三章 銀色の乙女、ヴェルディットの実家にびびる。
リュドレイクに到着しセリアさん達とお別れした後に私達はヴェルディットさんの家に訪ねる事になった。
しかし、リュドレイクは大きな街ですね~。
アルセンスが小さく見えます。
2階建等は当たり前で3階建もちらほらありますし、街道を歩いている人の数も多いですね~。
ルリシスちゃんはキョロキョロと窓から外を眺めています。
「うわぁ~、大きな街だね!!!」
「ですね!!でも私はリーンベル位の方が好きですよ!!やはり都会は人付き合いが希薄に成りがちになりそうですからね。」
「その通りかもしれんの!ここは大きい街だからリーンベルほど人付き合いは濃厚では無いからな。」
「私はジュエルの居る所ならば何処でも大丈夫です!!」
各自思い思いの事を口にしているが、やはり魔導車は目立つ様ですね。
安全のためにゆっくりと走っているのですが歩いている人の皆がこちらを凝視している。
うーん、やはりこの世界に自動車はまだ早かったですかね?
子供が走って追いかけて来ているので窓を開けて声を掛ける。
「あまり走ってると転けますよ~!」
「ねえ!!これなに~!?」
「これは馬の要らない馬車みたいな物ですよ~、転けないようにね~。」
手を振る子供に同じく手を振り返し、走り去る。
リーンベルの時はまたダグラスさんの娘が変な物を作ったって位の反応だったのですが。
リーンベルの人達が私に慣れすぎてしまっているのでしょうね。
「そろそろ俺の家の近くじゃな!!久しぶりじゃわい!!」
ヴェルディットさんにそう言われ周りを見るがなんと言いますか高級住宅街のような立派な建物が多い場所の様なのですが...
「本当にこの辺りなのですか?」
私にそう言われ少し不思議そうにヴェルディットさんが答える。
「そうじゃ?..ああ、なるほどな!!家に着けばわかるぞい!!」
私達3人から不安そうな視線を感じたのかそう答えたヴェルディットさん。
暫く高級住宅街を走るとヴェルディットさんが[ここじゃ!!]と言ったので魔導車を停めヴェルディットさんの家だと言う建物を見る。
....えーと、何坪あるのでしょうか?この家...。
門の奥の方に広い中庭があり、その更に奥にとても立派で美しいまるでホーエンシュヴァンガウ城の様な建物が見える。
「...ヴェルディットさん本当にここなのですか?」
そう言うと目が点になっているシルビアとルリシスちゃんが私の言葉を肯定するように頭をこくこくと上下に振っている。
「そうじゃよ!?じゃあ、我が家に突撃じゃー!!」
ヴェルディットさんが叫びながら勢いよく城の様な建物を指差す。
うん、もし違ったらヴェルディットさんを犠牲にして全力で逃げよう...
