一章 元オッサン異世界で初めての友達(人外)ゲットだぜ!
落ち着いたヤモリ神と俺は話をした。
話に内容は、あの手紙を俺が読んだ時点でヤモリ神を使役する権利がエストワールから俺に既に移っている事。
生成魔法は神のみ使える魔法で尚且つエストワールしか本来は使えない事。
そしてどれだけアイツがアホ神なのかの愚痴を延々聞かされていた。
心底このヤモリ神が不憫になっていたがハッキリとさせておかなければならない事がある。
「お話は分かりました。どうやら貴方を使役する権利が私に移っているそうですが貴方はそれで良いのですか?貴方が自由を求め、私が使役の権利を放棄出来るのであれば放棄してもいいですよ。」
俺がそう言うとヤモリ神は少し考えた様子だったが直ぐに口を開く。
「私は主神と御友人であらせられる貴女様の事をあの方と同類だと思っていたのですがどうやら私の勘違いのようです。貴女様は私を使役する権利を放棄する事も出来ますが私は貴女様のお側で微力ながら御守りしたい、そう思っています。」
おっ、どうやら俺はヤモリ神に認められたらしい。
俺と話をしてる最中にポソりと小声で[この人、マトモだ。]と言ったのが聞こえたしな。
「分かりました。こちらからも宜しくお願いしたいです。但し使役するのではなく友人に私はなってもらいたいと思っています。当然貴方の言葉遣いも友人としてもっと砕けたものを望みます。」
「.....分かった。貴女がそう望むならば私は従う。」
ヤモリ神が納得したように頷きながら返事をした。
これで解決したな。おぉそうだ、もうひとつ聞かなければ。
「貴方はその姿から変わることは出来ないのですか?その姿のままでは日常に差し障りがあるのでは...」
ヤモリが友達ってのはちょっとな...。そう思い聞いてみたところ
「我はこの姿で主神に造られた...しかし貴女が生成魔法を使えるのならば違う姿に出来るだろう。貴女が我をどんな姿にしたいか想像してもらえれば想像した姿を貴女の生成魔法を利用して我自信の魔力を使い変化できる。...但し我は人間の姿にはなれない。神で人間の姿になれるのは上位神だけだ。」
なるほど。ならば他の動物には変えられるんだな。
「わかりました、やってみましょう。」
そう言い、俺は想像する。俺の前世でも既に死んでいた可愛がっていたペットの姿を。
「想像できたら右手を差し出せ。後は我自身がやる。」
俺が右手を差し出すとヤモリ神が右手の下に来る。
ヤモリ神がなにやらブツブツと言い始めると俺の体の中から何かが抜けていく感覚があり、ヤモリ神が光り始めた。
ヤモリ神を包む光が一層強くなり、その後徐々に光が消えていく。
ヤモリ神だった奴が俺の目の前に座っている。
俺がかつて飼っていた猫の姿で....
俺はヤモリ神だった猫を思わず抱き締めていた。
また会えるなど思わなかった。
「くっ苦しい!抱き付くのは構わないがもう少し力を弱めてくれ!」
すまねえ、感極まって強く抱きすぎた。
腕の力を弱めて俺の腕の中に居る猫を見る。
間違いなく俺が可愛がっていたアメリカンショートヘアだ。
俺は猫を机の上に下ろし話し掛ける。
「貴方は友人であり、私の家族です。私の名はジュエルです。」
そう言うと目の前の猫が目を細めながら答える。
「我の名はリーザだ。我かお前の命尽きるまで側に使えよう。」
俺が手を差し出すとリーザが顔をすりよせて来る。
後はオヤジ様の了承だな。
「リーザ、とと様の了承を貰いましょう。」
俺はリーザを抱き上げオヤジ様が居る工場へ向かう。
外に出るともう夕方になっていた。家に入る前は昼間だったのだが随分と長い時間リーザと話し込んでいたようだ。
工場の扉を開き、リーザと共に工場に入る。
キチンと整理整頓された工場の中にはオヤジ様の弟子が5人とオヤジ様が居る。
どうやらオヤジ様は今細かい仕上げ仕事の最中で俺に気付いて無いようだ。
弟子の一人が俺に気づき近づいて来る。
「ジュエルちゃん、どうしたんだい?...なにか...ダグラスさんに用があるようだね。」
オヤジ様の弟子の一人で茶髪で身体はひょろ長くメガネをかけた青年が俺が胸に抱いているリーザを見ながらそう言う。
「はい。エメリッヒさん。」
この青年の名を言いながら返事をするとエメリッヒは猫を抱えてる俺の姿を見て理解した様で
「大丈夫、僕はジュエルちゃんの味方だよ。ダグラスさんを呼んで来るから少し待ってて。」
エメリッヒがオヤジ様の方に行く。オヤジ様が俺に気付き一瞬驚いている様な顔になるとエメリッヒが直ぐにオヤジ様と話を始める。
頑張れエメリッヒ。上手くいったら胸を揉ませてやるぞ。リーザの腹だがな!
オヤジ様がなにやら頷いているぞ、どうやらエメリッヒが上手く説き伏せた様だ。
オヤジ様が席を立ち、少し足を引きづりながら俺の元に来る。
俺の前に来ると俺と目線を合わせるためにオヤジ様がしゃがみ語り掛けてくる。
「ジュエル。エメリッヒから聞いたがお前はその猫を飼いたいのか?」
「はい、とと様。...リーザを飼っては駄目なのでしょうか?」
俺が不安そうに言うとオヤジ様が首を左右に振りながら
「駄目では無い。お前がしっかりと猫の世話が出来るのなら認めよう。」
おぉ、やったなエメリッヒ!お前のおかげですんなりオヤジ様が認めてくれたぞ。
「ありがとうございます!とと様、エメリッヒさん!」
オヤジ様の後ろに立ち、穏やかな笑顔で見守るエメリッヒにもお礼を言う。
「ジュエルちゃん、良かったね。猫の世話をしっかり頑張るんだよ。」
エメリッヒはそう言いながら手をヒラヒラさせ自分の机に戻る。
「そろそろ夕食の時間だ我々も食事に行くから先にセリーヌの所へ行きなさい。」
「はい。分かりました。」
俺はオヤジ様にそう言い工場を後にした。