序章 3 オッサン異世界に旅立つ。
俺が異世界の神様に説教を始めてどれぐらい時間がたっただろう。
俺と異世界の神様...面倒だからタヌ神でいいや。
俺とタヌ神はマブダチになっていた。
それはもう久し振りの親友に再会したようなマブっぷりだ。
説教の途中で話が脱線し、俺の趣味やタヌ神の嫌いな後輩の話等々くだらない話で盛り上がりさながらオッサン同士の飲み会のようになっていた。
コイツ、ガキに見えるが実はかなりオッサンの気配がする。
お互いこの暗い空間で地べたに座りながらアホな話ばかりした。
「いや~、いいな!、いいな~!。サバゲーにラジコンやネトゲ、君の話を聞いているだけで物凄くやってみたいよ~。」
「おう!面白いぜ!まぁ...俺が生きてりゃ一緒に出来たんだがな...」
俺もコイツと一緒に遊びたいと思ったのだが自分が死んでいた事を思い出した。
俺が生きてる間に会えてれば一緒に遊び倒せたのに非常に残念だ。
そう思っているとタヌ神が真剣な顔をしながら妙な事を言い出してきた。
「ねぇ、君。死ぬ前の君には戻れないけど僕の世界でもう一度変わりの人生を送れる事が出来るならどうする?」
タヌ神の世界で変わりの人生か...それも悪くは無いかもな。
おそらく俺が死んだ事で親には俺の生命保険が出るだろうし、整備工場も一緒に働いていた社員に任せていれば大丈夫だろう。悔しいがその社員は俺より優秀で仕事も出来るやつだったからな。元の世界で心残りが無いと言えば嘘になるが後悔は無い。
「それが可能ならそれもいいかもな...。」
「可能だよ。」
タヌ神が真剣な顔で直ぐに返してきた。
「元々初めから僕はそのつもりだったんだ。君が死んだのは僕の責任でもあるしね。それに君の世界には人間の数が多いから君の世界での転生は無理だと君の世界の神様が言っていた。」
「なら僕の世界で君を転生はさせると言えば、好きにしろと言われたよ。君の世界の神様にね。」
なるほどな。俺がタヌ神の世界で転生出来る下地は出来てるわけだ。
しかし、俺には気になる事があった。
「その話、俺にとっては魅力的だがお前にとってはどうなんだ?俺が死んだ責任を感じてからの提案ならば俺は転生しなくてもいいぞ。お前に責任はない。なんせ俺の自爆だからな。」
俺がそう言うとタヌ神は一つため息を付き語りだした。
「本音を言うよ、このままじゃあ君は消える。魂自体がね。...君と話をしたこの時間が僕にとって一番楽しい時間だったんだよ。神は退屈なんだ。今まで僕と萎縮せずに話せる人間は居なかったんだ。」
「だから僕の世界で僕と友達になって欲しい。それが僕の望みだ。」
そう少し諦めているようにタヌ神が言った。
そうか、コイツは寂しいのか。そう思うと俺は...
「いいぜ、お前の世界に行こう。」
タヌ神がビックリした様な顔で俺に詰め寄ってきた。
[いいの?僕の世界にはサバゲーやラジコンやネトゲは無いよ?]
「ああ!、でもネトゲは流石に無理でも俺がラジコンやエアガンを作る事が出来ればラジコンやサバゲーは出来るぜ。」
タヌ神の表情がぱぁーと明るくなり少し興奮した様子で
「そうだよ、そうだよね!!確かにネトゲは無理かもしれないけど他は君さえ居ればどうにかなるかもしれない!!!」
おぉ、なんかタヌ神がやる気になってるぞ。
「ネトゲの方は君のためにどうにかしてみる!」
「そうか、どうやらお前の中で方向性が固まったみたいだな。」
俺がそう言うとタヌ神が頷きながら再度確認してきた。
「...君は本当に僕の世界に来てくれるの?」
「ああ!、オッサンに二言はねえ!」
そう俺が即答すると嬉しそうにタヌ神が言う。
「ありがとう。とても楽しみだよ。あっそう言えばまだお互いに名前を名乗ってなかったよね、僕の名前はエストワール。」
「俺は鷹石 孝一郎だ。たぶん直ぐに名前が変わるんだろうがな。」
笑いながら俺も名乗る。
「鷹石 孝一郎...忘れないよ。僕の世界では僕しか知らないけど君が生きた証の名前は絶対に忘れないから!」
そう言いながらエストワールが右手を差し出して来る。
俺はその右手を握り言う。
「これから宜しくなエストワール。」
「こちらこそ宜しく、鷹石 孝一郎。」
「じゃあ孝一郎、君を僕の世界に送る準備を始めるよ!今から少し眠くなるけど次に目が覚めた時は僕の世界だ!」
「ああ!お前の世界でまた会おう!」
俺はエストワールにそう言い、徐々に来る眠気に身を委ねる事にした。