三章 エレーゼと銀色の乙女の出会い。2
私達を助けてくれた冒険者達もアルテリア国の首都、リュドレイクが目的地で馬車を壊された私達をリュドレイクまで同行してくれる事となった。
彼等が乗ってきた魔導車と言う馬の要らない車に乗せてもらえるようになったのだが、恐ろしく速い。
運転しているジャエルと言う名の少年は私達が恐ろしがっている事に気づいてくれたらしく途中から速度を落としてくれた。
魔導車と言うものがクエンティド王国には普通に走っているのか?と尋ねると、この魔導車は第一号でまだこの一台きりだと言う。
ふむ、この魔導車を作った人物に会いたいですね...量産できれば世界が変わりそうです。
と言うかこの魔導車を作ったのはこの仮面の少年なのでは?
作った人間ならば運転出来て当たり前ですし、他の人間は運転が出来ないようですから...
話を聞けばハイエルフのシルビアの主人もこのジャエルだと言いますし、この少年はいったい何者なのでしょう。
仮面を被っている理由は幼い頃に酷い火傷を負ったとの理由らしい。
ふむ、火傷などで差別されていたのならばもっと心がひねくれていても良いのですがジャエルは全くスレてはいないのですよね。
もしかして身分を隠すために素顔を隠しているのでは...
今日はリュドレイクには間に合わず途中で夜営することになった。
夕食は期待してはいなかったのだがジャエルとシルビアが作ったシチューはとても美味しくてたくさん食べてしまった。
普段はあまり量を食べないので従者が驚いていたが、シチューを口にすると納得したらしく頻りに頷いていた。
食事が終わった後に少しジャエルを試してやろうとさりげ無く私の胸をジャイルの腕に押し付けたり、ちらりと谷間が見えるようにしたりしたのだが反応が芳しくない。
と言うより全く興味が無いような反応だ。
私は自分の容姿に自信があったのだがこうまで無反応だと心が折れてしまいそう...
少し落ち込んだ心を落ち着かせるために周囲を見ているとルリシスとシルビアが私の方をチラチラ見ながら小声で話をしている様子を見る。
私がジャイルの事を気になっているのがバレてる見たいですね。
ふむ、攻め手を変えて皆が寝静まった頃にジャエルの素顔を確認しましょう。もしかすると私の婚約者に相応しい御方かもしれないですから。
その上、この者を私の結婚相手にすれば奴隷であるハイエルフのシルビアも一緒に私の元に来ますからね。
ジャイルの側で寝るのはシルビアに阻止されたため、魔導車の中で眠る真似をすることにする。
ルリシスと他愛の無い話を少しした後、旅の疲れのためかルリシスはすぐに寝てしまった。
私も暫く眠った振りをしよう。
魔導車の中で数刻たっただろうか、魔導車の中から外を伺うと私の騎士達は寝ずの番に立って居るが意識はキャンプの外に行っているために大丈夫だろう。
ヴェルディッドは焚き火の側で座りながら寝ている様子だし、シルビアとジャエルは深い眠りに入っているようだ。
ルリシスも勿論眠っている。
チャンスですね!!!
ドアをそっと開き音を立てないようにゆっくりと外に出る。
ジャエルはシルビアに抱き枕の様にされ眠っているが体の向きは外を向いている。
眠っているジャエルに誰にも気付かれずに近付けた私はジャエルが被っている白い仮面に手を掛け外そうとする。
「そこまでだ、エレーゼ殿。」
私は突然後ろから声を掛けられ驚きながら振り返る。
そこには焚き火の側で寝ていた筈のヴェルディットが腕を組ながら立っていた。
「あなたが本名を隠している様にジャエルにも仮面で素顔を隠している理由がある。これ以上の詮索は辞めなさい。」
ヴェルディットの喋る声でシルビアが起きたらしく眠そうな目を擦りながら身を起こしてきた。
「ヴェルディット様、どうかなされたのですか?」
「...いや、なんでもない。大丈夫じゃから眠っとけ。」
「はあ、分かりました。」
シルビアが私の顔を見た後にまたジャエルを抱き枕の様に抱き直し眠りに入る。
笑顔でシルビアとジャエルの様子を見守っているヴェルディットが言う。
「さあ、もう車に戻って眠りなさいサリアさん。」
私はヴェルディットに大人しく従うことにした。
何故ヴェルディットは私の本当の名を知っているのだろう?
その後私は魔導車の中で大人しく寝ることにした。
やはりヴェルディットと言う名は聞き覚えがある、明日でリュドレイクに到着するようだから着いてからお父様に聞く事にしましょうか。
朝になりそれとなくジャエルと話をするが昨日となんら変わり無い態度だった。
なるほどですね。これはジャエルの周りの人達がこのニブさを利用して秘密裏に近づいて来る人間に対処しているようですね。
何故こんな回りくどい事をやっているのかは分かりませんがいいでしょう。
この荷物を見るとすぐにリュドレイクから立ち去るのではなく長期間居る筈です。
無事にリュドレイクに到着した私達は街の入り口の門で別れる。
直ぐに迎えの馬車と共に私の家の執事が来たので馬車に乗り込み考える。
ふっふっふ、良いでしょう!ジャエルに興味が出てきました!!
調査をして私に相応しい御方ならば結婚の相手としてあなたをお迎えしますわ!!