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車屋異世界転生記  作者: ライ蔵
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一章 元オッサン異世界でオヤジ様の後輩たちに会う。

 旅が始まり4日経ち今日は街の宿に泊まるのではなく街道沿いにある湖の近くでキャンプをすることになった。

 この湖はキャンプスポットとして良い場所らしく俺たち以外にも商人のキャラバン隊や冒険者のような男女のペア等がここでキャンプをするようだ。


 「ここにしましょうか。」


 セリーヌさんが馬車を止めた後、馬達を近くの木に手綱を括りに行く。


 「私達以外にも泊まる人がいるのですねー。」

 「ええ、そうよ。ここは湖の近くだから水にも困らないし昔からよく使われてる所なのよ。それに人数が多いと魔物も寄っては来ないから大体みんな自然とある程度固まって過ごすのよね~。」

 「そうなのですね。」

 「うん。今日は馬車の中で眠るのだけれどジュエルちゃんは大丈夫かな?」

 「はい!大丈夫です!」


 そう言うとセリーヌさんの笑顔が返ってきて「それじゃあ、火を起こして夕御飯の準備を始めましょうか!」と言いながら着々と準備をし始める。


 やっぱり馴れてるな~。やはりこの世界ではキャンプスキルは必須か。

 俺も早く覚えられるように気合いを入れて手伝いながら勉強しますか~。


 セリーヌさんの手伝いをしながらキャンプのやり方を勉強している最中に俺達の近くで陣取っていた冒険者風の男女のペアがこちらに近づいてくる。


 「やあ、あんた達もここでキャンプを張るみたいだな。」

 「うん~、いいないいな~!美味しそうなご飯の臭いがする~!!!」


 ちょっと見細く見えるが筋肉はガッチリとついている背の高い男と、見事な赤髪でやはりガッチリと筋肉のついている女性が笑顔で俺に話し掛けてくる。


 「その通りですがどうかしましたか?」


 少し警戒をしながらいつでも腰に下げてる剣を抜けるような体制でいるセリーヌさんが二人に尋ねる。


 「はは、そんなに警戒しないでくれよ。...まあ当たり前か。」


 頭をぽりぽり掻きながら冒険者風の男が言う。


 「実は俺達もここでキャンプを張る予定なんだがコイツに食料を全部食われて飯が無くてね。魚でも釣ろうかと思ってた所にあんた達がいい臭いを出し始めた所だったんだ。」


 冒険者風の男がコイツと呼んだ女性を指差しながら言うと女性は全く悪い事をしたとは思っていないらしく微笑んでいるままだ。


 「なるほどね。」まだ警戒を全く解いてはいないセリーヌさんがそう言うと「っで今作っているご飯を少し私達にも分けてくれないかな~て思って。勿論ただじゃないよ、夜は私達が寝ずの番をするからね~。」赤髪の女性が鍋の方をチラチラ見ながら言った。


 「...わかったわ、その代わりに条件がある。キャラバン隊の分も作るからあそこにいるキャラバン隊にも声をかけて。キャラバン隊が良いと言ったらあなた達の分も作る。」


 なるほど、人数が多ければ変な事をやりづらいだろうってとこか。


 「よし、商談成立だ!俺の名前はジャミル!最近はこの辺でも名前が知られて来ていると思うぜ!じゃあ、俺はキャラバン隊の方に声を掛けてくるぜ!」


 「あたしはキャロライン!よろしくね!あたしもジャミルとキャラバン隊を説得してくるね~。」


 手をヒラヒラさせながら二人ともキャラバン隊の方に向かって行った。


 「...ジャミルにキャロラインって言ったらダグラスの知り合いに迅雷のジャミルと呼ばれている若い冒険者がいたけれど本物かしら...」


 全くと言っていいほど信用してないセリーヌさん。そらそうだ旅の途中で簡単に信用してたら命がいくつあっても足りないよな。


 どうやらキャラバン隊と話がついたらしくキャラバン隊の商人風の男と一緒に二人が戻ってきた。


 「話はついたぜ!キャラバン隊はこっちでまとまって過ごしても良いってよ。」


 ジャミルと名乗る男が喋り終わった後、キャラバン隊の代表ぽい商人のオッサンが少し前に出て来て喋り始める。


 「貴女方が宜しければ私達は構いませんよ。何より固まっている方が危険は少ないですからね。っあ、夕御飯の作り手と材料はこちらからも出させてもらいます。私達の分までやってもらうのは申し訳ないですから。」


 少し考えてる様子を見せた後、セリーヌさんが口を開く。


 「わかりました。私はリーンベルから来たセリーヌです。今日はよろしくお願いします。」

 「....ちょっと待て、あんたリーンベルのセリーヌと言ったな。金髪でリーンベルのセリーヌと言えばもしかしてダグラスさんの知り合いじゃないか?」


 ジャミルがセリーヌさんの名前に聞き覚えがあったのか聞き返して来た。


 オヤジ様の名前がコイツから出るって事は本物の迅雷のジャミルってやつか?


