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  作者: りんご
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-7-

「うむ、ではまずは嘘つきの死体を集めてこい。手段は問わない」

 この僕の命令に王家の軍隊は素直に従った。

 昼も夜も嘘つきを見つけ出し、殺していった。でも誰が嘘つきか分からないのでほとんど手当たり次第殺していった。

 殺す場所は塔の近くと決まっていた。長い距離、ベタつく物を運べないし、それは一度くっついたらなかなか離れなかったからだ。

 国民達を殺すと3人に2人の割合で嘘つきがいた。

 兵隊は僕の指示どおり、塔に嘘つきの死体を張り付けていった。

 すると僕の隣で誰かが言った。

「あのベタつく死体に直接釘を打たなくても、いつぞやのハシゴ付きの板を死体に貼ってゆけばいいのではないですか?」

 なるほど、と僕は思った。刹那、新たな考えが僕の中に広がった。死体の一体一体にハシゴ付き板を貼ってゆけばいいのではないか、と思ったのだ。こうすれば死体を貼りつけた時点で、貼りつけた死体のハシゴに乗り移り、更に作業が可能となる。

 皆にその旨を伝えると、確かにそれはよいアイデアだ、という声が広がった。僕は鼻の穴をふくらませ。得意げに「では作業にとりかかれ」と号令を下した。

 嘘つきの死体の一つ一つにハシゴ付きの板が貼られてゆき、それは正確に一本のハシゴが垂直に伸びてゆくように貼られていった。

 ここまでくると、もう僕には確信があった。

 これは絶対に成功する、と。

 大いに自分の中の誇りが満たされてゆく気がした。

 傍らに置いた歴史書に僕は目を通した。すべてこれは塔に挑んだ王たちの失敗の記録だ。はじめてなのだ。恐らく成功するのはこの地上において僕がはじめて。そして、ようやくあの塔の頂上に何があるか分かるのだ。

 すると、塔の頂上から、ウォゴオオオオオ、という音が聞えた。

 はじめて自分の下に辿りつきそうな人間がいて、嬉しいのだろうか、悲しいのだろうか、音の主が神なのか悪魔なのか僕には分からなかったが、その声は、どこか焦っているように聞えた。

 塔を登る兵士はどんどんハシゴ付きの死体を貼りつけてゆく。

 僕はなにか自分が神の領域に踏み込んだ感覚さえ覚えていた。

 なのに、と僕は思い、僕をとりかこむ大臣達の口をみた。彼等は訳の分らぬ声で僕に語りかける。

「ワアァアアアアレェテェアアオオオシイ・ミンノオオオォオナンタルコトォオオオオオオ」

 ああ、五月蠅い、と僕は思った。

 僕がこんなにも塔を制覇する感動に浸っているというのに、塔以外のことに口に出す連中が日増しに増えていっているのだ。こいつらは王というものが何であるか、何も分かっていない。

 こんなにも素晴らしい事が目の前にあるのに。

 ずっと雑事ばかりを僕に言い聞かす。

 本当に、馬鹿なんじゃないのか?


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