおじさんたちは珊組さんぐみにでも雇われた人達ってことだ」

珊組とは浦組と敵対している組織だ

破壊的である浦組に対し、珊組は温厚的だ

敵対するべくして生まれた組織関係であるのだろう

しかし温厚な珊組が誘拐などそんな真似をするのか…?

「雇われた?違うね俺たちは珊組の一員さ!浦組の長女を手に入れたとあれば頭領もきっと喜んでくれる!きっとそうだ

そうに違いない!」

酒の入っているおじさんたちはまたも笑った

酔っ払いは面倒だ、自分のしている事の重大性も分からず感情のまま行動する

なるほど全体図が見えてきた

この人たちは珊組の下っ端で、出世をするために私を誘拐した

そうすれば自分たちの地位が上がると思って…迷惑な話だ

自分の出世のために人を誘拐するなんて…身勝手な話だ


「おじさんたちは珊組なんだ」

「そうだ!恐ろしいだろ!!俺たちの言うこと聞いておく方が身のためだぞ!」

「・・・」

「恐ろしくて口も聞けないか!最強の浦組というのは噂だけだったみたいだな、やはり珊組の方が格上だということだ!」

浦組の…本当の恐怖なんて少しも知らないくせして

「・・・なめるなよ」

「あ?」

「珊組の下っ端共が浦組を侮辱するな!

我ら浦組は圧倒的な力と暴力によって権力を伸ばし、誰一人として歯向かう者は許さない最恐の組織だ!!

小学生の私を誘拐し、威張ってるようなお前らみたいな格下など浦組の足元にも及ばない!!

