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まずは本当に嘘つきが死ぬと硬くなり、酷くベタつく何かになるのか実験がとりおこなわれた。各村々を回り、村で嘘つきと目されている物を調査し、その人々を殺してみたのだ。
すると、確かに死体は硬くなり、更に酷くベタつく物に変化した。
試しに普通の人々と正直者を殺してみたのだが、彼等に特に変化はなかった。
世の中には不思議なことがあるものだ。
そんなことを僕は思った。
とにかく、僕はこの死体を使ってどうやって塔を攻略するのかアイデアを王家お抱えの学者に尋ねた。だが、学者はおかしなことをいった。
「こんなことをやるべきではありません。いくら塔のためとはいえ、これはあまりにも人道に外れております」
僕は学者の顔をまじまじとみた。
人道とはなんぞや。そもそも「塔」のためとはいえ、とはどういうことだろう。この世界に「塔」の頂上を覗く以上に大切なことなどあるのだろうか? それは何よりも優先されなければならないことだろうに。この愚か者は王の仕事をまるで分かっていない、と思った。すると、不思議と男の声が遠ざかっていった。
「ジィンデゥゥウウウウニィイ・ハズカテェルウウウウウ」
もはやこの学者が何をいっているのか僕には分からない。分からないものは気にする必要はない。僕は気を取り直し、意見を募った。すると学者の中の1人がいった。
「その嘘つきの死体が硬くて粘着性がある、ということであれば、直接塔にくっつければいいのでは……。そして、その死体に釘を打ちつけ、ハシゴをかける……。なんていうのは、どうでしょう?」
その学者の言葉のあとには長い長い沈黙があった。
そして、そのあとはじけるように議論が活発になった。
僕はこう思った。
なんて素晴らしいアイデアなのだ、と。
体中の毛穴が開き、全細胞が沸き立った。
これは興奮という感情なのだ、と僕には分かった。