 「ええ、ダグラスは私の知り合いよ。それがどうかしたかしら。」

 「そうだったのか!!いやよかったぜ!!ちょうどアルセンスに寄ったときにダグラスさん達に会ったんだが、あんた宛の手紙を預かって届ける途中だったんだ!」


 ジャミルが腰の荷物入れを探りながら喋り、手紙を取り出してセリーヌさんに渡す。


 セリーヌさんは手紙の封を破り手紙を開くと直ぐに読み始める。


 「確かにダグラスの字ね。...良かった~、軽い怪我だから心配するなって前の手紙はエメリッヒが急いで手紙を出した物だから詳細が無かった筈だがこちらは問題は無い。ただし、一緒にダンジョンに潜っていた冒険者の方が怪我が酷いから治療に時間が掛かる....と書いてあるわね!」


 手紙を読み終わり安堵で一息吐いている。


 「どうやらあたし達への疑いは解けたみたいだね~。でもセリーヌさんがあのセリーヌさんならそんなに警戒しなくても大丈夫ぽいのにね。本気を出されると私達じゃあ逆立ちしても勝てないだろうし。」


 少し笑いながら頬を掻きつつキャロラインが言う。


 「バカ、ちっちゃい子を連れてるからこその警戒だろ!...もしかしてその子がジュエルちゃん?」


 ジャミルがローブのフードを目深にかぶってセリーヌさんの側に居る俺に眼を向ける。


 「そう!この子がダグラスの子のジュエルちゃん!」


 セリーヌさんが俺を紹介するって事は大丈夫そうだな。

 目深にかぶっていたフードを脱ぎ挨拶をする。


 「初めまして、ジュエルと申します!ジャミルさんとキャロラインさんはとと様とお知り合いなのですか?」


 俺の姿を見てジャミルとキャロライン、そして商人のオッサンも固まる。


 「...なるほど。あのダグラスさんがあんなに心配してた訳がわかったぜ...。」

 「...だね~。そりゃこの子を連れてるならセリーヌさんのあの警戒は解るね...。」

 「確かにこの子はローブのフードで見た目を隠した方が良いですな...。」


 なんだそりゃ、3人揃ってまた珍獣扱いかよ!!

 不機嫌になり俺は少しむくれながらフードをかぶり直した。


 「うん。外ではフードはかぶっている方がいいと思う。」


 ジャミルがそう言うとみんなして頷く。


なんでみんなしてこんな反応を取るんだ?俺なんて髪の色が珍しいだけだろ!ルナリスさんやセリーヌさんのが見目麗しいぞ!ルリシスちゃんも可愛いし!


 ...いや、もしかして俺の認識違いで実は今生の俺は凄く不細工でモンスターなのか?時代によっても美人の要素は変わるからな...ましてここは異世界な訳だし...


 皆にフードをかぶっていた方が良いと言う理由を聞きたいが止めを刺されそうで恐すぎて聞けんわー。


 うん、気にしたら敗けだ。


 俺は密かにフードをかぶり続ける事を心に誓った。





 大所帯になったキャンプの夕御飯は無事に終わり、それぞれ思い思いの場所に散開していた。

 とは言っても大体は焚き火の近くに居るんだが。


 キャラバン隊の商人のオッサン達もとてもいい人達だった。リーンベルの方向に行く途中のキャンプ地によくここを使うらしい。


 焚き火の側でジャミルとセリーヌさんがこの後の行動予定を相談している最中だ。


 キャロラインは暗くなってきたので見廻りの準備を始めているようすだ。


 「そう言えばこれからどうするんだ?こちらはダグラスさんの手紙をあんた達に渡したから後はアルセンスに戻って事の顛末をダグラスさんに報告して終わりだがあんた達はリーンベルに戻るのか?」


 「...いえ、やっぱりアルセンスに行って直接ダグラスに会おうと思ってるの。やっぱり自分の目で状況を確認したいからね。」


 「そうか。では俺達と合流して一緒に行こう。一応俺達は現役の冒険者だしそちらの方が目立って良いだろう。」


 「そうね。私ももう現役では無いから私と気付かれなければ面倒ごとに巻き込まれかねないから。」


 「まぁ、気付かなかった相手がある意味可哀想だがな。俺だったらダグラスさんとセリーヌさんにだけは喧嘩を売りたくない。確実に勝ち目がないからね。」


 「ふふ、そんなことは無いわよ。あなた達の実力は時々噂で聞いてるわ。あなた達はもっと強くなる...それが現役の冒険者よ。私達はこれから実力はどんどん落ちていく...引退した冒険者は消え行くのみよね...。」


それを聞いたジャミルが首を傾げながら言う。


 「そうか?ダグラスさんにアルセンスで会ったときは確かに歳を取ったなとは思ったが現役時代以上の凄みを感じたぞ。これが守る物を持った者の強さか、って俺は思ったけどな。セリーヌさんも引退してからの方が守るべきものが沢山あるんじゃないのか?」


 ジャミルが真剣な顔つきで腕を組ながらセリーヌさんに語っている。


 「っま、どちらにしろ今の俺じゃあダグラスさんに仮に訓練をつけてもらっても全部攻撃をいなされてカウンターで終わりだろうな!じゃあそろそろ俺も見廻りの準備に入るぜ!」


 それだけ言うと立ち上がり剣を腰に差し直した後、振り返らずに俺達にヒラヒラと手を振り、見廻り準備中のキャロラインの方へ歩いて行った。


 「...」


 セリーヌさんはジャミルが言っていたことに思うところがあるのか思案しているようだ。

 俺は邪魔をしないように馬車で寝る準備でもしますかね。


 「セリーヌさん、私は眠る準備のために馬車に行ってますね。」

 「....うん....。」


 うーん、上の空ぽいな。まあ馬車は直ぐ側にあるから大丈夫か。

 馬車に行き、服を脱いでから冷めてぬるくなったお湯で体を拭く。


 あー、風呂入りてー。やっぱり風呂に入らないと1日が終わる感じがしないな。




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