その口を慎め愚者どもが!!」

「…うるせぇ!子供が生意気言いやがって!!」

男の手が落ちてくる

当たったら血を見ることになる

「さすがは俺の妹だ、小学生で浦組を語るとは…末恐ろしいよ」

「…遅いよ…紅哉兄」

倉庫の扉は開き少なくて20人はそこに立っていた

すべて浦組の…紅哉兄の部下だ

碧生兄は私を殴ろうとした男の手をとめ地面に投げ飛ばした

男は泡を吹き他の男たちはそれをみて顔が青白くなった



「碧生兄遅い」

「これでも全速力で来たんだぞ」

そんな顔色など知らない碧生兄は手の縄を解きながら申し訳なさそうに笑った

その顔には優しさがある

碧生兄に反撃を思いつくときにはもう縄はすべて解けていた

その反撃を私を抱えながら脚で裁き入口にいる紅哉兄のもとへ向かう


「怪我はないか?深白」

「紅哉兄、この状態見てそれを言う?」

腕と足には縄で縛られた跡がくっきりと残っていた

二週間は消えないだろう

その跡を見て紅哉兄の表情が消える

兄ではなく若頭としての顔だ

「…碧生あとは頼む」

「どれほどで?」

「深白の皮膚に傷を負わせた代償分」

「若頭のご命令のままに」

碧生は20人の部下と共に倉庫の奥へと進んでいった



碧生兄から交代し、紅哉兄に横抱きにされながら迎えの車内に入った

小学生の私が立っても頭が当たらない車は中に8人は乗れそうな高級車だ、価値は分からないから何がすごいのか分からないけど

後部座席に2人並んで座り私は前をみて話した

「拉致られたのは初めてだよ

可愛いのも罪だよね、誘拐されても仕方ない可愛いさって言うのも別に悪くないけど

怪我するのは嫌だな痛いし

けどまあ仕方ないよねこれが美貌に恵まれ産まれた宿命ってことだよね、これも私の罪だなー」

「深白無理しなくていいぞ」


車がゆるりと動き出した

高級車らしい静かな走りで私たちを運ぶ

この様子だと10分ほどで家につくだろう

紅哉兄は猫を撫でるかのような優しい手つきで私を撫でた

兄の顔をじっくり見ると心配そうな顔をしていた

そんな顔されると今まで我慢してきた熱いものがこみ上げてくる

不安から来る恐怖が無くなり安心からか目頭を熱くし涙を出させた

泣くつもりなどなかった

泣きたくなんかないのに…

「…怖かっ…た…あ…のまま…死ぬ…のか…と…思った…もう…兄…さん…た…ちに…会…え…ないと…思った…」

本音とともに次々と涙がでる


私は本当は泣き虫の弱虫だ、けれど浦組として舐められないよう身の丈に合わない言葉で自分を守っている

そうでもしないとすぐ泣いてしまうから

「翠が待ってるすごく心配してたから早く帰ってあげよう」

撫でられる優しさに安心し、小さく頷いた

家では私と同じ泣き虫の翠兄さんが、私と同じぐらいぐしゃぐしゃの顔で私を待っているだろうから

「深白どうだ?」

「もう寝たよ、翠と一緒に…

泣きつかれたんだろうな」

「あれだけの経験をしたんだ

よくあそこまで泣かずに耐えられたもんだ」

紅哉と碧生はある目的地までの長い廊下を歩いていた

深白は玄関にいた翠に抱きつくやいなや通じないような言葉でお互い泣きあった

怪獣並の声で泣いていたわけで家の中まで響きまた紅哉が2人を泣かせたと責められていた

「本当に俺は今回は何もしてねぇのに」

「いつも何かしらいじめる兄貴が悪い」

そうかねぇーと手を頭の後ろに組みながら悪びれるつもりもないように返事する


「まあ、けど俺以外があいつらをいじめるのは許さねぇけどな」

着いたのは家の地下室、つまりは牢獄だ

そこにいるのは深白を誘拐した5人組のうちリーダー格の1人

その他はあの倉庫ですべて碧生の手によって見るも無惨に殺された


「こんにちは あ、いまはこんばんはか

まあいいや、よく俺の妹をいじめてくれたな、それ相応の報いは受けてもらうけど

火あぶりがいいか?

なぶり殺しか?

皮でも剥ぐか?」

「兄貴それはさすがに…軽すぎる

臓物すべてゆっくり取ってそのまま放置からのショック死だろ」

「お兄ちゃんお前の考えが不安だわぁ」

紅哉は若干引きながらもそれでもいいなぁと言葉を漏らした



誘拐犯は小さく悲鳴をあげた

緊張からか喉が張りつき声が出せる状況ではない

「でもそれでは選択肢がないからひとつ救いの道を作ってやろう」

「優しいな兄貴は」

この絶望的な状況に希望がみえた

少しばかり目に光が宿る

「お前のところの若頭に連絡しろ、そしたら助けてやろう」

「そんなの無理です!一介の下っ端である私が若頭に連絡なんてできません!」

張り付いた喉を開き一気にまくし立てる

紅哉は心底蔑んだ目で誘拐犯を見ていた

「苦しんで死ぬか、連絡するかどっちだ?」

誘拐犯の首元には碧生のもつドスが向けられていた

「お前のところの若頭は人望ある人らしいじゃないか、運が良ければ繋がるんじゃねぇのー

日頃の行いの賜物ってやーつ」

飄々と明るく言っているが目は笑っていない


紅哉から自分の携帯を渡される

直通の番号は知っているが緊急時にのみかけてよいことになっている

そのため1度もかけたこともなければかけたという噂も聞いたこともない

最後の希望へと番号を押す

「5コール以内な俺も暇じゃねぇんだよ」

「1コール」

若頭は人望があり何より優しい人だ

「2コール」

一介の俺の電話にも出てくれるかもしれない

「3コール

けどもし電話に出られない状況だったら?

「4コール」

嫌だ死にたくない

「5コール」

若頭助けてくれ!!



「はい」

出た…やった、生きられる

「若頭!若頭!俺です!E班の岡田です!助けてください!」

「落ち着け、何があった」

少し空気をする、まずい空気だ

「浦組の若頭の妹を誘拐したんです!けど失敗しちまって、浦組の若頭に捕まっているです!!助けてください!若頭!」

「事情は分かった、近くに浦組の若頭はいるのか?」

若頭はやはり良い人だ、きっと俺を助けてくれるはずだ

「はい、います!」

「かわってくれ」

岡田は携帯を紅哉に渡した


「はーい変わりましたよ浦組若頭紅哉です

お前がそっちの若頭?優しいんだねヘマした部下を見捨てないんだ」

「こちらの部下が失礼しました

しかし殺すまでもないはずだ

現にそちらのお嬢さんは無事に保護されているのだろう?」

紅哉の眉がピクピクと動いた

顔を作られた笑顔のままだ

「すまないねぇ俺は妹に手出されて何もしないほど優しくねぇんだわ」

碧生がドスで首を掻っ切った


「…ゲスが」

「あぁ?家族に手出しておいてなんだ

その口の利き方は」

「やはり浦組とは分かり合えない」

「こっちもお前ら珊組とは分かり合えねぇよ」

「失礼する」

「ああ待て待て、電話させたのは嫌がらせだけじゃねぇんだよ」

ニヤリと笑った、イタズラを思いついた少年のように

「近日中にお前の組織は一気に危機的状況へ陥る

俺の手によってな」

「宣戦布告か、


正々堂々と受けて立つ」

電話は切られた


血で汚れた碧生を横目にみ、目を閉じた

これから先は深白には辛い思いをさせてしまうかもしれないな…


次の日深白父親から自分の存在理由を聞かされる

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