10月24日 ①
『アタシは・・・・・・アタシはさ。昔からずっとアンタの事が好きだったの。アンタを追っかけてここまで来るくらいに。・・・・・・ずっと、ずっと好きだった』
ほの寒くなりつつある秋の夕焼け空の下、アタシは傍らの少年に向かってそう告げる。彼が神代原という町で一番思い出深い場所だと言った、この高台で。
朱に染まったアタシの頬は、周囲の紅葉と空の赤さに紛れて、きっと彼にはわからない。彼の顔も、眼下にある町と川をただ眺め続けるアタシにはわからない。
視線を動かさないようにして、アタシはずっと返答を待つ。柵から身を乗り出すようにして、目の前の景色を見ようとした。
彼の顔は見られない。見てしまえば、その先の言葉を想像してしまうから。見なければ、彼の言葉が出てくるまで、奇跡を待ち望んでいられるから。
そう、きっとアタシはわかっていた。次に彼が何を言おうとするのかを。歪んで捻れた関係に、どう終止符が打たれるかを。
でも、何もしないまま離れて行くのはイヤだった。だって、この為にここまで来たんだから。
・・・・・・そして、彼の口から言葉が発せられる。ゆっくりと、本当にゆっくりと発せられた言葉は、やっぱりアタシが予想していた答えだった。
――赤が入り交じるこの場所で、アタシの物語はこの時確かに始まったんだ。そのときの情景を、その後にかけられた言葉を、その日のすべてを覚えている。
アタシはその日、子供の頃からずっと好きだった人に、振られたんだ。他の誰でもない、自分自身のせいで。
そうして、神代原という場所での本当のアタシの物語が始まった。一人の少女が生まれ変わる、これはそんな物語。
でも、その一番初めが失恋した所からだなんて、本当にどうしようもない。
・・・・・・まあ、アタシらしいと言えばアタシらしいんだろうけど。