開いている扉を通りヴェルディットさんの家らしき豪邸に魔導車で侵入する。
本当に広い中庭ですね...庭で定常円旋回が余裕で出来ます。
庭をゆっくりと走り抜けて行く。
使用人らしき人達が私達の方を見ながら首を傾げている。
大きな玄関の前に着き、私達は魔導車から降り大きな屋敷を眺める。
「近くで見ると更に凄いですね...」
「ホントだね....」
「こんなに大きな屋敷に近付くのも始めてです...」
アルネは大あくびをし、リーザは頻りに尻尾を振りながら空を見上げ鼻をすんすんとさせている。
いいですね、あなた達は...こんなことでは緊張しそうに無いですからね。
「さあ、こんなところにいつまでもいないで中に入ろうかの!おーい、俺様のお帰りだぞー!!!」
ドアノッカーを勢いよく叩きながらヴェルディットさんが叫ぶ。
暫くするとドアが開き初老の執事風の男が出て来たのだがヴェルディットさんの顔を見るなり驚いた顔になり口を開いた。
「旦那様!!!ようやく、ようやくお帰りになりましたか!!この日を私は待ちわびておりましたぞ!!!」
初老の執事がヴェルディットさんに抱き付き、じじい同士の熱い包容を困った顔をしながら受け入れているヴェルディットさんが初老の執事に喋る掛ける。
「久しぶりじゃのう、ウィリアム!!詳しい話は後でな!屋敷の中に入っても良いか!?」
ウィリアムと言う名の執事がヴェルディットさんを包容から解放し、自分の目に溜まった涙をハンカチで拭き取る。
「ここは旦那様の家ですよ!!どうぞ皆さまもお入り下さい!!浴室も常に使える様にしていますので旅の疲れを癒してくださいませ。」
ウィリアムさんに屋敷の中へと案内され応接間の様な部屋に通される。
屋敷の中も豪華絢爛できらびやかな調度品がセンスよく配置されている。
掃除も屋敷全体に行き届いているようで埃一つ無い。
「では、私は若旦那様をお呼びして参ります。」
「うん?今日は息子殿は休みか?」
「いえ。今日は屋敷の執務室で書類仕事です。」
「じゃあ、頼んだぞ。呼んできてくれ。]
ウィリアムさんが一礼した後に部屋から出ていく。
私とルリシスちゃん、シルビアはソファーに仲良く腰掛け固まっているが、ヴェルディットさんは向かい側のソファーに堂々たる態度でどかっと深く座っている。
「そう言えばリーザとアルネもこの部屋に入ってますが大丈夫なのでしょうか?」
ちらりと床に伏せて寝ているアルネとちょろちょろ部屋の中を見て回っているリーザに目をやりながらヴェルディットさんに聞く。
「うむ、大丈夫だろ。俺が許す!!」
がっはっはと豪気に笑うヴェルディットさん。
こそこそと小声で三人で話す。
「ヴェルディットさん、本当にこの屋敷のご主人様の様ですね...」
「うん...びっくりだよね。失礼だけど貴族とは思えないくらい気さくな人だしね...」
「只者では無いと思ってましたが想像していた事より大分斜め上でした...」
女性陣三人で失礼な話を小声でしている最中にドアがノックされる音が聞こえる。
「おいよー。」
ヴェルディットさんが気合いの抜ける様な返事をするとドアが開き、黒髪だが白髪混じりの背の高いすらりとした中年男性が苦虫を潰した様な顔で入ってきた。
「おぉ!!ジョルダーノ!!久しぶ...ぶほぉ!?」
ヴェルディットさんが久しぶりの息子らしきジョルダーノと呼ばれた男性から見事なリバーブローをくらい悶絶している。
「何が久し振りだ!!!この放蕩オヤジ!!!自分の仕事を俺に押し付けた挙げ句長い間音信不通で逃げ回りやがって!!!表に出ろや!!!」
私達が急な出来事に固まっていると、ヴェルディットさんが悶絶から復活しはじめ語り出す。
「ぶふぁ、と、取り敢えず細かい話は追い追いするから落ち着けジョルダーノ!」
開いていたドアからもう一人の若い男性が入ってきた。
「父さん、取り敢えずじいさんの話を聞いてみましょうか。追い出すのはその後でも良いのでは?」
「むぅ...そうだな。クソオヤジのお客さまの目の前だしな。君達、このオッサンと私は深く話し合わなければならないことがある。取り敢えず旅の疲れを癒すために風呂に入りなさい。」
烈火の如く怒っていたジョルダーノ様からそう言われ、リバーブローによるダメージで方膝を付いているヴェルディットさんを見ると私達を見ながら頷いている。
「では私が案内しましょう。」
ウィリアムさんが私達を浴室へ案内してくれるらしい。
部屋から出る前にヴェルディットさんの方へ振り返ると右手の親指をぐっと立ててニカッと笑う。
ヴェルディットさん...息子さんの怒りに油を注ぎますよその行動は...