三章 銀色の乙女、ヴェルディットから爆弾発言をされる。
アルテリア国のリュドレイクに着いてから既に3日が過ぎようとしています。
「ジュエル先生!!本当に魔導車を私がお借りしていても良いので!?」
「ええ、大丈夫ですよ。コルサコフ魔術学園に通っている間は私には必要無いですから。」
ジョルダーノさんに自動車の運転を教えると思ったより飲み込みが早くて既に普通に運転が出来るようになっていた。
遊びで運転免許証のようなものをジョルダーノさんに作ってあげると、それに大袈裟な位感動し、さん付けから先生に敬称がパワーアップしてしまいました。
どうやら明日からの城への登城は魔導車で行くらしく、ジョルダーノさんはニコニコしながら上機嫌だ。
やはり世界が違っても男はいくら歳を取っても子供と同じと言うのは変わりませんか...
皆さんで今夕食を食べているのですがヴェルディットさんが徐に喋り出す。
「そう言えばジュエルお嬢ちゃん、結婚する気はあるのかの?」
その言葉を聞き私が喋り出す前にルリシスちゃんとシルビアが反応して答える。
「だ、ダメだよヴェルディットさん!!まだ私達は成人もしてないのに!?」
「その通りです!!まだ早すぎます!!」
「なんじゃ、過保護だのう...」
うーん、結婚ですか...。
前世の男性の時は趣味に走りすぎて嫁候補がいても釣った魚に餌をやらない状態が余りにも続いた為、嫁候補が出来る度にそれが原因で捨てられましたからね。
今生ではまともな人生を送りたいですよね~。
「そうですね。結婚願望はありますが...相手に寄りますね。あ、貴族の方は結婚相手から除外されます。」
ヴェルディットさんとジョルダーノさん、ヴァルザスさんが驚いた表情に変わる。
「なんでじゃい!?」
「なんですと!?」
「どういう事だ!?」
えーと、なぜお三方がこんなに驚いているか分かりませんが理由を言っていた方が良さそうですね。
「正直、貴族の方の前では緊張するのでノビノビ生活できる自信がないのですよね。それに私は庶民ですから自分の身の丈にあった方のほうが良いかと...」
「...ジュエルお嬢ちゃんは一応貴族だぞ?」
ヴェルディットさんが意味の解らない事を言ってきた。
「はい?私が貴族!?」
「そうじゃよ、お嬢ちゃんはダグラス君とセーリヌ殿の娘じゃろう?セリーヌ殿はイセリア共和国の有力貴族の娘の筈だ。ほれ結婚式の日にセリーヌ殿の両親が来ていただろ。」
「確かにいらっしゃってましたね...」
普段からやたらと身なりの良い人達だなとは思いましたが。
「セリーヌ殿の両親からエンブレムをお嬢ちゃんは受け取っただろう?あれはお嬢ちゃんを家の身内と認めると言う意味があるんじゃよ。」
もらったエンブレムにはグリフォンがあしらわれていて、そこからもらって私の魔導具の識別エンブレムもグリフォンにしたのですよね。
それで識別エンブレムをグリフォンにしましたとはは様と時々遊びに来られていたお祖父様に言うととても喜んでいた訳ですね...。
...それじゃあ本当に私は貴族じゃないですか!?
知らなかった...て言うか教えておいて下さいよ、とと様はは様..。
私が深く考え込んで居るとヴェルディットさんが場をまとめ出す。
「ま、確かにジュエルお嬢ちゃんに結婚の話は早かったかの。時間はまだ幾らでもある、よく考えて相手を選ぶのじゃよ。」
「ええ、そうですね。...そうします。」
じいさんがジュエル達を連れて帰って来て数回繰り返された会議も終わりかけていた。
「俺にあのジュエルの結婚相手はキツすぎる...。あんなのと結婚したら周りの貴族共の嫉妬で面倒な事になるのが手に取るように分かるぞ。」
「ふむ、ならば仕方ないのう。」
「それでヴェルザス、今目当ての娘などはいないのか?お前ももうすぐ19歳で婚約者がいても良い歳だぞ。」
親父にそう言われ俺は考える。
うーん、今のところはいないな。しかしここでいないと言えば確実に裏で動きやがるからなこの糞爺共は...そうだ!!
「ルリシスが気になる...」
そう言うとじいさんがニヤニヤしながら「ほぅ、ルリシスちゃんか!?お前も見る目があるじゃないか!」と俺の肩を掴んでくる。
じいさん、ルリシスが貴族では無いことを忘れてるんじゃ無いだろうな...
「しかしあの子は、貴族じゃないぞ。身分の差で無理じゃないのか?」
ニヤニヤが止まらないじいさんは直ぐに答えを返してくる。
「身分なんてクソ喰らえじゃい!!あんなもの勝手に人間が作ったものではないか!」
じじい、すげえことをさらりと言いやがったぞ...。
親父の方を見ると親父も少し表情を綻ばせながら
「俺も良いと思うぞ。身分の違いなぞお前は気にするな。俺も元々同じ人間同士が生まれが違うだけで身分の上下があるのはおかしいと思っていたのだ。それにルリシスを小さな頃から見ていたこのオッサンがお前の結婚相手に良いと思うのならば俺が反対する理由は無い。このオッサンは人を見る目は確かだからな。」
「おぉ、ジョルダーノ!!立派に成りおって!!お前も貴族なんぞつまらん物を辞めて....ほご!?」
「オッサンみたいにいきなり投げ出せるか!!!!オッサンのせいでどれだけこの国が混乱したのかそのボケた頭に刻み付けてやろうか!?」
親父がじいさんの頭を片手で掴みながらぶちギレ始める。
親父...あんたらやっぱり親子だわ。
じいさんに堪え性が多少付いたのが親父だな...根っこはほぼ同じだわ...。
親父がじいさんに説教を始めたのでとばっちりが俺に飛んでくる前に逃げることにするか。
「じゃあな!!じいさん、親父!!俺は用事を思い出したぜ!!」
「まて!!ヴァルザス!!話はまだ終わってないぞー!!」
親父の叫び声が木霊する中、俺は急いで逃げる。
取り敢えず俺の婚約者の話はルリシスを使って逃げるか...