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僕はある必勝法を思いついた。
絶対に塔に登れる自信があった。
まず、木の板を用意する。そこにハシゴを固定する。木の板ならば釘は通る。そこで、次にその木の板を塔にたてかけるのだ。
僕の指示で諸侯と民衆たちがせわしなく動く。皆汗を流している。皆で何かに向かって頑張る姿は感動的だと僕は思った。
まぁいい、それはいい。とにかく僕の号令でハシゴ付きの木の板が塔にたて掛けられた。次に、このたて掛けられた板を固定するために円柱をぐるりと囲むように縄で縛るのだ。この縄は、以前ひいお爺様が馬や牛で塔を引っ張った時に使った物だった。
一本の縄がぐるりと円柱を一周し。ハシゴ付きの板が固定された。
僕の周囲から歓声が沸き上がる。
僕も鼻の穴をふくらませた。
だが、全然高さが足りない。目算で測ってみても、少なくともこのハシゴ付き板が100個以上は積み重なっていかないと無理だ。
でも、僕は自分のアイデアを誇りに思いたくて、臣下の一人に「とりあえず出来た所まででいいから登ってみろ」といった。
臣下は青ざめた顔つきで「はっ!」とハキハキとした返事をした。
僕はその姿をゆったりとした椅子に座りながら眺める。
臣下はハシゴに手を伸ばし、少しずつ上へ登ってゆく。その姿を見ながら僕は思った。あと同じ事を100回やればきっと塔の頂上に辿りつくに違いない、と。ついにハシゴの最後まで臣下が登りきったところでハシゴ付きの板が僅かに傾いた。一度傾くと、それはもう止められなかった。コンマ数秒ごとにハシゴ付きの板は傾き続け、ハシゴを登った臣下は、あっというまに地面にぶつかり、グチャという音と共に辺りに血をまき散らし、無残な死体と成り果てた。
僕はそんな臣下がまるで壁にぶつけられたトマトみたいだな、と思った。
とにかく、僕のアイデアは失敗である、ということは分かった。
でも僕はそんなことでへこたれる王ではない。一度や二度の失敗など誰にでもある。この方法が有効ではないということが分かっただけでもよかった、と僕は思った。